
八田容疑者の捜査で、海底の堆積物の調査が始まった(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
重要指名手配犯に指定されている八田與一容疑者が別府市の県道交差点で、信号待ちのバイク2台に軽乗用車で追突し、大学生らを死傷させた事件からまもなく3年半が経つ。大分県警は事件後、防犯カメラの映像などから、容疑者が現場から東の別府湾方面に向かったと特定し捜査。港湾沿いでは、遺留品とみられる黒のTシャツが見つかり、これが事実上、最後の手がかりとなっている。
すでに病気で亡くなった容疑者の祖父も生前、記者にこんなことを語っていた。
「シャツが別府湾に脱ぎ捨ててあった。着るものも金も持たずに生きているわけがないんだよ。生きていたら暖かく迎えてやりたいが……」
生死も定かではないなか、警察は新たな動きに出た。事件発生当時から容疑者の取材に関わる民放の記者が話す。
「大分県警が、別府湾の海底にある堆積物を調査していることがわかりました。県は10月に入ってから、漁師と連携しながら別府湾沿いの3つの港で海底清掃を実施していて、捜査関係者が引き上げられたゴミなどを確認しているということです。県警は、八田容疑者が海に入って逃げた可能性も視野に捜査を進めているとみられます」
別府湾が捜査の鍵になっているのにはワケがあるようだ。
「八田容疑者は事件前、愛媛の松山刑務所から海を渡って逃げた脱獄犯に興味をもっており、知人などにその話をしていた。県警も事件解決に必要な捜査だと判断して、作業にあたっています」(同前)
雲隠れを続ける八田容疑者。県警への情報提供は10月末までで1万5000件を超えているが、有力な手がかりはいまだない。
ではなぜこのタイミングで別府湾の調査に踏み切ったのか。現地の漁港で働く関係者の男性が話す。

”韓国風メイク”を施した八田容疑者(SNSより)
海底の泥の中に何があるのか…
「そもそも別府というか、九州ではここ10年以上台風の直撃とかがなくて。海水の入れ替わりがあまりないから、海底のゴミなどを人の手で回収する作業を行なってきました。
ただ、一度、清掃作業したエリアでは連続して作業してはいけないというルールがありまして、この作業をするのは数年ぶりなんです。なので作業が再開したタイミングで、県警のほうから協力をお願いしますと要請があったわけです」
この関係者によれば、清掃作業は2班体制。それぞれの班が10日間ずつ順次、別府湾の港から船を出して作業を行う。現在は、杵築市と別府市の港から2キロほど離れた海域に船を出しているようだ。
別府湾は面積およそ475平方キロメートル、水深は平均36メートルといわれる。男性は、“手がかり”が見つかる可能性についてこう語った。
「3メートルの“すき”を使って海底の泥を耕すんですが、その際に網も一緒につけていますので、ある程度のゴミが取れる。警察の方はそのゴミを丁寧に調べている。
あくまで私の知る範囲ですが、これまでの作業で、人骨のようなものが見つかったのは1回。それも最初は『豚の骨じゃないか』という話になったり、あまり判別がつくものではなかった。
死体にしても、例えば海で亡くなった方は最初浮いていますが、1回沈んでその後は腐敗が進むそうです。そのあとはまた浮いてくるときもありますが、そのまま海の底で魚のエサになってしまって跡形もなくなるパターンもざら。警察の方が本気で捜査しているので、もちろん何か見つかってほしい思いはありますが、雲を掴むような話かもしれませんね……」
被害者遺族や有志により結成された『願う会』は11月8日、公式Xを更新し「あらゆる可能性を全て潰していって欲しい」(原文ママ)などと期待を膨らませている。
事件解決の一手となるか──。