
九州場所で売り出されるのが恒例のカレンダー
1年の納めの場所となる大相撲九州場所。例年、会場となっている福岡国際センターの売店には翌年の相撲協会の公式カレンダーが登場する。1月から12月まで各月に力士の写真が掲載され、番付発表日、場所の開催日程、前売りチケットの発売日などが書き込まれている相撲ファン必携のカレンダーだ。ただ、「カレンダー」という商品の性質上、その制作には困難も伴う。
相撲協会の公式カレンダーは、前年9月の秋場所の番付に準じて翌年の1~12月の紙面が構成されるが、「ここ数年のカレンダーは番付崩壊による影響を受けて大変だった。なかでも今年(2025年)のカレンダーは困ったことになってしまった」と言うのは、協会関係者のひとりだ。今年前半のカレンダーの登場順は以下のようになっている。
・1月/照ノ富士、琴櫻、豊昇龍、大の里
・2月/照ノ富士の土俵入り
・3月/照ノ富士と琴櫻のまわし姿
・4月/琴櫻、豊昇龍、大の里の化粧まわし姿
・5月/豊昇龍と大の里のまわし姿
・6月/平戸海、霧島、阿炎、大栄翔の化粧まわし姿
昨年9月場所時点での横綱、大関、三役の力士の名前が並ぶが、いま振り返れば現実に合致していないとよくわかる。前出の協会関係者が続ける。
「カレンダーには横綱や大関といった地位は書かれていないものの、登場する月になる頃にはその地位が保てていないケースが多数発生してしまった。1月場所6日目にひとり横綱だった照ノ富士(現・伊勢ヶ濱親方)は引退。ナンバー2扱いの琴櫻も1月場所を負け越した。
1月、2月、3月のカレンダーに引退した照ノ富士が登場し、1月場所で優勝して横綱昇進を果たした豊昇龍は、新横綱場所の3月に登場せず。4月、5月に登場した大の里は2場所連続優勝で5月場所後に横綱昇進と期待通りの活躍を見せたが、ナンバー2扱いで登場した琴櫻は3月以降の本場所でも勝ち越すのが精一杯でした」
7月は阿炎と霧島、8月は平戸海と大栄翔がまわし姿で登場し、三役格の扱いだが、「4人とも大関候補どころか三役に定着することもできなかった」(同前)のである。9月、10月、11月は幕内力士、12月は十両力士の化粧まわしという構成だったが、年の前半は実際の番付とのちぐはぐさが目立つ結果となった。

来年1月は三役以上が揃い踏み
今年は堂々と売られている!?
ここ数年は、ケガを抱える横綱・照ノ富士が休場がちで引退間近と囁かれ、大関陣もなかなか地位を保てない「番付崩壊」の状態が続いたため、カレンダー制作には苦労のあとが窺えた。
「2023年のカレンダーでは2月と9月にひとり横綱・照ノ富士が登場したが、土俵に上がったのは5月(夏場所)と7月(名古屋場所)場所だけ。大関陣として3月に貴景勝、正代、御嶽海がそろい踏みとなったが、正代はカレンダーが発売された2022年11月(九州場所)で大関陥落となり、紙面に登場した3月(春場所)は前頭筆頭。御嶽海も発売された九州場所で関脇に陥落し、3月の春場所では前頭3枚目となっていた。
2024年のカレンダーも前年の9月の秋場所の番付で構成されたものの、ひとり横綱の照ノ富士が単独で登場するのは1月だけ。本場所がない2月は三役陣ら9人と、8月は大関陣と4人で一緒に収まっている写真が使われた。1年の途中でいつ引退してもおかしくないように、という工夫をしたのではないか。照ノ富士は1月(初場所)と7月(名古屋場所)は優勝したが、残り4場所は休場でした。
他にも2024年は、貴景勝、霧島、豊昇龍の3大関(当時)が本場所のない10月に3人で登場していたが、10月時点で豊昇龍以外は大関を陥落しており、貴景勝は9月の秋場所3日目に引退してしまっていました」(別の協会関係者)
そういった難しさがあるためか、ここ数年は九州場所の売店では相撲絵や国技館を表紙に使用した公式カレンダーが売り場の片隅でひっそりと売られていた。
一方で今年は、大の里と豊昇龍の東西の横綱が収まった表紙のカレンダーが堂々と売られている。1月は秋場所の協会挨拶で三役以上が勢揃い。2月は大の里、3月は豊昇龍が横綱の肩書で登場。4月は横綱2人の揃い踏み。5月は大関・琴櫻、関脇・若隆景と霧島、小結・高安と安青錦が、6月と7月は幕内力士が登場している。8月は大の里、9月は豊昇龍と横綱が再び登場し、10月と11月は大関、関脇、小結がまわし姿で再び姿を見せる。締めの12月は十両力士が掲載されている。
「大の里の一強時代となる可能性もあるが、大関と違って陥落がないため2横綱時代はしばらく安泰でしょう。やはり強い横綱がいると全体が落ち着きます。秋場所時点の番付のため、引退した人気力士の遠藤(現・北陣親方)や宝富士(現・桐山親方)も十両力士として化粧まわしで登場していることもあり、売れ行きは好調です」(販売員)
大関が相次いで陥落したり、平幕優勝が出たりするのはガチンコ時代の大相撲の魅力のひとつ。来年のカレンダーにどのようなちぐはぐさが生まれるのか、という点にも期待をしたい。

賑わいを見せる売り場

2横綱が揃う表紙

2025年カレンダーの表紙には力士が登場していなかった

2024年も力士は登場せず

来年2月に登場するのは大の里

続いて3月に豊昇龍が登場する