10kg増量では足りず「服にタオルを詰めて、肉に埋もれたように見せた」一体なぜ? 元グラドル・小阪由佳(40)が明かす「激太り写真」衝撃の真相

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 2009年、グラビアアイドル・小阪由佳さんが突然の引退を表明した。「ミスマガジン2004」でグランプリを獲得してから、わずか5年後のことだった。その後、開設したブログでは常軌を逸した投稿を繰り返し、2010年に開催したライブではマスコミの前に“激太り姿”で現れた。

【衝撃】10kg増量して“激太り姿”を世間に公開…小阪由佳さんの“洗脳”時代の写真を見る

 華々しい芸能界で活躍していたはずの彼女の心に、一体何が起きていたのか――。現在はタレント活動を続けながら、芸能事務所も代表を務める小阪さんが、自身の“洗脳”体験について綴った『六本木洗脳』(晶文社)より一部を抜粋してお届けする。

 信用して助言を受けていた占い師の「姉さん」が小阪さんを無理やり太らせた驚きの経緯とは……。(全4回の1回目/続きを読む)

小阪由佳さん ©山元茂樹/文藝春秋

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2009年3月某日 偽りの覚悟

「ああ。どうしようこの先……」

 引退したことでどこまでも真っ白なスケジュールは、まるで私の存在を消そうとしているかのように思えた。

 デビューしてから5年間、死ぬ気でやっていた自負はある。高校卒業後の進路を芸能界に賭けてきたので、いきなりなにもなくなっても、気持ちはそう簡単に切り替わらない。

「もう引退したほうがいいかな」という姉さんへの弱音も、所詮偽りの覚悟。何の心も決まっていないくせに、「そうかもね」なんて後押しされてしまったものだから、次なる生き方は何も見えていないままに引退してしまった。

 自分の意思が自分でもわかっていないから、言うこともチグハグ。やめたい、つらいと言う一方で、注目されなくてはという使命感が引退したにも関わらず何故かあった。

 注目されないと自分の存在価値がないと未だに思っていたからだ。どうやったら、何をしたら注目されるんだろうと、悶々と考えていた。もはやどれが本当の自分の思考なのかがわからない。そんな私に、姉さんは言った。

「1回引退して、すごい太ったら絶対話題になるよ」

 悪魔のささやき。

洗脳の始まり

 私が病み始めた2007年~2009年頃は誰それが太った、痩せた、がとにかくネットニュースになっていた。

〈○○○、2週間で5kg増を告白〉

〈○○○が「痩せた」と話題〉

〈2ヶ月で○kg減 ○○○、ビフォアフ披露〉

 タレントの体重や見た目の変化の話題は、今も昔もPVを稼ぐ鉄板コンテンツだ。その振り幅が大きければ大きいほどいい。そう考えると、姉さんの着眼点はそれほど的が外れているわけではない。姉さんは言った。

「大きく注目されるほどの話題になるためには、ちょっと太っただけじゃダメ。まずはしっかり太ることが絶対だ」

 やるべきことを見失い、やることもわからず人生を放浪して不安で仕方がない私に、「こうしろ」という指示はダイレクトに反応した。

「そうか、私に残された道は太ることなんだ」

 バカバカしいやり取りに見えるかもしれないが、恐怖心を煽り過去や現状の自分を否定させるのも、洗脳を進める方法だ。そして私は次にやるべきことが明確になったとばかりにスーパーで食材を買い込んだ。

 これは私の統計だが、人間、痩せるよりも太るほうが難しい。太るのは“才能”であり、遺伝子レベルの話だ。外国人の大柄な体に、「どんなに食べてもああはなれない」と思った人は多いと思う。いつの間にか多少脂肪を蓄えることはあっても、アスリートや俳優を除いて、意識的に激太りしようとする人はなかなかいない。

 姉さんは、「とりあえず5kgは太りたいよね」と軽く言った。

 5kg程度なら容易い。単純に食べる量を増やせば、それぐらいはあっという間だ。私はグラドル時代に“食べない”生活を強いられていたこともあって、「食べていい」というのはむしろご褒美にも思えた。

