小国町が発注した公共工事の入札をめぐり、贈収賄の疑いで町の前の建設課長と建設会社・社長が逮捕された事件。2人の身柄が11月6日に熊本地検に送られた。一方、警察は先ほどから小国町役場で家宅捜索を行っている。
前建設課長と建設会社社長が逮捕される
この事件は、2025年3月まで小国町の建設課長を務めていた小野昌伸容疑者が、2023年6月から2024年12月にかけて、町が発注した土木工事などの指名競争入札に小国町建設業協会に所属する伊藤組など、9社を選定したことなどへの謝礼として、伊藤組の社長・伊藤英志容疑者から29回にわたり、食事など合わせて52万円相当の接待を受けた疑いで、11月5日に逮捕されたもの。

警察は「捜査に支障がある」として2人の認否を明らかにしていない。また、小国町によると、小野容疑者が建設課長を務めていた3年間で、小国町は190件(総額22億5000万円あまり)の工事を発注。このうち伊藤組は5年前の豪雨災害の復旧工事などを含め、29件(総額約4億9000万円)の工事を請け負っていたという。

今回の贈収賄事件を受けて、小国町民は「昔から仲良しとはいえ、そういうことをするのはよくない」や「〈公務員の不祥事が小国でもあったか〉と残念だった」と話す。

警察は11月5日に伊藤組の家宅捜索を行い、翌6日午後5時半ごろから、小国町役場で家宅捜索を実施した。警察は2人に余罪がないかや、他に関与した人物がいないかなど調べを進めている。
渡邉小国町長「便宜の図りようがない」
職員の逮捕を受けて、小国町の渡邉誠次町長は5日夜に会見を開き、「まずは関係者、町民の皆さまに、お騒がせしていることについて、おわびをしっかり申し上げたい」と冒頭で謝罪した。

一方、容疑の『見返り』とされる部分については、「価格を公表し、指名競争入札をしているので、便宜は図れないと思う。その部分は私も警察に話したが、ご理解いただけていないと正直思っている」と、逮捕された前建設課長が「便宜を図ることはできない」と否定した。

小国町の説明によると、指名競争入札の前には、どの業者を指名するかを協議する審査会があり、小野容疑者はこの審査会のメンバーに含まれていた。しかし、予定価格を公表している上、入札には小野容疑者が所属していた建設課が関与しないため、小国町は「最終的な公共事業の落札には『便宜の図りようがない』」と主張している。

また、渡邉町長は、小野容疑者が伊藤容疑者の中学時代の先輩だとした上で、今回の『接待行為』については、「付き合いが長い中で、どれくらいの(金額の)幅があるかは分からないが、お互いにそういった付き合い(おごったり、おごられたり)があるというのは聞いていたので、そういった部分では違法性はないのではないか」と話した一方、「毎回おごられているのであれば問題かもしれない」とも述べた。
選定過程でも潔白を示せるかが焦点
この小国町・渡邉町長の一連の発言について、熊本大学法学部の伊藤洋典教授に話を聞いた。

伊藤教授は「調査が入って、いろいろと明らかになる中で、違法かどうかはっきりする。『おごり、おごられ』も、社会通念上、〈これぐらいなら〉という金額より、かなり大きいものが報道されている。『違法性がない』とは言い切れない場面が出てくる可能性もある。町長の発言は〈少し先走ったかな〉という印象」と話した。

また、「入札に関係して何か便宜を図ったのではないかという局面と、指名の基準を作る段階で何らかの関係があったのではないか。どの段階でも潔白であると証明できるかが、焦点になる」と入札・落札だけでなく、その指名競争入札に選定される過程についても、焦点になるだろうと指摘した。

また、町の建設業協会に加盟する9つの業者で公共工事の入札が行われていることについて、「公共事業を実施する場合、公益の実現のためにやるわけだが、地域経済を活性化するという目的が付随してくるため、町内の業者を優先する。そこが一番、こういった問題の温床となる。目的が二つ重なっている。事業の実施と地域経済の活性化。このままでいいのかというところがある」と述べ、公共事業において求められる透明性、公平性の担保に疑問を呈した。
(テレビ熊本)