仙台育英、サッカー部の「いじめ重大事態」謝罪 何が原因?〈全文公開〉

仙台育英高校多賀城キャンパス=2017年12月撮影
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仙台育英高校サッカー部でいじめ問題が発生し、学校が謝罪声明を発表しました。被害生徒は暴言を受け抑うつ症状と診断され、学校は「いじり」と「いじめ」の区別ができていなかったと認識しています。今後、真相究明と再発防止に努める方針です。

全国屈指のスポーツ強豪校として知られる仙台育英高校(宮城県)が5日、公式サイトを更新し、同校のサッカー部で「いじめ重大事態」が起きていたと一部で報じられたことを受けて声明を発表。「心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。2日に全国高校サッカー選手権宮城県大会を2年ぶりに優勝したばかりだった。一体、何が起きていたのか。

「うざい」「デブ」の暴言で部員が抑うつ症状に

この問題は4日、フジテレビ系列の仙台放送が「【独自】仙台育英サッカー部で「いじめ重大事態」全国大会出場は未定 生徒が暴言受け抑うつ症状に」と題して報じていた。3年生の男子部員が複数の部員から繰り返し「うざい」「デブ」といった暴言を浴びせられていたという。この男子部員は昨年、病院で「抑うつ症状」と診断を受け、10月14日に指導者に「部活に出られない」と直訴したことで、いじめが発覚した。

同校は声明の中で、今回の件について「いじめ防止対策推進法」に基づき調査中とした一方、原因については生徒間で「いじり」と「いじめ」に明確な線引きができていなかったことが背景にあるのではとみているようだ。

「報道にあった『いじめ重大事態』について(第二報)」と題して公開した声明の全文は、次の通り。

2025年11月4日(火)、一部報道機関から「仙台育英サッカー部で「いじめ重大事態」全国大会出場は未定 生徒が暴言受け抑うつ症状に」といった報道がありました。本件は11月1日(土)に仙台育英学園高等学校の在校生・保護者の皆様に第一報として「いじめ重大事態報告に寄せる校長所見」(以下、全文掲載)でお伝えした内容のものとなります。

被害を訴える生徒およびそのご家族に対して、被害を防止できず、相談できる環境を十分に本学園が提供できなかったことを改めて心より深くお詫び申し上げます。また、在校生・保護者の皆様に対しては、報道を通じ本事案について改めてご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。

生徒の個人情報を保護する観点や名誉毀損を防止する観点を踏まえ、本学園の対応の現状について皆様へご説明申し上げます。本事案は生徒より情報提供のあった 2024年5月より「いじめ防止対策推進法」に基づき保護を継続して参りましたが、生徒の了承が得られた 2025年10月以降は「いじめ防止対策推進法」に基づき調査をしているところです。

本校としては、今後も生徒の心情に寄り添い真相究明を続け、そこで明らかになったことを踏まえて、関係機関とも協力しながら、本学園体育会サッカー部の関係生徒に対して学則、部規則等に基づく処分の有無を判断いたします。加えて校長所見のとおり、これを機に、体育会サッカー部を含む仙台育英学園が設置する全ての体育会運動部・文化会文化部に対して調査を実施することで、「いじり」と「いじめ」が構造的に発生しやすい高リスク集団となっていないかの確認を行い、構造的な課題が発見された部活動についてはその課題の解決に注力するために対外活動の停止を行う予定です。

本校は学校としての責任を深く自覚し、生徒とご家族の心の安寧にむけて対応し続けることで、言頼回復に努めてまいります。

同校は宮城県大会の決勝が行われる前日、1日付で全保護者宛てに通知した加藤雄彦校長の所見も公開している。全文は、次の通り。

「いじり」と「いじめ」の線引きできず

このたび、本校体育会サッカー部において、過去に「いじり」と呼ばれる不適切な言動が繰り返されていたことが判明いたしました。被害を受けた部員の方に対し、心より深くお詫び申し上げます。

当時の顧問団は、部員一人ひとりの心の状態に十分に目を配る体制を整えていたとは言えず、結果として、いじりの実態を把握できないまま被害が拡大し、3年次の重大事態へとつながったものと認識しております。

被害を訴えた部員は、1年次より継続的に心を傷つける言動を受けており、その苦しみを抱えたまま今日まできた経緯があります。相談できる環境を十分に提供できなかったことを、学校として重く受け止めています。

一方、加害側とされた同級生の中には、「いじり」と「いじめ」との間に明確な線引きをせず、他者の尊厳を損なう行為の重大さに対する理解が欠如していたことが推察されます。これは、指導にあたる顧問団にも同様の認識の欠如があった結果であり、指導体制そのものに構造的な課題が存在していたと考えます。

校長として、本件を単なる一過性の問題と捉えることなく、サッカー部を含むすべての部活動において、いじめ防止・人権尊重・心のケアの体制を再構築してまいります。今後は、「いじめ防止対策推進法」に基づき、部員が指摘した事実関係を一つ一つ丁寧に確認しながら、当時の顧問団にも再教育と意識改革を徹底し、同様の事態が二度と起こらないよう努めてまいります。

現時点では、加害行為を行ったとされる特定の複数生徒を完全に確認するには至っておりません。そのため、11月2日の決勝戦への出場辞退を即時に判断するには時間的制約があることを、部員およびご家族に誠実にお伝えいたしました。

しかしながら、被害者の方の心情に寄り添い、真相究明と再発防止に向けて、全力で取り組む決意です。

本件を通じて、学校としての責任を深く自覚し、全教職員が一丸となって頼回復に努めてまいります。

パンサーの尾形貴弘

同校サッカー部は宮城県大会を制したことで年末に開幕する全国大会への切符を手にしているが、出場するかは未定。2日に行われた聖和学園との決勝後、OBであるお笑いトリオ、パンサーの尾形貴弘(48)が自身のX(旧ツイッター)で「仙台育英サッカー部!! 選手権全国出場おめでとサンキューーーーー!! 絶対応援行く!!!」と投稿。部員たちにエールを送っていた矢先の非常事態となった。

■仙台育英高校(せんだいいくえいこうこう) 1905年創立の「育英塾」を前身とする学校法人仙台育英学園が運営する私立高校。「至誠」「質実剛健」「自治進取」を建学以来の精神とし、スポーツの強豪校と知られる。野球部は夏の甲子園に31回出場し、2022年に初優勝。全国高校サッカー選手権大会への出場回数は37回。

(zakⅡ編集部・井上悟)