NHK朝ドラ脚本は“諸刃の剣”、バカリズム「巡るスワン」で大勝負

「巡るスワン」の発表会見に登場した作者のバカリズム(左)と主演の森田望智

2027年度前期のNHK連続テレビ小説が「巡るスワン」に決まったと発表された。脚本は、なんと芸人のバカリズム。朝ドラは脚本家として栄誉ともいえるが、半年という長丁場だけに、ドラマの出来いかんでは集中砲火を浴びかねない“諸刃の剣”ともいえる。奇天烈な設定のドラマに定評のあるバカリズムだが、果たしてこの難局を乗り切れるのか。

バカリズムが描く新朝ドラ「巡るスワン」の見どころ

「巡るスワン」は、バカリズムのオリジナル脚本で、刑事を志望していたものの生活安全課に配属された女性警察官が主人公。地味な仕事に不満を感じながらも「何も起こらない日常を守る」という道を見出していくまでの日々をコメディータッチで描く物語だという。舞台は長野県の諏訪湖周辺をイメージした架空の町が設定されている。ヒロインは、森田望智が務める。

バカリズムといえば、「トツギーノ」や「都道府県の持ち方」といったシュールなフリップ芸で注目され、「IPPONグランプリ」でも優勝6回、準優勝5回を誇るピン芸人として活躍する一方、その独特の感性を生かした脚本でも「ブラッシュアップライフ」や「ホットスタッフ」など注目の作品を生み出している。

「しかし、半年という長丁場は、バカリズムさんにとっても初めてのはず。朝ドラは、いわゆる1クール(10~13話)ではなく、1本15分を週5回、これを26週つないでいくというスタイル。長丁場というだけでなく、物語の展開の仕方も普通のドラマとは大きく異なります。物語の背景も深くならざるを得ず、登場人物もはるかに多く、人物造形もより深いものを求められます。それだけ脚本家の力量が問われることになります」と放送関係者は話す。

朝ドラ脚本の難しさとバカリズムへの期待

「さらに最近では視聴率が少し低迷気味とはいえ、15%前後はある。それだけ多くの人が視聴しているということになります。なので、どんなに人気脚本家でも、朝ドラでは視聴者から厳しく批判されることが少なくないのです」とも。

そして、こう続ける。

「この秋まで放送されていた、今田美桜さん主演の『あんぱん』の脚本は、『やまとなでしこ』や『ハケンの品格』、さらには朝ドラの名作と名高い『花子とアン』を手掛けた中園ミホさんでしたが、SNS上では展開に難があると批判されました。『フラガール』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を取り、これまた名作の誉れの高い朝ドラ『マッサン』を手掛けた羽原大介さんも『ちむどんどん』では批判されまくりました。それだけ、脚本家にとっても難しいのが朝ドラです」

発表会見では「とりあえず締め切り厳守で頑張っていきたいと思います」と意気込んだバカリズム。何気ないシーンにおかしみをこめることには定評があるが、「何も起こらない日常」を描く朝ドラで半年間、どこまで視聴者を引き込めるか。まさに大勝負といったところか。

🔳バカリズム お笑いタレント、脚本家、俳優。1975年11月28日生まれ。福岡県出身。マセキ芸能社所属。1995年から2005年までは、本名・升野英知の名で、相方の松下敏宏とのお笑いコンビ・バカリズムとして活動。コンビ解散後、升野はバカリズム名義でピン芸人となった。R-1ぐらんぷり2006・2007・2009・2010ファイナリスト。脚本家として「ウレロ☆シリーズ」「素敵な選TAXI」「架空OL日記」「ブラッシュアップライフ」「ホットスポット」など数々のドラマを手掛ける。アイドルグループ・でんぱ組.incの元メンバー夢眠ねむと結婚し、2019年12月24日に入籍。