フリーアナウンサー・神田愛花『祝★コラム連載100回目!』

神田さんが描いたイラスト

私の脳内を言語化するために

なんとこの連載、今回で100回目だ。’23年2月にスタートし、2年9ヵ月。どんなに仕事が立て込んでいても、どんなに寝不足でも、一度も穴を空けずに書き続けてきた。『ぽかぽか』の楽屋に食料を持ち込み、「書き終わるまで絶対に帰らない!」と宣言して、監禁されたつもりで書いたこともあった。椅子に座ると寝てしまうから、6時間ぐるぐると部屋の中を歩き回りながら書いたこともあった。

何かを生み出す作業がこんなに大変だったとは! おかげで今では、コラムを書いている方たちだけでなく、作曲家や画家、ゲームクリエイターやデザイナーなど、創作物を世に送り出している方に対し、異常な尊敬の念と一方的な″同志″感を抱くようになった。

それもこれもすべて、毎回楽しみにしてくださっている皆さんがいるからこそ、辿り着いた境地。皆さんがいなかったらとっくに、(今回は「書けませんでした」と言えばいいや……)という思いに至り、連載に穴を空け、クビになっていたと思う。読者の皆さんには心から感謝だ。本当にありがとうございます。

私はこの連載に対し、当初からこだわり続けていることが二つある。一つ目は、文章は自分で書き、最終チェックまですべて自分自身で行うこと。二つ目は、イラストも自分で描くことだ。

″文章を自分で書く″のは、当たり前だと思う方も多いだろう。ところが意外と当たり前ではない。よくあるのは、ライターさんにインタビューをしてもらい、本人のコラムとして書いてもらう方法だ。忙し過ぎて執筆時間が取れない方や、話すのは得意だが文章を書くことに自信がない方などは、この形式で連載している。

私も連載がスタートする時、編集さんからインタビュースタイルを提案された。一瞬、(何それ!? 楽そうでいいね!)と思った。だが少し考えたあと、「やっぱり自分で書きます」と、お断りした。

これまでの経験から、どうも私は世の中の出来事の見方や理解の仕方、語る時の切り口が、一般的なソレとは違うようで、その違いが面白いと思っていただけていると感じている。

もしそんな私の個性に気付いていない、もしくはそれをいいと思っていないライターさんが担当になったら、いくら丁寧に聞き取ってくださったとしても、私の言葉を違う表現に変換してしまったり、より一般的な文章の流れに組み替えてしまったりするかもしれない。私の脳内の言語化は私が発する言葉じゃないと難しいと判断。最初から最後まで自分ですることにした。

自分以外誰にも描けない

イラストを″完全自作″にしたのも、私とイラストレーターさんとでは、イラストにしたいと思う場面が一致しないだろうと思ったからだ。この考えの根っこにはやはり、前述の″出来事の見方が人と違う″という、私の性質がある。私とイラストレーターさんが揃って同じ文章を読んだ時、「この場面をイラストにしたい!」と、共鳴し合うとは思えない。

だって昔からの親しい友人とでさえ、映画やドラマの感想を話しても滅多に一致したことがないのだから。無理だと判断した。

ちなみにこれまで、私がイラストに描き残してきたのはどんな場面か。その回の中で一番盛り上がりを見せた、所謂(いわゆる)クライマックスシーンではない。私の記憶に一番色濃く残っているシーンだ。

心が揺れ動き始める前に見た光景だったり、トラブルの最中に一瞬見た夫の後ろ姿だったり、問題が解決し結論に至った時の力の入った私の手だったり。それらは文章には詳しく書いていないが、私の記憶の中に深く刻まれたほんの数秒の一シーン。それはイラストレーターさんには描けない。

そんなこんなでこの連載には、私の精魂が100%込められている。だから週1回という頻度は、とてもシンドイ。別の雑誌さんからコラム連載の依頼がきたが、お断りをした。同じ熱量で二つ書くなんて無理だ。私の執筆魂は、ここ『FRIDAY』のみで燃やして、燃やし尽くす!

