『プリキュア』にも大きく水をあけられて…〝終了報道〟「スーパー戦隊」が直面していた厳しすぎる現実

テレビ朝日の看板シリーズの一つでもある「スーパー戦隊シリーズ」が50年の歴史に終止符を打つことが報じられ、波紋をよんでいる

数字が突き付ける厳しい現状

10月30日、今年で50周年を迎えたテレビ朝日系の『スーパー戦隊シリーズ(以下、スーパー戦隊)』が、現在放送中の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』をもって終了することを共同通信が報じた。

11月10日現在、まだテレビ朝日からの正式発表はないが、記事では終了の理由について〈イベントや関連グッズ、映画化などで得られる収入が番組制作費に見合わない〉と報じている。

「放送記者会に入っているスポーツ紙や一般紙は、テレビ各局の番組についての記事を日常的に書いています。この手のスクープを出すこともありますが、今回は大手通信社・共同通信のスクープです。『スーパー戦隊』の制作元であるテレ朝や東映の中枢にいるような、よほど信頼できるネタ元から情報を得たのでしょう。そうでなければ、テレ朝はただちに終了を否定していたはずです」(放送担当記者)

『スーパー戦隊』は恒常的にその収支が厳しい状態にあったようだ。現在、テレ朝系の日曜午前は8時半から『キミとアイドルプリキュア』、午前9時から『仮面ライダーゼッツ』、午前9時半から『ゴジュウジャー』を放送している。『プリキュア』と『仮面ライダー』は『スーパー戦隊』と並ぶ同局の三枚看板シリーズだ。しかし、玩具などのグッズの売り上げや映画の興収において『スーパー戦隊』と2者の間にはかなり差が開いてしまっている。

三枚看板シリーズのグッズの販売は、大手の『バンダイナムコホールディングス』(東京都港区)が請け負っている。同社は作品別の売り上げ概況を公表しており、今年3月までの通期実績によると、関連商品の売り上げは3作品の中では『仮面ライダー』がダントツのトップで307億円。続いて『プリキュア』が79億円。『スーパー戦隊』は64億円で『仮面ライダー』の約5分の1にとどまっている。さらに劇場版の興収でも『スーパー戦隊』は旗色が悪い。

「もはや、〝伸びしろ〟がない」

「9月に公開された『映画 キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ! キミに届けるキラッキライブ!』は9月に公開され、興行収入が12億円に迫るヒット作となりました。一方、夏休みシーズンの7月末に同時上映された『映画 仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』と『映画 ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー 復活のテガソード』は2作合わせて集計された興収が6.5億円ほど。ヒットの基準といわれる10億円には届いていません」(東映関係者)

関連グッズの売り上げではあまり差が開いていない『プリキュア』も劇場版では稼いでいる。しかも、実写であるぶん『スーパー戦隊』のほうが制作費はかさむ。〈得られる収入が番組制作費に見合わない〉という終了の理由にも納得させられてしまう。

『スーパー戦隊』が衰退してしまった理由を芸能ジャーナリストの平田昇二氏はこう分析する。

「『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)のように3人編成のケースもありますが基本的に『スーパー戦隊』は5人編成で演者が多い。加えて『巨大ロボット』の要素も取り入れていることから他の特撮シリーズ作品と比べてもコスト面の負担は大きいといわれていました。

『スーパー戦隊』は対象年齢が幼児から小学校低学年までとかなり限られています。それに対して『仮面ライダー』は幼児から大人までとファン層が広い。コレクター市場も確立されている『仮面ライダー』と比べると、もともとIP(=知的財産)としての脆弱さがありました。

また、『スーパー戦隊』をモデルにした『パワーレンジャー』は米国でも人気を集めていますが、『ウルトラマン』『仮面ライダー』の両シリーズなどと比較すると海外のファンのグッズ需要という点においても劣っていると言わざるを得ず、もはや収入面では〝伸びしろ〟がないのです」

収益が厳しくなった背景には、少子化や子供のテレビ離れなど当世ならではの事情もあるようだ。50年の歴史に終止符が打たれるのも時代の流れなのかもしれない。テレ朝がどのタイミングで「スーパー戦隊」の終了を正式発表するのかが注目される。