
3年前、北海道の知床半島沖で遊覧船「KAZU I」が沈没し、乗客・乗員20人が死亡し、6人が行方不明になった事故。
事故の発生は予見できたのか。
業務上過失致死の罪に問われた運航会社社長の桂田精一被告(62)。
12日、釧路地裁で開かれた初公判で、桂田被告側は無罪を主張しました。
12日午前9時半ごろ、釧路地裁の正面玄関前で振り返り、深く一礼した知床遊覧船の社長・桂田精一被告。
事故から3年半、初公判で桂田被告は「私には罪が成立するか分かりません。法律家に委ねるしかありません」と述べました。
事故は2022年4月、北海道のオホーツク海から世界自然遺産・知床の雄大な風景やヒグマの生態が観察できる人気のツアーで起きました。
悪天候が予想される中で、斜里町のウトロ漁港を出発した遊覧船「KAZU I」が知床半島沖で沈没。
船体は115メートルの海底で発見され、その後、引き揚げられましたが、乗客・乗員20人が死亡し、6人が行方不明となりました。
運航会社社長の桂田被告は、事故の4日後、3度にわたり土下座を繰り返す謝罪会見を行いました。
この会見で、桂田被告は「海が荒れた場合には引き返す『条件付き運航』だった」などと説明。
しかし安全管理上、悪天候の中、「条件付き運航」という判断はあり得ないなどと批判が相次ぎました。
桂田被告は、運航管理者として出航しないよう船長に指示をせず船を沈没させたとして、事故から2年がたった2024年10月、業務上過失致死の罪で起訴されました。
そして12日、初公判の日を迎え、被害者家族は「事故からあっという間にこの時がきたけど、初公判まで長かった」と話しました。
船の操縦を行っていない経営者が海難事故の過失責任を問われるという異例の事態となった今回の裁判。
最大の争点は、事故発生の危険を予見できたかどうかという点です。
12日の初公判で、桂田被告は被害者家族に謝罪したうえで、「船長に『荒れる前に引き返す』と言われ、それならいいだろうと思った」と述べました。
桂田被告側は無罪を主張しました。
一方、検察側は「当時、強風注意報などが発表され、運航基準を上回る予報がされていて、海域の特性を踏まえれば、事故を発生させる恐れがあったことを桂田被告は予見できた」として、注意義務違反が認められると主張しました。
被害者家族は「桂田(被告)側の主張を聞いて、本当にふざけんなと何度も叫びたくなった」と話しました。
今後、19人の証人尋問が行われるこの裁判。
判決は2026年6月17日に言い渡される予定です。