岩崎良美「タッチ」はできた子 手を離れても一人でどんどん成長していく 45周年の今も「歌えると思うとうれしくて緊張して眠れなくなっちゃう」

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 月一連載企画「今も輝いて アイドル伝説」の第7弾は今年、歌手デビュー45周年を迎えた岩崎良美(64)の登場です。1980年デビューの同期には松田聖子、河合奈保子、柏原よしえ(現芳恵)、三原順子(現じゅん子参院議員)、田原俊彦らがおり、アイドル黄金時代の幕開けとなりました。デビュー当時や国民的ヒット曲「タッチ」の秘話、姉・岩崎宏美(67)への思い、今後に控えるコンサートなど現在の活動を語ります。

 良美が芸能界入りするきっかけは宏美だった。人気歌手の宏美を身近に見ていて「ホントに楽しそうにしていたので、そんなに楽しいところだったら私もやりたいな」という気持ちが育ち、自然な形で芸能界に入っていたという。

 デビュー翌月には早くも東京音楽祭に出場。スタイリスティックスやディオンヌ・ワーウィック、ライオネル・リッチーが在籍中のコモドアーズら超一流が米国から出場し、ハリウッドスターのファラ・フォーセットが審査員を務める豪華なイベントだ。

 良美はコモドアーズのリハーサルを生で聴いて感動するも「え!この人たちと同じ舞台に私立つんだ!」と理解してしまう。「当日はカッキンカキンに緊張してしまって。歌の方はひどかったと思います」と懐かしんだ。

 年末には日本レコード大賞で新人賞を受賞し、NHK紅白歌合戦に初出場。「紅白でもいろんなことをしなければいけなかったので、リハーサルからあまりの忙しさで本番をほとんど覚えていない」という。多忙を極めているため「一番大好きなお仕事」であるレコーディングの時間を確保するのも一苦労。「イニシャル(初回出荷分)は鼻声で、その後の(再出荷分)は良いコンディションでレコーディングできました」と言うように、録り直しを余儀なくされるケースもあった。

 「タッチ」に出合ったのはデビュー6年目の85年だった。あだち充氏の人気漫画をアニメ化した作品の主題歌で、あだち氏とは以前に対談した縁があった。レコーディングに「奥さまと一緒に来ていただいた」という。

 最初に楽曲を聴いた時は「ギターのイントロがすごい印象的で、今までやっていた自分の音楽の世界とは違うものを感じましたね。アニメと主題歌が重なって、見た時にバチッとはまったんで、なるほど~っていう感じはしましたね」と、新鮮な印象を抱いた。

 発売時、良美はドラマ「スクール☆ウォーズ」の撮影中で「あんまり生で歌ってない。なので、こんなにすごい曲になるとは想像していませんでした」という。この年のレコ大で金賞に選ばれるなどヒットした「タッチ」だが、国民的楽曲に成長したことを実感したのは「20~30年たってから」だ。「イベントが夕方で朝早くにリハーサルしても、人がいないところでやっても、イントロが流れた途端にどこからかいろんな人が走って出てくる。今の方が楽曲の力をものすごく感じています」

 良美は成功の要因を「歌詞とメロディーとたっちゃん、南ちゃんのキャラクターが、いい感じでバランスが取れたのかな」と分析し、「今まで歌った楽曲の一つ一つが自分の子供のように思うけど、『タッチ』はできた子で(笑い)私の手を離れても1人でどんどんどんどん成長していく子、みたいな感じですよね」と目を細めた。

 良美は今年、デビュー45周年を迎えた。11月22日には兵庫県立芸術文化センター大ホールで、50周年の宏美とともに「岩崎宏美50周年・岩崎良美45周年 岩崎宏美・岩崎良美ファンタスティックオーケストラコンサート」を行う。デビュー当時は所属事務所もレコード会社も異なったため一緒に歌う機会は少なかったが、数年前に宏美の事務所に移籍したのをきっかけに姉妹でのコンサートが増えてきた。

 「デビュー当時は一緒にやろうと言われてもプレッシャーの方が強くてなかなか楽しめる雰囲気ではなかったけど、今は一緒にやることができて楽しい。トークのやりとりをお客さまはすごく喜んでくださるので、おしゃべりでも盛り上げて」という、仲良し姉妹ならではの親密な空気感も魅力だ。

 「お互い一緒にやって楽しんで、車中の移動も全部楽しい、おしゃべりしながら」という良好な姉妹仲は「小さい時から変わらない。お互い分かっているから疲れない」という。コンサートでは「ユニゾンで歌った時なんか、やっぱりきょうだいだなって思いますね」と改めて感じている。

 単独では12月18日にコンサート「グラサヴ vol.5」を銀座ヤマハホールで開催する。「グラサヴ」はフランス語で「あなたのおかげ」という意味で「歌い続けてこられたのは皆さんのおかげですよというメッセージ」を込めた。

 「ライブでは、フランス語や英語で歌う曲が多いけれども、ヤマハホールはオリジナルの、デビュー当時の歌のメドレーなども入れて、感謝を伝えることをコンセプトにしています」

 今後は「長く歌っていくためには健康でいないといけないので、ずっと歌っていけるようにしたい」のが「まず一番」だという。その上で「チャンスがあったら新しいことには挑戦していきたい」と自ら口にした。

 半世紀近く歌ってきた良美だが、歌の仕事の前日は「歌えると思うとうれしくて緊張して、眠れなくなっちゃう」と打ち明ける。それほど歌への愛は深く、「一つ一つのお仕事を、1曲1曲の歌を丁寧に歌っていきたい。緊張してる場合じゃないぞと自分に言い聞かせながら、その1曲を楽しんで歌う。そういう歌を歌い続けていきたい」と、変わらぬ美しい瞳を輝かせながら思いを伝えてくれた。

 ◆岩崎良美(いわさき・よしみ)1961年6月15日生まれ、東京都江東区出身。80年に「赤と黒」で歌手デビュー。東京音楽祭世界大会で国際友好賞。大みそかの日本レコード大賞で新人賞、NHK紅白歌合戦初出場。85年、「タッチ」でレコ大金賞。俳優としてNHK大河ドラマ「おんな太閤記」、ドラマ「真夜中の匂い」「スクール☆ウォーズ」などに出演。2002年から9年にわたりミュージカル「アニー」でグレース・ファレル役を好演。06年からNHK Eテレのアニメ「おさるのジョージ」で語り手と主題歌を担当。今春から姉・岩崎宏美とのラジオ番組「お茶にする?」がスタート。身長159センチ。血液型O。