Author: d3001

「これも万博レガシー?」大阪万博で「会場内禁煙」をひっくり返した〝今だから言える〟本当の理由とは

27 October 2025

盛況のうちに幕を閉じた大阪・関西万博。しかし、そのウラにはいろいろな事情もあったようで…… 全面禁煙から一転して「分煙」に 大阪・関西万博が10月13日に閉幕して1週間が経った。パビリオンの解体作業も本格化しているという。 開幕当初は「建設費に2億円と報じられて大炎上したトイレ」や「石が吊られていて、怖くて気が休まらない休憩所」「ユスリカの大量発生」等、ありとあらゆる観点から批判された。しかし、日を追うごとに評価は高まり、終盤には当日入場券を求めて徹夜の大行列ができる人気ぶりに。赤字が心配された運営費も最大で280億円の黒字となる見通しだ。万博は多くの人の心に残る「レガシー」となったといえるだろう。 「喫煙所問題」も、万博批判の槍玉にあげられた問題の一つだった。当初、万博会場内は全面禁煙の方針で、2ヵ所用意された喫煙所は会場外。喫煙所までの遠さと数の少なさから懸念の声があがっていた。しかし、開幕後約2ヵ月半が経過した6月28日、全面禁煙から一転、会場内に一般来場者用の喫煙所が2ヵ所、関係者向けの喫煙所が3ヵ所新設されることとなる。 その理由について、当時は「関係者や来場者から『遠くて不便だ』という声があがっていた」「海外パビリオンの裏口などで吸い殻が確認される事態が続出した」などと報じられていた。 だが、本当の理由は別にあったのだ。万博運営関係者のA氏は「実は会場内で働く外国人スタッフの〝隠れ喫煙〟が横行していた。それが一番の理由です」と、万博が終わった今だからこそ言える理由を打ち明ける。背景にあったのは、日本と外国との喫煙マナーの違いのようだ。 喫煙のルールについて、世界的に見て日本は比較的緩いといわれるが、誰にも迷惑にならない場所であれば、どこで喫煙をしても問題ないというマナーの国も少なくない。大阪府・大阪市では万博を契機に路上喫煙禁止エリアの拡大などが進んでおり、会場をあらかじめ「喫煙制限ありき」の環境に整備する動きがあった。しかし、万博のようなさまざまな文化圏からの人が集まる場所で、その行動を完全にコントロールすることは難しいのかもしれない。A氏は喫煙所を新設するに至った経緯を教えてくれた。 「そもそも会場は禁煙だったのですが、来場者の意見や、出展国との関係もあって設置せざるを得なくなり、苦肉の策で『ゲートの外』ということにしたようです。開幕当初は東ゲートの外側喫煙所だけで問題ないと考えていましたが、予想を超える混雑などがあり、会場内と喫煙所の往復は非現実的に。海外パビリオンで働くスタッフの隠れ喫煙が止まりませんでした。スタッフ以外にも、一部の来場者が隠れて吸っていたこともあって、場内に作る流れになったと聞いています」 新設された喫煙所もギュウギュウ詰め それでは、会場内に喫煙所が設置されてから、喫煙事情は改善されたのだろうか。筆者は、9月中旬に万博の喫煙事情を取材していた。まず当初から設置されていた東ゲート付近(会場外)の喫煙所。万博会場の端から東ゲートまでは最短距離でも成人男性の通常歩行速度で15分ほど。会場内やゲート周辺が混雑している場合には、片道30分以上の時間がかかった。パビリオン関係者の場合は休憩時間に行って帰って来られるのかも疑問だ。開幕当初から何度も万博へ通うリピーターの40代男性が、その実情を語る。 「実は吸いに行くよりも戻る時が大変。一度ゲートを出ることになるので、再入場時には改めて手荷物検査を受ける必要があるんです。そのためには、もう一度長い入場列に何分もかけて並ばなければいけない。会場内に喫煙所ができてからは、万博のリング内からなら、2ヵ所とも10分前後で到着できるようになりました」 次に、筆者は万博会場内に新設された喫煙所に行ってみた。リング北側とEXPO メッセ(WASSE)南側の2ヵ所にある。昼ごろには多くの人たちが喫煙所を利用中だった。喫煙所の入り口付近まで人が溢れており、キャパシティにはやはり問題があったようだ。喫煙所の外壁にもたれかかり、タバコを吸っていた30代男性に話を聞くと、「人が多すぎて入れないんです」と話す。 「喫煙所を作ってくれたのはありがたいけど、じゅうぶんに広さがなくて、人が多くすし詰め状態。それでも、加熱式タバコを吸うぶんには、ここ(喫煙所の外)で吸っていたって、トイレの中や会場内の路上で吸うよりはマシですよね」 単純に敷地面積に対する喫煙所の割合を考えてみれば、万博会場は東京ドーム(124万㎡)33個分の面積がありながら、喫煙所は会場内外で計7ヵ所しかない(うち3ヵ所は関係者向け)。東京ドームは全面禁煙なので、似たサイズの京セラドーム(120万㎡)に喫煙所が5ヵ所あること考慮すると、やはり少ないように思える。まだ不便だという声も多かったが、当初からすれば多少は改善されたのかもしれない。 万博のような大きな国際イベントでは、想定外の事態はつきものだ。当初の方針を曲げて柔軟に対応せざるを得なかった「喫煙問題も」また万博の「レガシー」なのかもしれない。 南側の喫煙所を俯瞰した図。狭いところにみんなギュウギュウ詰めでタバコを吸っており、順番待ちも 北側の喫煙所。こちらはややゆとりがあるが、やはり混雑していた 東ゲート付近の喫煙所。ここは空いていたがゲートの外なので、会場内へ戻るには荷物検査の長い列に並ばなければならない 万博会場は広い。喫煙所が増えたとはいえ、やはり行くのは一苦労だ 来場者用の喫煙所マップ。いずれも大屋根リングの外にあるため、遠い