「やっと食べていいんだ!」

 ピザや菓子パン、アイス、ケーキなど、それまでは「NGメニュー」として節制していたものを好きなだけ好きなように食べ、思った通り5kg増は楽勝だった。着実に増えていく体重計の数値はゲームみたいだった。しかし姉さんの要求はそれで終わらなかった。

「姉さん、5kg太ったよ」

「いや~、5kgじゃ全然足りないね。話題になるためにはもっと太った方がいい。もうあと5kg増やそうか」

 そうはいっても急に5kg以上増えるものではない。すぐにたくさん食べられるようにもならない。さすがに戸惑った。

 5kgならと思って始めたのに、いきなりプラス5kg。それって10kgだよね? 無理だよ。そんなに太れないよ。

 どうしよう……。これ以上太らなきゃダメなの? どうやって?

監視とスパルタ

 あれだけ、少しでも食べたらすぐに増えることに悩んでいたのに、太れと言われると途端に難しい。事務所を辞めてからヒマを持て余していた私は、ほぼ毎日姉さんの家に通い、掃除や洗濯といった家事や事務作業をタダで手伝うようになっていた。明確に契約書を交わしたわけではないが、家事手伝いのようなものだ。

 姉さんからは常に「もっと食べろ」と言われ続け、「前よりも痩せたんじゃないか?」「太り方が足りない」といった細かいボディチェックが入った。いついかなる時も私が何かもぐもぐしていないと、姉さんは「なんで今、口のなか何も入ってないの?」と不機嫌になった。

 姉さんが怒るのは、私の体重の変化が見えない時。

 この頃から私に対する姉さんの口調は激しくなっていった。

「わかってんのかな? 私はあんたが注目してもらえるために細かく段取りを組んであげてるんだよ? 太れって言ってるんだから、さっさと太れよ。努力が足りないんだよ」

 例えばファミリーレストランへ行ったとする。姉さんは注意深く私が注文するメニューを見張っていて、ガッツリ頼まないと気が済まない。シンプルなパスタや和風のあっさりした定食はもってのほか。私はその時食べたいものとは無関係に、トンカツやチーズ入りハンバーグやグラタンのような脂っこいものを頼まなくてはいけなかった。

 そもそも、姉さんがよく食べる。ハンバーグとライスにパスタとサラダをつけ、飲み物はクリームソーダといった具合。場合によってはパフェも食べる。ファミレスからの帰り道には、コンビニに寄ってお菓子やアイスクリームを買うこともよくあった。

 姉さんと会うのは基本的に彼女の家だった。私は毎回お菓子を持っていかないといけなかったし、家では「これも食べな、あれも食べな」といろんなお菓子をとめどないわんこそばのように振る舞われる。安上がりでカロリーの高いスナック菓子が多く、わんこスナック状態だ。

 飲み物もお茶は“NG”。砂糖たっぷりのサイダーやコーラにしろと言う。私は炭酸が苦手だから、オレンジジュースやミルクティーで許してもらっていたけど、とにかく最重要事項は糖分と脂質。胃の調子を悪くして食べないでいると、「最近サボってない?」と体重計に乗せられる。姉さんの目の前で体重をチェックされ、「まだ先週から太ってないじゃん!」と監視される。スパルタだった。

たるんでゆく肉体

 体重が増えれば「頑張ってんじゃん」と褒められ、増えていなければ「なんでできないの?」と詰め寄られたうえ、「いいんだね、このまま人生終わっても?」と脅された。

 姉さんの説教と脅しを自動再生のように延々と聞かされる私の頭の中はカラッポと化し、代わりに姉さんの指示でいっぱいいっぱいになっていった。

 野球部やシンクロナイズドスイミングの選手は体を大きくしたり、激しい練習で痩せたりしないようにたくさん食べることも練習の一部で、選手たちは胃薬を飲みながら食べものを流し込むという話を聞いたことがある。

