
高市政権にとって“落とし穴”になる可能性も(日本維新の会の吉村洋文・代表/時事通信フォト)
始動したばかりの政権が、いきなり永田町・霞が関を揺るがす全面戦争の口火を切った。積極財政を掲げる高市早苗・首相は最大の障壁となる財務省を中心とした“増税マフィア”に閣僚人事などで正面から戦いを挑み、財務官僚出身の積極財政派、片山さつき氏を財務大臣として送り込んだ。財務省サイドも水面下で反撃の準備を着々と進めている。政権発足早々事態は風雲急を告げている。【全4回の第3回。第1回から読む】
財務省が「サボタージュ」作戦か
財務省出身の片山さつき・財務相がその“豪腕”で積極財政を進めようとしても、それをかわすように自民党の政策審査の段階でストップをかけられれば何一つ動かせない。財務省の周到な封じ込め策に、片山氏の歯ぎしりが聞こえてきそうではないか。
財務官僚たちは省内ではサボタージュで片山大臣を“孤立”させようと手ぐすね引いている。
「片山大臣は自分自身への評価が高く、官僚には高飛車。そのうえ政策では誤魔化しが利かない。省内には“片山さんだけは大臣になってほしくない”と思っている者が多かったから、財務大臣に決まってみんな絶句している。
それでも、財務省は予算や税制だけではなく、国会運営から野党の動向まで情報を細かく集めている。片山さんが事務方の意見に耳をかさずに一方的に命令を出すようなら、信頼関係がなくなって幹部たちは所管の政策についての最低限の情報以外、情報を上げなくなるのではないか。そうなれば困るのは大臣のほうでしょう」(中堅官僚)

片山さつき氏(時事通信フォト)
維新の「身を切る改革」は高市首相と対極
高市首相にとって“落とし穴”になりそうなのが維新の存在だ。
「身を切る改革」を掲げる維新はそもそも「地方分権」「小さな政府」を志向し、政府が企業にカネを出して経済成長を促すという中央集権型の積極財政論者の高市首相とは立ち位置が対極になる。
維新が連立合意に盛り込んだ国民医療費削減の内容も、財務省の主張と一致している。
「維新は石破内閣が公約した物価高対策の2万円給付を撤回させたし、医療制度改革では市販薬と成分が似ているOTC類似薬を保険適用から外して患者に自己負担させ、医療費を削減すると言っている。財務省がやりたかった政策そのものだ。
維新がその調子で歳出カットを進めてくれれば赤字国債を発行しなくてよくなるから、高市総理の言う『責任ある積極財政』につながる。しかし、医療費削減には自民党の支持基盤の医師会が反対しているから、自民党内がもつかどうかだろう」(財務省OB)
その維新が閣外協力で大臣を出さなかったことから、高市首相は遠藤敬・維新国対委員長を首相補佐官に起用し、吉村洋文・代表ら維新首脳部との連絡役として官邸に常駐させる。
維新の動向が政権の先行きを決める鍵になると見ている財務省は「将来の次官候補」とされるエースの吉野維一郎・主計局次長を首相秘書官として官邸に送り込み、遠藤氏をマークさせるという。
「高市総理は秘密主義で維新との連立交渉も秘密裏に行なった。吉野秘書官は官邸で遠藤補佐官の動向をウォッチして、本省と対応策を練るのが重要な役目になる」(財務省中堅)
(第4回に続く)
※週刊ポスト2025年11月7・14日号