「テロ起こす」NHK党・立花孝志容疑者 民事裁判で17項目の”違法行為や発言”事実認定された過去

兵庫県警に逮捕された『NHKから国民を守る党』党首・立花孝志容疑者

自らの言動は「違法ではない」

「何も言わずに去っていった竹内議員は、めっちゃやばいね。警察の取り調べを受けているのはたぶん間違いない」

大阪府泉大津市長選の街頭演説で、マイクを握りこう言い放ったのは、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)だ。彼が名指しした竹内英明・元兵庫県議は、県の内部告発文書問題を調査する百条委員会の委員を務めていたが、昨年11月に議員を辞職。そして今年1月、自ら命を絶った。

立花容疑者の”舌鋒”は、竹内氏が亡くなった後も止まらなかった。自身のSNSに、

〈竹内元県議は、昨年9月ごろから兵庫県警からの継続的な任意の取り調べを受けていました〉

〈どうも明日逮捕される予定だったそうです〉

などと投稿。故人の名誉を著しく傷つけるこれらの言動に対し、ついに司法が動いた。11月9日、兵庫県警は立花容疑者を名誉毀損の疑いで逮捕。執行猶予中の政治団体党首が逮捕されるという、前代未聞の事態に発展したのだ。死者に対する名誉毀損容疑での立件は異例だ。

当の立花容疑者は、自身が告訴されたことを受けた8月の会見でこう述べていた。

「名誉毀損したことは争わないが、十分、違法性が阻却(そきゃく)されるだけの根拠をもって発言している」

自らの言動は正当であり、違法ではない──。今回の刑事事件でこの主張が通用するかどうかは未知数だが、実は過去の民事裁判で、司法はすでに立花容疑者の違法行為や発言に明確な「NO」を突きつけている。その判決文を紐解けば、今回の逮捕が起こるべくして起きた、必然の帰結であったことが理解できる。

舞台は’24年11月の東京地裁。原告は「NHKから国民を守る党」、被告は「選挙ウォッチャーちだい」氏。ちだい氏が自身のX(旧Twitter)や動画配信で、NHK党を「反社会的カルト集団」、そして「サリンをまかないオウムみたいなもん」と痛烈に批判したことが発端だった。

NHK党側は「名誉を毀損された」として、160万円の損害賠償を求めて提訴。常識的に考えれば、カルトやテロ組織になぞらえる表現は、名誉毀損と認定されてもおかしくない。

『反社会的カルト集団』と断じられても全面敗訴

だが、下された判決は、NHK党側の請求をすべて棄却する「全面敗訴」だった。

なぜ、これほど過激な表現が”お咎めなし”となったのか。その答えは、裁判所が判決の根拠とした付属文書にあった。被告のちだい氏側が「我々の批判にはこれだけの根拠がある」として提出した「事実一覧表」である。

そこには、立花容疑者とNHK党関係者による過去の数々の違法行為や発言が、これでもかとリストアップされていた。そして驚くべきことに、裁判所はそこに記載された18項目のうち、実に17項目について「事実である」と公式に認定したのである。

判決文にはこう記されている(以下、引用のカッコ内は編集部注)。

〈上記意見あるいは論評は、(中略)原告代表者(編集部注:立花容疑者)が遅くとも平成25年から政治団体を組織するなどして政治活動を行い、原告代表者やその関係者、支持者らにおいて、上記政治活動の過程において犯罪行為や不法行為を繰り返し、かつ、原告代表者において、法律を遵守しない意思を明確に表明して、テロや民族虐殺をする可能性すら口にし、不法行為や迷惑行為を一般市民にサービスとして提供したり促したりしていたとの事実を前提としたものと認められ、かつ、〈中略〉その主要な部分につき真実であると認められる〉

