
9月のサウナ摘発への疑問
〈西川口のサウナ店が性的サービス提供の疑い/埼玉県〉(朝日新聞)
〈女4人を逮捕…西川口でサービス提供、禁止エリアで店を営業した疑い〉(埼玉新聞)
’25年9月5日のニュースだから、2ヵ月ほど前のことである。内容は、西川口にある公衆浴場『グリーンサウナ』の個室内で不特定多数の男性客に対し、性的なサービスを行ったとして、韓国籍の女2人が逮捕されたというもの。営業禁止地域において風俗店を営業した風営法違反(禁止区域営業)の疑いだと報じられていた。
西川口の『グリーンサウナ』は、アングラ風俗界隈では「性的サービスのあるサウナ」として有名だった。アングラ風俗店をレポする動画を上げている私も、通算で2回この店舗を取材している。
サウナで汗をかき銭湯で湯につかり、アカスリで全身の垢を取ってもらった後に別室へと向かい、本格マッサージを受けた後、ニュースで報道されていた通りの性的サービスがあったことを確認している。サービスを担当していたのは推定40代半ばの韓国人の小綺麗な女性で総額9000円。店は繁盛しており2回とも30分ほどの待ちがあった。
そんなグリーンサウナが摘発されてしまった。やってはいけないことをやっていたのだから摘発は仕方ないのだが。
ここで一つの疑問が浮かんできた。詳しい方は知っていると思うが、西川口にはもう一つ『Xサウナ』というグリーンサウナとまったく同じスタイルの銭湯サウナがあるのだ。こちらも取材したことがあるが、金額もシステムもお相手となる女性の年齢層もまったく同じだ。だが、こちらが摘発されたという情報は出てこない。風営法違反ならこちらも同じなのだから、こちらも摘発されなければおかしい。
この件、何か裏があるんじゃないか。そう感じた私は11月初め、西川口へと赴いた。
『Xサウナ』に潜入取材した
まずはグリーンサウナへ行ってみる。時刻は夜の9時、中東系の外国人がたむろする改札前をすり抜け、徒歩3分ほど。目的のグリーンサウナは一見以前と変わらぬ佇まいに見える。が、どこか雰囲気が暗い。サウナが入っているビルの灯りはついているのだが、目的のグリーンサウナのネオンの灯りがともっていないのだ。
それでも「まだたくましく営業してるんじゃないか」と思い(違法営業しているマッサージ店等は、摘発されても間を空けずにすぐ復活する傾向がある)、店舗の入る2階へと上がる。しかし、ドアは鍵がかかっており固く閉ざされていた。
やはりグリーンサウナは営業していなかった。だが、これは予想通り。問題は駅の反対側にあるXサウナのほうである。
グリーンサウナから歩いて10分ほど。青い看板が見えてくる。店前の置き看板の灯りは……ともっている。
なんだ、やっているじゃないか。ガラッと横開きのドアを開けると、やはり普通に営業していた。駅の反対側の店の摘発など意に介さないかのように、まるで普通に営業していた。
受付で9000円を支払い、浴室へと向かう。行き交うスタッフの女性たちはピンクの薄い生地で作られたワンピースやまるで水着のような服を着ていて、男性客の視線を誘う。私の前には3人の先客がいて、自分のアカスリの番までは少々待ちがあるようだ。
身体を洗い湯に浸かり、サウナに入り時間を潰す。15分ほど経ち、ようやく自分の番号が呼ばれる。
浴室内にあるカーテンで仕切られたアカスリエリアでアカスリをしてもらうのだが、これがけっこう気持ちいい。手でゴシゴシするタイプのアカスリだ。毎日風呂に入って身体を洗っているとはいえ、けっこうな量の垢が出る。この時点ではもちろん全裸だ。
このアカスリをしてくれる女性がニコニコしていてなかなか可愛い。年齢は40代半ばぐらいの韓国人。若い人が好きな人には物足りないかもしれないが、熟女好きなら刺さる見た目だろう。私が「マッサージもお姉さんがいいな」と言うと「アカスリとマッサージは同じ(人)じゃないかもしれない。(店内の)状況による」と言う。「次からは指名して。名前は〇〇だから。指名料は500円」。
途中で500円を追加して指名、というのはできないらしく、結果的にマッサージを担当する人は別の女性だった。こちらも40代半ばぐらいのピンクのワンピースを着た可愛らしい女性(おそらく韓国人)で、浴室を出るにあたって腰にタオルを巻かれ別室のマッサージルームへと誘導される。マッサージルームは2部屋で、ピンクの明かりで照らされいかにも淫靡な空気だ。数多くの違法風俗店取材を経験した私からすると「これで何もないほうがおかしい」といった雰囲気である。
スタッフが語った摘発の”ウラ”
まずはうつ伏せで首、肩、手、足とマッサージは進んでいく。背中を足で踏んでくれたりと本格的なマッサージだ。揉みも強い。仮に性的サービスが無くても、この内容で9000円ならアリだよなぁ…と思いながらウトウトする。
結果から言うと、以前と変わらない性的サービスが存在した。だが結局、なぜまったく同じサービスのグリーンサウナだけが風営法違反で摘発されたのだろうか? 実はアカスリの女性にもマッサージの女性にもなんとなく聞いてみたのだが、理由はわからないそうである。
ツルツルになった身体に服を着て、店を出る準備をする。来客は絶えないようで、アカスリを待つ客が3人ほど浴室内で待機していた。
結論として、Xサウナは何も変わっていなかった。グリーンサウナが摘発されても、何一つ変わらないサービスが提供されていた。
帰り際、店のママらしきスタッフと少し会話をすることができた。
──グリーンサウナ、摘発されちゃったね。こっちは大丈夫なの?
「こっちは大丈夫ダヨ。税金払ってるから」
──えっ、グリーンは税金払ってなかったの!?
「そう。だからやられたんだよ」
──そうだったんだ……。グリーンが摘発されてこっちのお客さん増えたんじゃない?
「うん、増えたね(笑)」
衝撃だ。摘発された決定的な理由は、ニュース記事にあった風営法違反だけではなかったのだ。
活気を催すXサウナとひっそりと佇むグリーンサウナ。ママらしきスタッフが言っていた通り、日本でビジネスをするうえでの義務を果たしていたかどうかが、本当に摘発の決め手となったのかは不明だ。しかし、駅を挟んで対を成す2店舗の明暗が大きく分かれてしまったのは間違いない。




