「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】

インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)

インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)

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イギリス中を震撼させた「史上最悪の性暴力事件」に新たな動きが起こった──。

11月16日(現地時間、以下同)、イギリスメディア『デイリー・メール』が、英刑務所で終身刑を受けているインドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(42)を送還するように、インドネシア側が求めたと報じた。シナガ受刑者は、2015年1月から2017年5月にかけて、少なくとも136人へのレイプを含む159件の性犯罪で有罪判決を受けている“イギリス史上最悪のレイプ犯”として知られている。

英国の刑法史上、最も多くの被害者を出したとも言われる性犯罪事件を起こしたシナガ受刑者(FBより)

英国の刑法史上、最も多くの被害者を出したとも言われる性犯罪事件を起こしたシナガ受刑者(FBより)

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大手紙国際部記者が解説する。

「今年10月22日、インドネシアの刑務所に収監されていたイギリス人女性を英国に送還する合意が結ばれました。彼女は、2013年にインドネシアで死刑判決が下されていたのですが、イギリス側は人道的配慮などの観点から帰国させるよう、長年にわたって交渉していました。このたび12年越しで合意に至ったのですが、インドネシア側は“交換条件”としてシナガ受刑者の本国送還を要求しているというのです」

英国の刑法史上、最も多くの被害者を出したとも言われる性犯罪事件を起こしたシナガ受刑者。現地メディアによると、彼が暴行をはたらいた被害者のほとんどは“異性愛者の男性”だったとのことだ。

「2007年からイギリス在住だったシナガ受刑者は、ナイトクラブやバーから出てくる男性を待ち伏せし、『うちに来て飲まないか?』『タクシーが来るまでウチにいたらいい』などと言葉巧みに自分のアパートへ誘い込んだ後にデートレイプドラッグを飲ませ、意識を失った男性に暴行したとのことです。

発覚した事件だけで136件。被害者は18歳から36歳までの男性で、平均年齢は21歳。現地警察は、潜在的な被害者はさらに多いとみています。

卑劣な手口で犯行を重ねたシナガ受刑者でしたが、2017年6月、暴行を受けている最中に意識を取り戻した被害者の通報によって事件が発覚。逮捕後に押収された受刑者のスマホから、数多くの男性に対して暴行する様子が撮影された3.29TB(編集部注:フルHD映像で少なくとも500時間以上)もの動画が発見され、大規模な捜査に発展しました」(同前)

“イギリス史上最悪のレイプ犯”として知られている(FBより)

“イギリス史上最悪のレイプ犯”として知られている(FBより)

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地獄の囚人生活で…

ドラッグによる意識消失状態で犯行に及ぶ悪質性の高さ、かつ100人超の被害者が存在する性犯罪は、イギリスでも前例がなかった。

「裁判は4回にわたって行われ、そのすべてで有罪判決が下されました。量刑は最低30年の服役期間を条件とした終身刑。殺人以外で終身刑が下されるのは、イギリスでは異例中の異例です。しかしこれでも『まだ過度に軽い』として、マイケル・エリス元司法長官が最低刑期の延長を主張。英・控訴院は、服役を最低40年間に引き上げる決定を下しました」(同前)

2020年、シナガ受刑者は英ウェスト・ヨークシャー州のウェイクフィールド刑務所に収容された。同刑務所は、重罪を犯した囚人が多く収容される「カテゴリーA(厳重警備施設)」に分類されており、内部では暴力沙汰やいじめが横行する──別名“モンスターマンション”とも呼ばれる場所だった。

そんななか、シナガ受刑者もまた暴力の標的となった。

レイプを含む159件の性犯罪で有罪判決を受けている(FBより)

レイプを含む159件の性犯罪で有罪判決を受けている(FBより)

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「現地メディアによると、シナガ受刑者は、普段からの傲慢な態度および犯した罪によって、ほかの受刑者からよく思われていなかったようです。そのため、刑務所内で発生した暴力事件によって重傷を負いました。

そうした背景から今年2月ごろ、シナガ受刑者の安全の保障を目的とした本国送還の可能性が浮上。背景には両親の強い要望もあったといいます。そのプロセスとして囚人交換の可能性が立ち上がったのですが、両国間で協定が結ばれていたり、法的枠組みが十分整っていたりするわけではなかった。しかし、ここに来て進展の可能性が出てきたのです」(同前)

冒頭で触れたイギリス人女性の送還は、シナガ受刑者を帰国させるための“交渉カード”になったのだ。

「ただ、両国とも懸念される事項は多い。仮に囚人交換の実現可能性が高まったとして、イギリス国内からは『多くの自国民が被害に遭った犯罪者を他国に受け渡すのか』という批判や、『インドネシアに送還することで刑罰が軽くなるのでは』との声が上がる可能性があります。またインドネシア側も、重罪人を受け入れることによる監視リスクの高まりなどを理由に反発が出るかもしれません。クリアすべき課題は多いでしょう」

両国間の交渉は次のフェーズに移ったばかりだ──。