《増税派・財務省と対立の積極財政・高市首相》落とし穴になるのは“維新”の存在 「小さな政府」を志向、「医療費削減」など財務省の主張と一致する政策も

27 October 2025

高市政権にとって“落とし穴”になる可能性も(日本維新の会の吉村洋文・代表/時事通信フォト) 写真一覧 始動したばかりの政権が、いきなり永田町・霞が関を揺るがす全面戦争の口火を切った。積極財政を掲げる高市早苗・首相は最大の障壁となる財務省を中心とした“増税マフィア”に閣僚人事などで正面から戦いを挑み、財務官僚出身の積極財政派、片山さつき氏を財務大臣として送り込んだ。財務省サイドも水面下で反撃の準備を着々と進めている。政権発足早々事態は風雲急を告げている。【全4回の第3回。第1回から読む】 財務省が「サボタージュ」作戦か 財務省出身の片山さつき・財務相がその“豪腕”で積極財政を進めようとしても、それをかわすように自民党の政策審査の段階でストップをかけられれば何一つ動かせない。財務省の周到な封じ込め策に、片山氏の歯ぎしりが聞こえてきそうではないか。 財務官僚たちは省内ではサボタージュで片山大臣を“孤立”させようと手ぐすね引いている。 「片山大臣は自分自身への評価が高く、官僚には高飛車。そのうえ政策では誤魔化しが利かない。省内には“片山さんだけは大臣になってほしくない”と思っている者が多かったから、財務大臣に決まってみんな絶句している。 それでも、財務省は予算や税制だけではなく、国会運営から野党の動向まで情報を細かく集めている。片山さんが事務方の意見に耳をかさずに一方的に命令を出すようなら、信頼関係がなくなって幹部たちは所管の政策についての最低限の情報以外、情報を上げなくなるのではないか。そうなれば困るのは大臣のほうでしょう」(中堅官僚) 片山さつき氏(時事通信フォト) 写真一覧 維新の「身を切る改革」は高市首相と対極 高市首相にとって“落とし穴”になりそうなのが維新の存在だ。 「身を切る改革」を掲げる維新はそもそも「地方分権」「小さな政府」を志向し、政府が企業にカネを出して経済成長を促すという中央集権型の積極財政論者の高市首相とは立ち位置が対極になる。 維新が連立合意に盛り込んだ国民医療費削減の内容も、財務省の主張と一致している。 「維新は石破内閣が公約した物価高対策の2万円給付を撤回させたし、医療制度改革では市販薬と成分が似ているOTC類似薬を保険適用から外して患者に自己負担させ、医療費を削減すると言っている。財務省がやりたかった政策そのものだ。 維新がその調子で歳出カットを進めてくれれば赤字国債を発行しなくてよくなるから、高市総理の言う『責任ある積極財政』につながる。しかし、医療費削減には自民党の支持基盤の医師会が反対しているから、自民党内がもつかどうかだろう」(財務省OB) その維新が閣外協力で大臣を出さなかったことから、高市首相は遠藤敬・維新国対委員長を首相補佐官に起用し、吉村洋文・代表ら維新首脳部との連絡役として官邸に常駐させる。 維新の動向が政権の先行きを決める鍵になると見ている財務省は「将来の次官候補」とされるエースの吉野維一郎・主計局次長を首相秘書官として官邸に送り込み、遠藤氏をマークさせるという。 「高市総理は秘密主義で維新との連立交渉も秘密裏に行なった。吉野秘書官は官邸で遠藤補佐官の動向をウォッチして、本省と対応策を練るのが重要な役目になる」(財務省中堅) (第4回に続く) ※週刊ポスト2025年11月7・14日号