高齢化にペット、IT機器…多様化する「DV被害者」事情に対応する津山市のNPO法人の取り組み【岡山】

◆11月12日から「女性に対する暴力をなくす運動」近年は高齢化も…DV問題の現状

漆黒の「烏城」に紫の光があてられています。岡山市北区の岡山城では11月12日から2週間はDV・ドメスティックバイオレンスなど「女性に対する暴力をなくす運動」の期間で、その啓発のためのライトアップです。

コロナ禍以降、パートナーの在宅が増え社会問題となっているDV。さらに近年、高齢化などDV被害者の事情は多様化しています。現状を取材しました。

◆「出るしかない」長年の暴力に耐えかね…夫が寝込んだ隙に車で“脱出”

(DV被害者)
「一番つらかったのは、子供たちの前で足で蹴られたり、物を投げられたりしたこと。つらかったです」

こう語るのは夫から暴力を受けたDV被害者の70代の女性です。

(DV被害者)
「主人が長年暴力を振るっていた。性的暴力も、今まで何回も暴力を受けてきたので、触られるのが嫌だった。それが嫌で拒否した、そうしたら私の部屋に置いてある物を全部外に投げ出された」

岡山県の内外・9カ所のDVシェルターを運営する津山市の認定NPO法人「オリーブの家」。この女性を2025年9月から保護しています。

(DV被害者)
「70代だが、本当につらい。私の人生は何だったのか、どうして主人はこんなふうになったのか」
(・・・よく決心されましたね)
「その日は出るしかないと思った。主人が寝込んだ後にこっそり車を運転して、身の回りの物を持って出ました。主人が部屋に入ってこないことだけでも安心」

◆子供が育つまで、孫ができるまで…耐えてきた「高齢者」の相談が増加

コロナ禍以降、パートナーの在宅が増えたことなどでDVが顕在化し、全国の相談件数は、高い水準で推移しています。「オリーブの家」でも対応に追われてきました。

(オリーブの家 山本礼知理事長)
「特に増えているのが高齢者。60代、70代が多い。これまでDV受けてきたが、子供もいるし、育つまで、孫ができるまで我慢して。でも残りの人生を考えたら、もうこの人と一緒にいたくないと、出てくるというパターンが増る」

◆逃げたくても逃げられない「ペット」の存在がDV被害を助長するケースも

年齢層の広がりや家庭環境の変化、多様化するDV被害者の事情に対応しようと「オリーブの家」では2025年、新たな取り組みを始めています。

(オリーブの家 山本礼知理事長)
「こちらが新しく改修したペット可のシェルター」

ペットと一緒に保護できる専用のシェルターです。

(オリーブの家 山本礼知理事長)
「最近増えてきたのが、ペットがいるから逃げられない、ペットがいるから断られたとの声が大きくなっている」

オリーブの家によりますと自治体などが運営する公共のシェルターでペット同伴が可能なところはなく、民間でもわずかだといいます。

(オリーブの家 山本礼知理事長)
「イヌは小型犬、ネコは、だいたいの人は1匹だが、結構多い時があり最多で4匹」

2025年の春からクラウドファンディングで資金を集め、ペットも暮らせるようシェルターの水回りを改修しました。これまでに6組をペットと一緒に保護しています。

(オリーブの家 山本礼知理事長)
「ペット自体を脅しに使う加害者もいる。「逃げたらペットに虐待してやるぞ」と。それでは逃げられないので、まるっと保護。オリーブの家はそれができるので相談が増えた」

ペットは、シェルター生活や今後の自立を支える存在だと、山本礼知理事長は言います。

◆世界に遅れを取る日本の「公共シェルター」 携帯電話などの持ち込み不可は異例

山本理事長は、2025年9月、オーストラリアで開かれた、世界女性シェルター会議に出席しました。世界約100カ国からシェルターの運営団体の関係者などが集まる国際会議です。そこでは日本の制度や対応の遅れについて指摘がありました。

(オリーブの家 山本礼知理事長)
「日本の公共シェルターは携帯電話やパソコンなど電子機器(の持ち込みが)駄目なことを世界会議で話したら驚かれて、どうやって生活するのかと、オリーブの家では、GPSの制限はするが、携帯電話は使用してもらえる」
「社会情勢を加味しながら、国や関連機関に声を上げていくことが一番大事」

◆離婚調停を目指す被害女性が訴える”新しい人生を切り開く勇気を”

いま、シェルターで保護されている70代の女性は、オリーブの家のサポートを受けながら、離婚調停を進めています。新しい人生を切り開こうと前を向きました。

(DV被害者)
「これから最後、何年生きられるか分からないが、もう自分の人生を歩みたい。気づいたらすぐに行動を起こしてほしい、私はそれが悔やまれる。この年齢になってから。でも今だからできたこともある。勇気を出してほしい」
Q:逃げて良かったですか
「もちろん。色んな人に守ってもらっている。それは本当に良かった」