《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる

理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督

理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督

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10月28日、巨人は桑田真澄二軍監督が今季限りで退団すると発表した。既に二岡智宏ヘッドコーチと駒田徳広三軍監督の退団が発表されている。その背景には複雑なチーム内の力学がありそうだ。

阿部慎之助監督は今季が3年契約の2年目で、来シーズンが契約最終年となる。2023年オフ、ヘッド兼バッテリーコーチだった阿部氏が原辰徳監督からバトンを引き継ぐと、二軍監督だった二岡氏をヘッド兼打撃コーチに抜擢。ファーム総監督だった桑田氏を二軍監督に引き上げた。巨人担当記者が言う。

「ヘッドコーチの二岡氏がチームのV逸の責任を取って辞表を出すのはまだわかるが、空席になったヘッドコーチには、阿部政権が誕生した時の二岡氏と同じように二軍監督の桑田氏を引き上げればよかった。今季は阿部監督が率いる一軍が阪神に15ゲーム差をつけられて3位に終わったのに対し、同じ就任2年目の桑田氏が束ねる二軍はイースタンリーグで2位西武に8ゲーム差をつけるダントツの1位だった。

山口寿一オーナーは阿部監督の続投を早々に明言したが、本音は阿部氏のようなスター監督より理論派監督が好みだと聞く。二軍監督の桑田氏を評価しており、ファンが期待している“松井(秀喜)監督”より先に“桑田監督”が実現すると見るOBは少なくなかった」

そうした見方があるにもかかわらず、桑田氏は今回、チームを去ることになり、“桑田監督”の芽はなくなったとみられる。

「桑田二軍監督が次期監督の有力候補だったのは間違いないが、阿部監督が気兼ねなく最終年に臨めるようにということで更迭されたとされます。球団側は監督候補として温存するためにフロント入りを打診したといいますが、フェニックスリーグの最終日に打診されるという屈辱もあり、納得できない桑田氏が退団を選んだようです。

桑田氏は二軍を優勝させ、一軍への配給ではなく勝つための独自色を出した格好ですが、阿部監督から見れば“一軍で活躍できる若手が育っていない”ということになったのでしょう。ワンポイントで復帰を狙う原前監督の存在もある。桑田氏がいなくなったことで原氏、高橋由伸氏の再登板か、ファン待望の松井氏に次期監督候補が絞られた形です」(前出・担当記者)

センバツでは“マダックス”も達成しているPL学園時代の桑田真澄(時事通信フォト)

センバツでは“マダックス”も達成しているPL学園時代の桑田真澄(時事通信フォト)

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巨人のOBのひとりは「そもそも、桑田と阿部は選手の育成方法が180度違う」と言う。

「阿部は二軍監督時代のオフにファームの全選手に“筋トレ指令”を出しています。練習もスパルタ方式で、早大に練習試合で負けて罰走させたことが話題となったこともある。秋のフェニックスリーグでも罰走させており、厳しい練習で選手を追い込むやり方。ダルビッシュ有がツイッター(当時)で古い野球だと否定する投稿をしたこともある。フロントに中にも阿部のひと昔前の指導方針に関しては否定派が多い。

一方、現役時代から理論派とされる桑田は、早大大学院や東大大学院で学び、東大野球部特別コーチの経験もある。練習は合理的にやるタイプ。春季キャンプでもミーティングで桑田塾を開講したり、早朝練習を廃止したりと独自色を出した。若手選手に桑田門下生が激増したのは事実。ただ、一軍が阪神に独走を許すと、次期監督は俺だと言わんばかりに二軍での独自色をより鮮明にして、一軍コーチ陣から反感を買った面もあるでしょう」

別の巨人OBはこう嘆く。

「結局、巨人では“俺が俺が”というのが問題を起こす。阿部は監督になると二軍監督時代に育てた山瀬慎之助や喜多隆介を正捕手に挑戦させたし、桑田にしても一軍コーチ時代に育てた山崎伊織、赤星優志らが成長したとアピールしたが、それでは互いに反発が生まれる、一軍と二軍が一丸となれない。桑田も勉強してきたんだろうが、もともと頑固だから周りとの衝突がどうしても生まれる」

そうした状況について、球界のご意見番で、巨人の名ショートとして第二期黄金時代を支えた広岡達朗氏はこう言う。

「監督が良ければヘッドコーチや二軍監督は辞めませんよ。あの監督のお陰ということがまったくない。二岡や桑田が辞めた巨人は阿部監督が悪い。ヘッドコーチや二軍監督という主要ポストから去っていくのは、一軍の監督が黙って勝手になんでもやるからです。

監督のやり方が間違っているから側近が去るんですよ。自分で反省ができない男が監督を何年やってもダメ。監督が辞めたら、側近が私も辞めますというのが本当。部下のほうが先に辞めるというのは組織としてなっていない。何もしないのに病気にはならない。自分が撒いた種だということを、病気が教えてくれるんです。それで反省して養生する。それができない監督が何年やってもチームは変りません」

※週刊ポスト2025年11月21日号