Author: d3001

「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」

26 October 2025

将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段 写真一覧 将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士がいる。青野照市九段だ。A級在籍11期、公式戦通算800勝を達成し、2024年6月、50年の現役生活に幕を下ろした。その青野九段が棋士人生を振り返って書き下ろしたのが、新書『職業としての将棋棋士』である。【前後編の前編】 「よくこんなムチャクチャな世界に、50年以上もいられたな」 そう述懐する青野九段だが、将棋を仕事にするとはどういうことか──。半世紀にわたって真剣勝負の世界に身を置いてきた青野九段に、本書に込めた思いと、将棋棋士という職業の魅力について聞いた。 * * * ──今回、なぜ棋士という「職業」をテーマに書こうと思われたのですか。 去年(2024年)6月に現役生活を終えたわけですが、どこかで集大成としてまとめてみたいと思っていました。将棋人生を振り返りながら、棋士の知られざる世界を全部書いてしまおうと。中には書かれて困る人もいるかもしれませんけど(笑)。 ──奨励会(プロの養成機関)時代から50年以上将棋界を見てきて、「よくこんなムチャクチャな世界に、50年以上もいられたな」と書かれていますね。 本でもいろいろなエピソードを書いていますが、とにかく奇人、変人の棋士が多かったですからね。もちろん天才も奇才も。私自身はどちらかというと平均的な感じの才能できた分、酒も博打もやり、将棋の才もある破天荒タイプの棋士にはやはり不思議な魅力を感じますね。 現役最後の対局を終えた青野照市九段(2024年6月13日撮影、共同通信社) 写真一覧 「塾生」時代に“将棋漬け”の生活を送った ──青野九段は、中学卒業時に奨励会に合格され、その後は高校に進まずに「塾生」になられたのですね。 師匠の廣津久雄八段が将棋連盟の専務理事だったこともあり、「塾生」となって東京・千駄ヶ谷の将棋会館に住み込んだんです。「塾生」とは、プロ棋士になる前の奨励会員の中で、将棋会館に住み込んで棋士を目指した者を言います。将棋会館は、当時は木造2階建てで、奨励会の中で格下の塾生は1階の大部屋、格上になると2階の洋室に移ることができる。そんな世界でした。 ──塾生はそこに住み込んで何をするのですか? まあ、体のいい使用人です(笑)。掃除、対局の準備や、食事の支度、おやつの買い出し、泊まり込む棋士の布団の上げ下げ、買い物などの雑用。夜は、娯楽室で麻雀をする棋士たちのための準備もあります。やっと休めると思って眠りについた途端、「蚊取り線香ないか?」とたたき起こされたことも。塾生は住み込みで3食出るので、お金には困らなかったのですが、心が休まることはなかったですね。そんな生活で、ストレスから胃腸を壊してやめていく仲間も多かったですよ。 ──当時は、師匠の家に泊まり込んで指導を受ける「内弟子制度」もありましたね。 内弟子は内弟子で、師匠の家に住み込んでずっと厳しく指導されるから、精神的にきついこともあったようです。円形脱毛症になる人もいました。でも、弟子を家に住まわせてまで指導しようと考える師匠は、心根の優しい人が多かったですね。今ではもう内弟子は1人もいませんし、塾生も1980年頃にはなくなりました。自宅や寮から将棋会館に通って修業する人ばかりです。 ──4年間の塾生生活。つらさと楽しさ、どちらが勝っていましたか。 きついことは多かったけれど、対局後の感想戦は聞き放題でしたし、将棋を指す相手にも困りませんでした。将棋漬けの生活ができたという意味では、ありがたい経験でした。 ──奨励会では、6級から三段まで一定の成績で昇級していき、三段リーグで勝ち上がった2名だけが四段(プロ棋士)になれる。プロになれるのはごく一握りですね。 「天才」と言われて奨励会に入っても、結局プロになれずにやめていく子は多いです。奨励会員の7人に1人、いや10人に1人しかプロになれないと言われていますから。 ──まさに狭き門ですね。 しかも奨励会には、年齢制限がある。私の時代は31歳でしたが、今は26歳までに四段になれないと、退会しなければいけません。「小学生で自分の道を決めて、25歳までに芽が出なければ終わり。つまり棋士の寿命は25歳までだ」と言う人もいます。 ──そのプレッシャーは、当時の青野九段も感じていましたか。 もちろんです。奨励会時代は、対局中に駒を指す手が震えることもよくありました。私の場合、中卒で入門したわけで学歴も全部捨ててきていますから、もしプロになれなかったら生きていく道がないわけです。実家は佃煮屋で、親は「ダメだったら家業を継げばいい」と思っていたようですが、私はとても耐えられなかったでしょう。「将棋がダメだから戻ってきた」と見られながら生きるなんてあり得ない、と。日本は学歴社会ですし、プロ棋士になれなければ、日本を飛び出して成功するまで帰らなかったかもしれません。 現役時代にはA級在籍11期、公式戦通算800勝を達成 写真一覧 「学業と将棋は両立できないから、どちらかにしなさい」 ──となると、相当な覚悟で奨励会に入られたのですか。 いやあ、実は覚悟なんてなかったんですよ(笑)。奨励会に入る前は、東京の高校にでも通いながら将棋の修業をするのかな、なんて考えていたのですが、師匠に「学業と将棋は両立できないから、どちらかにしなさい」と迫られて。「そう言えば、この子も諦めるだろう」と思われたのかもしれませんね。ただ、そう言われてビックリしたものの、10秒くらいでスッと「将棋でいきます」という言葉が出てきた。…

杉咲花 新たな境地を感じた瞬間「すごくきつかったんですけど」木曽駒ケ岳登山を告白

26 October 2025

 俳優・杉咲花(28)が25日、都内で行われた主演映画「ミーツ・ザ・ワールド」の公開記念舞台あいさつに共演の蒼井優(40)、板垣李光人(23)らと登壇した。  芥川賞作家・金原ひとみ氏の同名小説が原作で、杉咲は仕事と趣味に生きること以外を真剣に考える27歳の主人公を演じる。作品にちなみ自身が新たな境地を感じた瞬間を聞かれ「ずっと登山をしたかったんですけど、最近やっと、木曽駒ケ岳という山に登ることができました。すごくきつかったんですけど」と告白。「山頂で食べたサラミがめちゃめちゃおいしくて。本当にありがたい味がして、こういう経験は初めてでした」と振り返っていた。