 私も胃薬が手放せなかったが、意識としてはアスリートとは真逆も真逆、正反対。シンプルに体重を増やすだけが目的なので筋肉が増えるわけでもなく、四六時中もたれる胃を薬でなだめながら、肉体はブヨブヨとたるんでゆく。

 ずっと具合が悪いけど、具合が悪いと食べられない。体重が減るとまた姉さんに怒られる。怒られると、「嫌われちゃう、嫌われたくない」という気持ちが湧いてくる。嫌われたくないから、食べる。食べたら褒められるから、朝から晩まで、すごい量を食べ続ける。もっと具合が悪くなる……。無限ループ。

 指示されたことには素直に従う性格なので、姉さんの「常にそばに食べ物を置いておくように」という指導を忠実に守り、手が伸びる場所にスナック菓子の袋を常備した。激太りを目指してから1ヶ月経ち、2ヶ月経った頃には、10kg増に手が届きそうなぐらいに体重が増えていた。

「姉さん」のディレクション

「そろそろ、太った姿をお披露目しましょう」

 2009年3月に一旦「退所」報告をしたあと、同年11
月に新しいブログを始めたのも、姉さんの計画だった。デブ道を歩み始めて2ヶ月、私の体重は7kg増えていたけれど、身長がある分、それで「デブ」と言うには少し無理がある。

 姉さんの脳内では、11月までに私は力士レベルになっているはずだったらしい。つまりお披露目時期が先に決まっていただけで、なかなか巨漢にならない私の姿を見てはため息をつき、「全然物足りないじゃん」と眉間にシワを寄せるばかり。

 それでも何らかの形で“小阪由佳に異変が起きている”ということは露出したほうがいいということで、服の中にタオルを詰め込んでお腹を膨らませ、顎は限界まで引いて二重顎を作り、目は細めて肉に埋もれたように見せかけた。全部を姉さんにディレクションされて、私は姉さんの言いなりだった。注目されるんだったら、何でもいい。

 それを掲載したブログが、冒頭で紹介したものだ。でも、この時はまだヌルいデブ、「ヌルデブ」だった。姉さんのイメージする理想のデブには、程遠かった。

 雑誌やテレビに出ていたタレントが消息を絶ったかと思いきや突然再浮上し、独自の退所報告をしたかと思えば、“近況”として付記したブクブクと太って気持ち悪い笑みを浮かべた醜悪な写真は世間を震撼させ、大きな話題になった。

2009年11月某日 キャラ変の真相

 2009年11月6日発売の写真週刊誌『フライデー』(講談社)でも「バンビだった小阪由佳『激太り→引退宣言』の真相-ブログで突然オノロケ話」としてその姿がとりあげられるほどに露出は成功した。「ホラ、私の言ったとおりにすればいっぱい取り上げてもらえたじゃん」と姉さんはドヤ顔で、世間からもっともっとかまってもらうために、ブログでフライデーの記事に即レスした。

〈みたみた?  フライデイ

 まず言わせてもらうけど

 デブじゃねーし……

 てか パンピーでもねーし……

 ゆかさん 一応 トップアイドルなんだけど!

 私が引退してから売れてるアイドル出てこないでしょ???

 まったく。。。

 スイマセーン 本音ポロリしちゃいましたー(笑) キャハッ

 てゆうううか 由佳さんの写真めちゃカワユスでしょ?

 フライデイの記者 センスなさすぎー

 このミスマガの体をぉぉおぉおお

 どこからどう見たら

「激太り」

 なんて言葉が出てくるの⁉

 もう 失礼しちゃうわっ プンッ

 ダーリンは毎日欠かさず

「由佳は全部 かわいいよ」

 って言ってくれるもーん〉

 あくまでも姉さんは私が“ナチュラルに、自分の意志で”現在こうなっているんだ、という見え方にこだわった。だから「激太り」報道にも反論してみせたのだ。「まだ足りない、もっと先を目指さなきゃ」という姉さんから私が“先”として示されたのは「さらに10kg増」だった。

〈〉へ続く

(小阪 由佳/Webオリジナル(外部転載))