
政界の”おしゃれ番長”である麻生太郎・自民党副総裁(時事通信フォト)
齢85にして、いまだ政界で絶大な権力を発揮する麻生太郎・自民党副総裁。先日行われた自民党総裁選においては、党内唯一の派閥となった“麻生派”を統率し、高市早苗・自民党総裁(64)の選出に大きく寄与し、「キングメーカー」の存在感を示した。
そんな麻生氏について、たびたびSNSなどで話題になるのがそのファッションだ。かつて米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」で“ギャングスター・スタイル”とも評されたが、並々ならぬこだわりがあるようだ。
全国紙政治部記者が語る。
「麻生さんは誰もが認める“政界のおしゃれ番長”です。曰く、学生の頃からオーダースーツを愛用しており、どんな時もシワひとつないことは、霞ヶ関では有名。イタリアの高級帽子ブランド『ボルサリーノ』のハットも愛用品です。
最近だと、7月に麻生氏が岸田文雄氏、菅義偉氏と会談した際に白のハットを被っていたことから、〈マフィアみたい〉とSNSで話題になりました。余談ですが、本人はギャング映画の金字塔『ゴッドファーザー』の大ファンらしい」
そんな麻生氏の行きつけは東京・青山の老舗紳士服店「テーラー森脇」。2018年には「アッコにおまかせ」(TBS系)が同店に取材し、麻生氏が年に数回、一着およそ35万円のオーダースーツをまとめて仕立てていることが明らかにされている。
そのファッションのルーツはどこにあるのか。
「祖父である吉田茂氏の影響が強いと言われています。吉田氏は首相になる前、駐英大使を務めており、孫の麻生氏にも“英国スタイル”を叩き込んだ。吉田氏は、アメリカ留学から帰った麻生氏の英語を聞いて『お前がしゃべっているのはアメリカ語だ』と怒り、わざわざイギリスに留学し直させて、“クイーンズ・イングリッシュ”を習得するよう言ったといわれています。
麻生さんが『テーラー森脇』で仕立てているのも英国風スーツ。美しいラインを崩さないようベルトはしないとか」(同前)
あるファッション評論家は「こだわりが強く、自身のスタイルを確立している」と語る。

麻生氏のファッションは工夫が凝らされた独自のスタイルだという(時事通信フォト)
麻生氏がしている”意外な工夫”
「基本は英国のトラディショナルスタイルですね。あのスタイルは着る人を選ぶので、あそこまでバシッと決まる政治家はまずいない。着丈に気を遣っているのはもちろん、着席時には必ずジャケットのボタンを外すなど、相当見られ方を気にしている。“上流階級”だということを示す、記号的な意味もあるのでしょう。
シワが目立たないよう、パンツの裾に重りを入れているようですが、これはイギリスの慣習ではありません。独自に考えて工夫するようになったのでしょう。あと個人的にすごいなと思うのは、ネクタイです。彼は少し右の口角が上がっていますが、視覚的にバランスをとるため、わざとネクタイを右側にずらしている時がある。かなり研究したのではないでしょうか」
前出の全国紙政治部記者によると、「80歳を超えても、日々の散歩や腹筋を欠かさない」という。
鍛えた肉体を高級スーツに包む麻生氏だが、その“上流意識”に批判が集まることも少なくない。ある政治ジャーナリストが言う。
「有名なエピソードでいうと、麻生氏が初めて衆議院議員に出馬した際、福岡県飯塚市駅前で街頭演説し『下々の皆さん』と失言したことでしょうか。若い頃から金には苦労しなかったのでしょう。『とてつもない金持ちに生まれた人間の苦しみなんて、“普通の人”には分からんだろうな』と周囲にぼやいたこともあるといいます。
ほかにも2008年の首相時代、参院外交防衛委員会で野党議員にカップラーメンの値段を聞かれた麻生氏は『最初に出た時、えらく安かったと思うが、いまは400円くらいします?』と答弁。野党議員は『170円くらい』と返し、周りは苦笑い。6年ほど前に『老後資金2000万円不足問題』が議論されていた際には、『年金がいくらとか自分の生活では心配したことありません』と言い放ったといいます」
ファッションセンスだけではなく、庶民感覚も磨いてほしいものだ。