
「説得を断りきれなかった」
英国グラフのダイヤモンドネックレス、仏国シャネルの高級バッグ……。
日本でも注目度の高い韓国の前大統領夫人・金建希(キム・ゴンヒ)被告(53)が、旧統一教会関係者から受け取ったとされるブランド品の総額は1000万円近くになる。あっせん収賄罪などに問われている金被告は、今年8月に起訴されてから一貫して高級品受領の容疑を否定していた。ところが――。
「シャネルのバッグを2回受け取った事実を認めます」
11月5日、金被告の弁護団は報道陣にコメントを出し一転して容疑を認めたのだ。一方で、次のような趣旨の主張もしている。
「(旧統一教会関係者からのバッグの提供を)最初は拒否したが、説得を受け断りきれなかった。過ちを深く反省しています。受け取った品物は一切使わず返還しました。ネックレスを受け取ったことは否定します。(旧統一教会との)いかなる共謀、請託、見返りもありません」
態度が一転した理由は、別の裁判で旧統一教会関係者が金被告への高級品授受を認めたためだといわれる。
夫の尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が’22年5月に大統領へ就任した当初、金被告は「美しきファーストレディ」と国内外でもてはやされた。ファンサイト「ゴンサラン(ゴンヒ愛している)」の登録者数は、またたく間に8万人を突破。彼女がSNSにアップした洋服は即完売するほどの人気だったが、現在は株価操作、宗教団体への便宜など15以上の罪に問われている。
夫との「格差」
なぜ、人気絶頂の金被告の人生は暗転してしまったのだろう。韓国社会に詳しい『コリア・レポート』編集長の辺真一氏が語る。
「尹氏が大統領に就任する前、金被告は『内助の功に徹する』と話し公の行動を控えていました。ところが尹氏が大統領になった途端、外遊先に夫と2ショットで現れたり要人との会合に進んで参加したりと前面に出るようになったんです。金被告の態度が変わった背景には、尹氏との『格差』があります。
’12年3月に結婚した当時、一介の検察官だった尹氏の年収は200万円ほどしかなかったのに対しイベント会社を手がけ大学の教壇にも立っていた金被告の資産は億単位だったそうです。自分のカネで尹氏を食べさせていた金被告には、『夫を大統領にしたのは私だ』という自負があったのでしょう。その『驕り』が彼女の態度を大きくさせ、支援者からブランド品を受け取るようになったのかもしれません」
金被告が「傲慢」と批判される行動は他にもある。今年10月に韓国のジャーナリストが公開した動画により、朝鮮王朝の宝品が収められている収蔵庫を訪れた際に国宝である玉座に着席したことが明らかになったのだ。辺氏が続ける。
「“夫を『王』である大統領にした自分は、王女である”というような驕りと勘違いが芽生えたのでしょう。しかし彼女の未来は絶望的です。15件以上の罪に問われているのですから。すべての罪が加算されれば懲役5年や10年では済まない。無期懲役の可能性も十分あります」
日本でも話題となった前大統領夫人の一審裁判は、11月中に結審する予定だ。