
世の女性たちが体験した“女性の敵は女性”というエピソードとは…?(写真/PIXTA)
日本で初めての女性の内閣総理大臣となった高市早苗氏。女性の参政権獲得から80年という節目の年についにガラスの天井が破られたが、一方で女性からの厳しい声も少なくない。中には、仕事の出来不出来、思想信条の違いなどを理由にした理論的な攻撃ではなく、感情論による“口撃”と捉えられるものもあり、“女性の敵は女性”なのかと議論も勃発している。日本社会でこのような状況が生まれる背景について考察した前編記事に続き、後編記事では世の女性たちが体験した“女性の敵は女性”というエピソードを紹介し、その実態に迫る。【前後編の後編。前編を読む】
ワーママの敵はワーママだった
信用金庫に勤める女性Kさん(33才)の同僚には子育て経験者も多く、理解のある会社だと思っていたが、育休明けに現実を突きつけられたと話す。
「子供が熱を出して休む日が続いたことがありました。本当に申し訳ない気持ちでしたが、同期や男性の上司からは“気にしないで”“仕事は調整するから”と言ってもらって本当に感謝していたんです。でも、やっと出社できた日、2人の子供を持つ女性上司が“うちの子は熱なんかほとんど出さなかったけどね”“独身の同期とか男性に甘えてちゃダメなのよ”と、雑談中に口にしたんです。経験があるからこそ、いちばん痛いところを突いてくるんだなと、本当に傷つきました」
業務中に2人きりになったとき、Kさんは「ご迷惑かけないようにしたいので、子育てについてもいろいろ教えてください」と声をかけたという。
「敵対しても仕方がないと私なりに歩み寄ったつもりでした。でも上司から返ってきた言葉は、“そんな頼りないんじゃ2人目なんて絶対に無理だね”って。女の敵は女、どころかワーママの敵はワーママなんだなと愕然としました」
不動産開発会社に勤務するYさん(47才)も、31才で育休を取ったときに不快な経験をした。職場復帰が円滑にいくようにと、「かかわっていたプロジェクトのメールグループから育休中も外さないでほしい」と伝えたところ、女性上司から想像もしない対応をされたという。
「男性上司は“たしかに流れをわかっていた方がいいよね”と賛成してくれていたのですが、最終的に女性上司から“育休中は子育てに専念してください”と言われました。そもそもその上司は私がチームに抜擢されたのが気に入らなかったみたいで、育休は私を外すうってつけの口実になってしまいました。女性の社会進出に反対するのは、女性だったりするんです」(Yさん)
Yさんは、子供が小学生になってから息抜きで始めたバドミントンのサークルでも、同年代の女性から嫌みを言われ続けたと話す。
「男性メンバーは“子育ても仕事もあるのにパワフルだね”という感じでしたが、同年代の専業主婦からは“家族を大切にしてないんじゃない?”と、非難されました。嫌な気分になって、退会しましたよ」
精神科医の片田珠美さんも、知事のエピソードを明かす。知り合いだったというパート勤務だった40代の女性は、契約社員になったのをきっかけに、同じパートのベテラン女性から「上司と不倫して契約社員になった」と噂を流されたという。
「ベテラン女性は、自分と似た境遇の女性が1人だけ契約社員になったことで、羨望と嫉妬の感情に負けてしまい、根も葉もない陰口を口にしてしまったのでしょう。結局、契約社員になった女性はパート職員に無視されるようになって、退職しました」(片田さん)

『受動的攻撃』は相手にはっきりとわからないように、微妙な形で攻撃するのが特徴だという(写真/PIXTA)
オブラートに包む「受動的攻撃」
千葉県在住の看護師・Wさん(35才)も、同僚から敵視された経験がある。
「同僚の独身看護師4人で仲よくしていたのですが、私に彼氏ができてから急にみんなの態度が変わりました。何かミスをすると、以前は励ましてくれたのに“彼氏のことで浮かれているからだよ”と冷たい。時間の余裕をもって申請していた結婚休暇も、彼女たちが休みの申請を被せてきたため半分に減らされてしまいました」
女同士の友情や信頼関係は基本的に信じないと打ち明けるのは、芸能事務所で女性アイドルのマネジャーを担当するOさん(仮名・40代)だ。
「アイドル同士って仲よしで和気あいあいと活動していると思っている人もいますが、実際は違う。人気が出るほど、仲間から足を引っ張られやすくなります。SNSの裏アカウントで、仲間の男関係や飲酒喫煙などの素行不良をそれとなくバラしたり、スタッフに噂話を流して謹慎や契約解除に持ち込もうとする。
相手が自分よりかわいく見えないように、ヘアスタイルやメイクも“こっちの方がいいよ”と真逆のアドバイスをし合っています。モデルや女優がいる事務所でも働いたこともありますが、同じような光景を何度も目の当たりにしました」
片田さんは、女性はオブラートに包んで敵意を表すことが多いと指摘する。
「『受動的攻撃』といって、直接相手に何かをするのではなく、裏で陰口を言ったり、画策したりする。相手にはっきりとわからないように、微妙な形で攻撃するのが特徴です」
群馬県在住のNさん(52才)は、女性の介護負担が減らないのは女性の敵がいるからだと憤る。
「田舎だからか高齢者を在宅介護している家庭が多く、自治会の婦人部から“女性ばかりが介護を負担するのは不公平”という声が上がり、ヘルパーさんを招いて男性向けの介護講習を実施することになったんです。1回目はほとんどの家庭から男性が参加してくれて、いい雰囲気で進みました」
しかし、講習後の親睦会で空気は一転する。参加していない夫の妻たちが「男に介護を任せるのは無理じゃない?」「仕事して稼いでくれている男性に、介護までやらせるのはひどい」と言い出したのだ。
「彼女たちの発言で全体のモチベーションはだだ下がり。2回目の受講者は3分の1に減ってしまいました。男性も介護に参加すれば、女性の負担は確実に減るのに、女の足を引っ張るのは女。どうしていいのかわからない」(Nさん)
フランスの哲学者ボーヴォワールは、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と評した。
女を理由に批判して引きずり下ろすよりも、自分の人生をどう生きるかを大切にしたい。
(了。前編を読む)
※女性セブン2025年12月4日号