Xで呟いてくれてもいいし、ヤフコメでもいい。返信はしないが、InstagramのDMだって構わない。お願いだから少しでも、「神田さんのFRIDAYのコラムが面白い!」と思った方は、何かでそう表現する勇気を持ってほしい。その言葉をエネルギーにして、まだまだ頑張ります!!

連載100回記念特別企画
神田愛花が選ぶ!″もう一度見てほしい″Best ofイラスト展

第1回から欠かさず添えられたインパクトのあるイラスト。中でもイチオシの作品を本人の解説付きで紹介する。

Best of 自信作
30回

毎年我が家で開催する、”日本一早いハロウィンパーティー”の一昨年の様子を描いたイラストです。大活躍されているお友達の芸能人の皆さんをお招きし、毎年大体、9月上旬に開催しています。

恒例の料理は、私の得意料理”ベーコン巻き”。お野菜やチーズをベーコンで巻いた料理で、毎回100個ほど作るんです。その迫力を読者の皆さんにお伝えしたく、一つ一つ丁寧にベーコン巻きを描きました。これだけのベーコン巻きはもう二度と描けません!

Best of 思い出深い
17回

フジテレビ『ぽかぽか』が始まり6ヵ月経った時に描いたイラストです。中学高校時代の友達が、『笑っていいとも!』の曲をかけながら私にタモリさんの変装をさせ、MC就任のお祝いをしてくれました。共に戦うハライチのお二人に、「タモリさんになろう!」というメッセージを込めて描きました。

これが二人を描いた記念すべき1回目。その後何度も描かせていただき、今では数秒で描けるようになりました。ハライチさん大好き!

Best of 自画像
87回

今年の誕生日のことを書いた時のイラストです。自分の近影を見ながら、顔だけでなく首や手のシワも忠実に描きました。頂戴したプレゼントがあまりに私にドンピシャで、逆に私はここまでお相手を理解できているのか!? と考えさせられたんです。

このイラストを描いている時、シワの多さに悲しくなりました。ですが45歳にもなってまだ成長しきれていない自分に対する自戒の念も込め、本当の自分を世に晒そうと決心しました

Best of 褒められた
86回

節約家の私が、節約好きの人に対する世間からの偏見に怒りをぶちまけた回のイラストです。我が家ではお風呂のお湯を、10段階中2の浅さで沸かしています。寝転がりながらお湯に浸かる夫が可愛く、それが伝わるよう描きました。

周囲の皆さんから「この日村さん可愛い!」と言われ、心の中で何度も(でしょ!)と喜びました。シンプルな絵に見えますが、夫の体型や質感を表すには、日頃からかなり観察する必要があるんです(笑)

Best of お気に入り
55回

去年のお誕生日のことを書いた時のイラスト。44歳になって初めて見た夢を話す私と、それまでスマホで見ていた動画を一時停止してその話に耳を傾ける夫を描いています。

私たち夫婦は毎日のベッドでの会話の時間が楽しみで、とても大切にしています。その時間を写真でお見せしているかのように、距離感や表情、雰囲気に至るまでリアルに描けました。このイラストを見ると、今日も早くこの時間にならないかなぁとワクワクしてきます

Best of 時間がかかった
61回

仕事でシンガポールに向かう機内での出来事を描いたイラストです。通路を挟んだ隣の席の方が、タレントのパンツェッタ・ジローラモさんにそっくりで、私は横目でご本人か確認しようとしています。

遠近法に則った通路、その通路を挟んで左右対称に座席があり、そこにそれぞれ人が座っていて、一人は足を組み、かつ各々食事中、という要素を描くのに約2時間かかりました。力尽き、座席が座椅子みたいになってしまいました

©下村一喜

かんだ・あいか:1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中

★本連載をまとめた本人初の著書『王道っていう道、どこに通ってますか?』が大好評発売中!