
多くの観客で賑わう九州場所
大の里が連続優勝して1強時代を築くのか、豊昇龍が踏ん張って大豊時代となるのかが注目されている1年の納めとなる九州場所。土俵上で白熱した戦いが続く一方、土俵周りでも話題が絶えない。東京から離れた福岡での開催ということもあって、国技館のようにタレントが溜席に姿を見せることは少ないが、それでもお笑いコンビのミルクボーイ・内海崇が中継で元NHKアナの杉山邦博さんと並んで観戦に映るとネットで「杉山さんとツーショットだ」と騒がれるなどした。
NHKの大相撲中継で土俵上の東方の力士を大映しすると、95歳の杉山さんとともに必ず映り込む着物姿の博多美人がいる。中洲の会員制スナック「田じま」のママ、田島恵美子さんだ。相撲関係者はもちろん、相撲ファンの間でも知られた存在だ。
東花道に面した溜席の3列目が指定席だが、溜席での観戦のきっかけについて田島さんに聞くとこう話す。
「小さい頃から両親と一緒にテレビで相撲中継を観ていて、この世界に入って15日間通しで買えるようになりました。2009年から毎年欠かさず通い、今年で17年目です」

田島さんは17年間皆勤を続けている(田島さん提供、以下本人写真は同)
大相撲の景色の一部に
17年間15日皆勤だという。相撲がある期間は早くから髪をセットし、着物で会場に行く。打ち出し後は中洲に戻って開店の準備をして、日付が変わる頃まで営業する。毎年11月はこれを17年間やってきたという。
「仕事がら夜が遅いので幕内土俵入りまでに身支度するのは確かに大変です。でも、楽しいから“よしっ!!”と気持ちを入れられます。15日間、集中!です」
そう笑顔で話す。15日間、毎日違う着物での観戦だが、どう選んでいるのかを聞くとこう話す。
「相撲観戦に限らず、日頃から着物は直前まで決めてません。お店では着ない大切な着物を初日や千秋楽に着る時はありますが、特にゲン担ぎはないですね。わりと前半は地味な色が多いですが、後半は華やかな色が多いような気がします。でも、特に決めていないです」
17年前は朝青龍、白鵬、日馬富士とモンゴル出身横綱全盛期だった。その後、鶴竜、稀勢の里、照ノ富士といった横綱が誕生し、豊昇龍と大の里の時代となった。年1場所とはいえ、なぜ17年間も毎日観戦を続けられたのか。
「まるで江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれるからです。土俵周りには昔から存在しているものしかないんです。土俵の土、俵、房、神様、塩、力士は現代の方がしない髪型の髷、呼出しの道具、行司の装束など、そこに機械的なものがないんです。それが心地良い。
そして、自分がその一部になっていることも心地良く感じるのです。“あなたは大相撲の景色なんですよ”と言われた時に腑に落ちると同時に嬉しさを感じました。なので、楽しく観戦しています」
九州場所は後半戦も土俵周りの華やかさが、土俵上の熱戦に花を添えることになる。

九州場所の風物詩となっている感のある田島さん

朝乃山との2ショットも

九州場所中は早い時間からの髪のセットなどが必要になる

東方の力士の仕切りの際に注目される場所が指定席だ

連日、大観衆で埋まる九州場所