高須克弥氏、「死んだらAIになる」 全身がんと闘いながら語った人生哲学と死生観

高須克弥氏(川口良介撮影)
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高須クリニックの高須克弥氏が新著『高須の遺言』を出版しました。全身がんを公表しつつ「生涯現役」を掲げ、AIに自身の知識を学習させ「AI高須」を作る計画を語っています。彼は人生を楽しむことを重視し、独自の死生観や波乱万丈な人生を新著で紹介しています。

全身がんを公表し、現在も闘病中であることを隠さない美容整形業界の第一人者で高須クリニック統括院長、高須克弥氏(80)が、壮絶な半生と独自の死生観をつづった新著『高須の遺言』(講談社)を上梓した 。病にあってもなお“生涯現役”を掲げてエネルギッシュに活動し続ける高須氏を直撃し、数々の炎上やスキャンダル、そして「裏切り者」と断じた有名政治家への怒りまで、波乱万丈な人生を語った。

「だまされても面白い」高須流の生き方

「今までの人生を振り返るとね、だまされた経験がたくさんあったなと思うね。でも、だまされている内にうまくいっちゃうケースが多いの。嘘から出たまことみたいなことだね」

あっけらかんと笑いながら、そう語った。香ばしい人物から儲け話を持ち掛けられたケースは数知れず。自身の面白がりな性格が影響しているからか、「2人とかで会って話すと、ついつい乗っちゃう」のだという。

「やっぱり僕はワクワクするような楽しいことが好きなんだよね。そして、詐欺師のような人たちのトークは、とっても面白いの!」

過去には巨額の地面師詐欺事件に巻き込まれたこともあったという。

「『新宿の韓国街にある大きい病院を買いませんか?』という、いかにもありそうな話が舞い込んできてね。現地を見に行ったんですよ。案内役の人は『再開発するより、まじめに病院を続けてくださる人に買っていただきたくて』とか言ってきたんだけど、地面師詐欺だったんだね」

病院と付属の看護学校を、土地と併せて買ってほしいという話。一時は「いい話だ」と前向きに考えていたそうだが、パートナーで漫画家の西原理恵子氏(60)が、「病院経営を始めたら頑張りすぎてしまう」と体調を気遣い、取引はお流れに。話を持ってきた人物は、その後行方不明になったという。

「西原は、『40億円だまされるのを助けたんだから、1割の4億円くらいはくれよ!』って笑ってたね」

「逆張り精神」で築いた高須クリニック

「生涯現役なう」を掲げて今も銀座高須クリニックに勤務する高須克弥氏(川口良介撮影)

冗談交じりに話す姿は、まるでピンチに見舞われても、それを楽しんでいるかのようだ。高須氏の人生哲学の根底には、幼少期から持ち続けた「逆張り」の精神があるという。

「世の中の流れが左に傾けば右、右に傾けば左に、という感じ。子供のときからそうだね。田舎に生まれて、みんなと同じことをさせようとする学校の先生が嫌いだった」

その「逆張り」精神は、高須クリニックの経営にも色濃く反映されている。まだ美容整形が「日陰の存在」 とされていた時代にあえて参入し、1976年、名古屋市に高須クリニックを開院。テレビ番組などに積極的に出演して全国に顔を売り、包茎手術や脂肪吸引手術、ヒアルロン酸注射などを普及させた。

「ただね、3人の息子たちは僕と思想が見事に真逆なの! 性格的に似ている部分もあるんだけど、面白いよね。令和の時代を担う4人の孫たちはみんな女の子でね。息子たちは僕に近づかないように、警戒しているよ(笑)。彼女たちはどんな考え方をするようになるのかなあ」

高須氏といえば、X(旧ツイッター)で炎上も辞さぬ姿勢で怒りなど自分の感情を直言することも多い。今、最も怒りを露わにするのが、愛知県の大村秀章知事(65)のリコール(解職請求)運動についてだ。

2020年、高須氏は愛知県の大村知事に対するリコール運動で、当時名古屋市長だった河村たかし氏(76)とタッグを組んだ。しかし、提出された署名の多くが偽造であったことが後に発覚して大炎上。両者の間で、リコール運動の主導権や説明責任を巡る見解の相違が表面化した。2021年4月に行われた名古屋市長選挙で河村氏が再選すると、高須氏は「正体が分かって嫌になった」として、河村氏との関係を断つと「絶縁」を宣言。

著書には当時のやり取りや、現在の関係性まで包み隠さず記してあるというが、「裏切り者ですよ」とバッサリだ。

「絶縁した後、たまたま新幹線の中でばったり会ったことがあってね。一瞬驚いた表情を見せたけど、すぐに笑顔で『お~、お~』って挨拶してくるの。政治家ならではのしたたかさだね」

がん闘病から「死後の生存」計画まで

「AIは進化スピードが速いし面白いね」と高須克弥氏(川口良介撮影)

そして現在の高須氏にとって最大の敵が、自身の体内にあるがん細胞だ 。2014年に初めて見つかって以降、さまざまな治療を試みてきた 。最近では、温熱でがんを弱らせる「ハイパーサーミア」と、放射線を照射する「リニアック」を組み合わせるという治療法を自らの身体で試した。

「僕自身は効果はあったと思っているよ。ただ、何が何でも完治させたいからやっているというわけじゃないんだ。たとえ治療がダメだったとしても、データは活用できるからね。また新しい治療法がないかとか考えながら、がん治療を楽しんでいるんだ」

自らの「死後」についても、壮大なプランを描いている。

「これまでテレビやラジオに出演したときのデータは全部とってある。X(旧ツイッター)やブログのテキストもたくさんある。そいつを全部読み込ませたら、僕そっくりのAIができるんじゃないかな。そうなれば、僕がいなくなっても、『AI高須』がSNSで発信したり、みんなの質問に答えたりできるんじゃないかってね。もし可能だとしたら、思いっきり投資したい!」

今回の新著も、その「AI高須」を構成するデータの一部にする計画だという。激動の人生を生き抜き、未来を見据えている。

「面白ければ、それでいいの。『人生を楽しんでますか?』が、高須クリニックの合言葉だからね」

高須氏の人生そのものを表しているかのような言葉だった。

高須克弥(たかす・かつや) 美容外科医で医学博士。美容外科「高須クリニック」統括院長。愛知県出身。日本に「脂肪吸引手術」を普及させた先駆者で、「Yes、高須クリニック」のCMフレーズでもおなじみ。芸能界、財界、政界と幅広い人脈を持つ。『大炎上』(扶桑社新書)、『全身美容外科医』(講談社+α新書)など著書多数。趣味はゴルフと麻雀。

(ペン・磯西賢/カメラ・川口良介)