先週末、滞在先の福岡でテレビを見ていたら、前川清の旅番組が放送されていた。
聞けば、九州メインのローカル番組で、九州のさまざまな場所を旅して、その土地の人々と交流するという内容。かなりの人気番組だそうだ。
番組内で本人も話していたが、自身の年齢が77歳になったという。変わらず気さくな前川と一般人のトークがおもしろかったが、地元の知人に聞くと、前川の曲ばかりカラオケで歌うという人と出会った際は、わざわざカラオケ店で歌ってもらい、前川が大喜びすることもあったそうだ。
その話で思い出したのだが、その昔、取材の合間に同席してお茶を飲んだことがあり、よもやま話の中で「僕はカラオケで前川さんの歌を歌います」と彼が当時歌っていた曲名を挙げてみたことがあった。
すると、のんびり足を投げ出して座っていた前川がサングラスを外し、「どうも、ありがとう」と頭を下げてきたのだ。当方は驚いたが、前川は「『東京砂漠』や『そして、神戸』といった昔の(クール・ファイブ時代の)ヒット曲を歌ってくれる人はたくさんいるけど、今の曲を歌う人はなかなかいないんだ」と感激した様子だった。
それから2年ほど経って別の取材で前川に会ったら、「カラオケ、行ってる?」と声をかけてくれた。以前のことを覚えていて、「楽しんでね」と付け加えてくれた。
同じようなことは、堀内孝雄(76)でもあった。「堀内さんの最近の曲で2曲ほどいつも歌っています」と話すと、大喜びしてくれたのだ。その際、「最新曲のサビのところの最後のところが歌いにくくて、うまくいかないんですよ」と言うと、ニヤッと笑った堀内は「1カ所だけならいい手があるんですよ。そのひと言だけ歌わないで、一拍置いてセリフにするんです。聴いてる方は『この人、うまいんだろうな』と勝手に思ってくれるんですよ」とアドバイスしてくれた。
「とにかく大きな声で歌ってください」と教えてくれたのは、ある歌謡グループのボーカルをやったこともある女性歌手。「小さな声でフニャフニャ歌うのがダメ。大きな声を出すと自信があるように見えます。そうすると、音程もしっかりしてきますよ」とのことだった。
「楽しむ」「セリフにする」「大声で」──。僕のカラオケは、これを基本にして歌っている。