「1日で5億円アップ」…!阪神残留・近本光司「魔法の交渉術」で球団は「フロント手形」まで用意か

12日間の交渉期間を「メチャクチャ長かった」と笑顔で振り返った

球界きっての切れ者

阪神・近本光司外野手(31)は11月11日、兵庫県西宮市内の球団事務所で取材に対応し、FA権を行使せずに複数年契約で「残留」すると発表した。

「甲子園のタイガースファンの声援を浴びて喜びを分かち合いたいです」

本人が報道陣の前で語り始めた時、時計の針は夜9時に迫っていたという。

「出身地である淡路島への愛も強く、当初よりファンもマスコミも『残留濃厚』という予想で見守っていました。ところが、最終日になっても残留どころかFA宣言する、しないさえ決まっていないことが判明。交渉は暗礁に乗り上げていたんです」(スポーツ紙虎番記者)

前日の10日にも近本は兵庫県西宮市内の球団事務所を訪れていたが、取材陣に対し無言を貫いて帰路に就いていた。

この“ミステリアス”な対応がファンをドギマギさせ、ネットは「まさか宣言するのか!?」とザワついたが、実際に内部で起こっていたのは単純なことだった。

「その日、近本は身体を動かしに行きつつ、球団事務所に顔を出しただけ。粟井一夫球団社長などフロント陣は同日に高知市内で行われたリーグ優勝パレード出席のために不在でしたから、話がまとまるはずもありません。

話に進展がないので、いくらメディアに去就について聞かれても、無言にならざるを得なかったんですよ」(球団関係者)

こうした事情もあって、本交渉が行われたのは締め切りギリギリとなる11日だった。

「当初は夕刻にも発表するのではという見方が強かったのですが、待てど暮らせど一向に交渉が終わらない。テレビ局はスポーツニュースの放送時間、新聞は締め切りの時間が差し迫っており、『FAするか、しないかどっちやねん!』とツッコミを入れるほど大慌てでした」(在阪テレビ局スポーツ番組スタッフ)

なぜこれほどに交渉に時間がかかったのか。さる球団スタッフは、「球団が下交渉で提示していた条件がかなり悪かったらしい」と明かす。

「今季、タイガースは主催71試合で296万2268人を動員。チケット収入だけでも相当な金額を稼ぎました。

ところが球団は、来年32歳となる近本のパフォーマンスが今後、落ちていくと判断し、昨年FA宣言した大山悠輔内野手(30)の5年総額17億円プラス出来高と大差がないか、むしろ劣るような金額を提示していたんです。納得できない近本は球団側に条件闘争を仕掛け、FA申請期限最終日まで攻防が繰り広げられる結果となったのです」

こうした状況を受け、球団事務所に詰めかけたメディアが、関係者の証言をもとに予想した金額は5年20億円だった。

「ところが、最終的に〝5年総額25億円〟という数字が報道されることに。各社はあくまでも“推定”と断っていますし、本人は『お好きにどうぞ』と冷静沈着に対応し、金額の明言は避けていますが、たった1日の交渉で5億円もアップしたとなれば、近本の交渉術はまるで魔法です」(前出・虎番記者)

そして、金額アップだけで終わらせないのが近本のしたたかさ。契約以外の「おまけ」まで勝ち取って球団事務所を後にした。

「球団は近本に対し、将来のフロント入り、あるいは監督就任の手形を切ったようなんです。

大阪ガス時代の近本は社会人としても評価が高く、会社は将来の幹部として社業に残るよう説得していたほどでしたから、引退後もキッチリ仕事をこなしてくれると球団は判断したのでしょう。とにかく、近本は最もいいタイミングで最高の条件を引き出したといえます」

球界きっての切れ者・近本の〝圧勝〟で、残留交渉は幕を閉じた。