つまり裁判所は、

「『反社会的カルト集団』という表現は、立花容疑者自身のこれまでの犯罪行為や不法行為の数々を根拠としたものであり、その根拠は真実だから、論評として許される」

と判断したのだ。

では、裁判所が「真実である」と認定した17の行為や発言とは、一体どのようなものだったのか。本稿では、その内容の一部を、判決に付属する「事実一覧表」から引用し、紹介してみたい。

【認定された行為・発言1】 暴行・身体拘束

まずは、直接的な暴力行為だ。’13年、立花容疑者は同調者と共にNHKの委託業者の従業員に対し、

〈腕をつかむ、体を引っ張る、顔をヘッドロックするなどの暴行を加え、約40分間身体を拘束〉

したという。この事実は、裁判の場でNHK党側も〈認める〉と回答しており、争いのない事実として認定されている。

【認定された行為・発言2】 支持者を煽動した”個人攻撃”

批判的な人物への個人攻撃を支持者に指示していた事実も、裁判所は認定している。’19年12月、彼は自身の政治団体に関する書籍を出版した著者について、このように支持者を煽動した。

〈同著者の住所を教える、同著者には嫁も子供もいるので、自宅の前で騒ぎ立てろという趣旨の指示をした〉

というのだ。これは、ジャーナリストや物書きに対する、言論封じとも受け取られかねない極めて悪質な行為である。この指示についても、NHK党側は、〈事実は認めるが、評価は争う〉としている。

「法律を守らない」と公言

【認定された行為・発言3】 有罪判決を受けた犯罪行為

立花容疑者の行動は単なるトラブルに留まらず、実際に刑事罰を受けた犯罪行為も複数含まれている。たとえばNHKの営業秘密を不正に入手した事件だ。’19年、業務用携帯端末に記録されていた受信契約者等情報50件を不正に取得したとして’22年1月20日、不正競争防止法違反で有罪判決を受けている。

【認定された行為・発言4】 「法律を守らない」と公言

そして、彼の法規範に対する姿勢を象徴するのが、以下の発言である。’20年7月の党役員会で、立花容疑者はこう言っている。

〈「我々は法律を守らない政党であるということを売りにしたい」「『法律を守りません』『我々は法律よりも正義や道徳を優先します』みたいなものを売りにしたい」〉

また、市議会議員選挙の応援演説で、

〈(編集部注:NHK党が)違法行為をする政党である、日本放送協会の受信料を支払わない不法行為をする方をお守りするとの旨の発言をした〉

これらの発言も、NHK党側は〈事実は認めるが、評価は争う〉とし、事実として認定されている。

【認定された行為・発言5】 SNSでの”テロ予告”

常軌を逸した発言も、司法は事実と認めている。NHK党設立前の’12年、SNSにこう投稿していた。

〈私はテロ起こす計画を既に24チャンネルや講演会で発表しています。がんなどで私の生命の限りが発見できた場合はテロします〉

この衝撃的な投稿は現在も削除されておらず、NHK党側は、

〈事実については認めるが、評価は争う〉

と、投稿の事実そのものを認めている。

このように、立花容疑者の周辺では、暴力、犯罪、そして法規範そのものを軽視する言動が繰り返されてきたことが、司法の場で公式に記録として残されているのだ。

フライデーデジタルはNHK党の齊藤健一郎参議院議員事務所に対し質問書を送付し、党としての見解を求めた。

質問内容は、1、この判決をどう受け止めているのか。2、党首である立花氏らの過去の行為や発言(暴行、有罪判決を受けた犯罪行為、支持者への個人攻撃の指示などを含む)17項目が裁判所に事実認定されたことを、貴党としてどのように受け止めているのかの2点である。回答は、

「各裁判は立花党首が担当しているため、事務局で把握していないことからコメントは差し控えます」

というものであった。

民事裁判で司法が認定した17の「違法行為や発言」。これまで幾度となく法を軽視し、物議を醸してきた男がたどり着いた、必然の帰結が今回の逮捕劇といえるのではないか。

亡くなった者への配慮もなき言動の果てに立つ刑事法廷。そこで、彼の”言い分”は果たして通用するのだろうか。