
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
〈Ohayo Tokyo Konichiwa, Sumimasen I’m foreigner, I don’t speak Japanese, but I love Aoi Sora(おはよう東京こんにちは。すみません、私は外国人です。日本語は話せないけど、蒼井そらは大好きです)〉
顔の半分以上はあろうかという星型の奇抜なサングラスとピンク色のニット帽を身につけ、軽快なラップを刻む男。「東京盆踊り2020」という楽曲名のミュージックビデオに登場し、セーラー服姿の女性たちとのダンスを披露しているのがマレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」だ。同曲は日本で「Makudonarudo(マクドナルド)」の通称としても知られている。【前後編の前編】
ネームウィーは「黄明志」の中国語名を持つ中華系マレーシア人で、歌手だけでなく映画監督やYouTuberの顔も持つ。台湾では知名度が高く、台湾のグラミー賞と呼ばれる「金曲奨」にたびたびノミネートされるなど、アジアをまたにかけて活動している。冒頭の歌詞にある通り、日本の有名セクシー女優との共演もあり、日本でも一部で知られた存在だった。
そんなアジア圏で人気のネームウィーが、殺人事件に関連してマレーシアの捜査当局に拘束されるという驚きのニュースが飛び込んできた。
事件の被害者はインスタグラムで50万人以上のフォロワーを有する台湾の人気インフルエンサー、アイリス・シェ(謝侑芯)さん(31)で、10月22日にマレーシア首都・クアラルンプールにあるホテルの一室のバスタブで遺体となって見つかった。
マレーシア当局はその後の捜査で殺人事件と断定し、ネームウィーがバスタブで意識不明のアイリスさんを発見し、救急に通報したことも明らかになっている。
全国紙国際部記者は事件の経過をこう説明する。

遺体となって発見されたアイリスさん(Instagramより)
「マレーシア当局は、ネームウィーが生前のアイリスさんに会った最後の人物とみており、10月22日に殺人の容疑とは別に、エクスタシーとみられるドラッグの所持および使用の容疑で逮捕しました。
ネームウィーは違法薬物を所持した罪で起訴された後に一度釈放されましたが、11月5日にアイリスさん殺人事件の捜査に協力するためとして、再び拘束されました。マレーシア当局は殺人事件と断定した根拠を示していませんが、検死の結果をまとめるのに3か月はかかるとされています」
ネームウィーは11月5日の逮捕の直前にオンライン上で声明を発表し、違法薬物への関与を否定した。また、警察に出頭してアイリスさん殺人事件の捜査に全面的に協力する考えを示し、彼女の死に関連したいかなる不正も行っていないと強調した。
さらに、ネームウィーは地元メディアについて、根拠がないにもかかわらず騒ぎ立てているだけの「センセーショナリズム」だと批判し、自身の通報から到着までに1時間を要した救急サービスにも矛先を向けた。
死亡したアイリスさんは10月20日から4日間マレーシアに滞在する予定だったといい、ネームウィーが監督するビデオの打ち合わせのため、同国を訪れていたとされる。アイリスさんはインフルエンサーになる前の職業が看護師だったため、ファンの間では「ナースの女神」とも呼ばれていた。2020年頃にはネームウィーが監督した「China Reggaeton」という楽曲のミュージックビデオにも出演していた。
鬼才ラッパーとナースの女神の間で何があったのか。そしてネームウィーの人物像とは──。後編ではこれまでの過激な“炎上”について詳報する。
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