《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状

女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった

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「八千草さん、よくおひとりでワンちゃんを連れてこの辺りを散歩されていましたよ。気さくな方で、うちのシェットランドシープドックと『同じ(犬種)ですね』と、お話しました。亡くなる少し前も元気に散歩されていたのに……」(近隣住人)

東京・世田谷の閑静な住宅街には、かつて女優・八千草薫(享年88)さんの豪邸があった。八千草さんは宝塚歌劇団を経て1951年に『目下恋愛中』で銀幕デビュー。1977年にドラマ『岸辺のアルバム』(TBS系)でテレビ大賞主演女優賞し、1997年に紫綬褒章、2003年には旭日小授章を受賞した大女優だ。

約150坪の敷地にはモダンな外観の家が建ち、広大な庭には四季を感じられる桜や金木犀、大きな池もあり、土地だけでも3億円の資産価値といわれる邸宅だった。しかし、八千草さんが愛し、60年近く住み続けた自宅は取り壊され、跡地には新築の戸建てが3棟建ち並んでいた──。NEWSポストセブンは豪邸の“現在”を取材した。【前後編の前編】

この豪邸には「こだわりの庭があった」と映画会社関係者が語る。

生前、舞台終演後に帰宅する八千草さん(2018年8月)

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「ご自宅の庭には生き物が暮らすエリアがありました。特注で作られた4メートル四方の池には、近所で捕まえたカエルやメダカなどが泳いでいたそうです。昆虫や野鳥なども飛来し、四季を感じながら庭の光景を眺めるのが彼女の日課でした」

八千草さんはこの庭に深い思い入れがあった。かつて彼女は周囲の反対を押し切って映画監督・谷口千吉氏(享年95)と結婚した。子どもには恵まれなかったが、2人で趣味の山歩きに出掛けるなど、“おしどり夫婦”と呼ばれていた。

「2007年に谷口氏が亡くなるまでの半世紀を妻として添い遂げ、夫の死後は愛犬と自宅で暮らしていました。八千草さんは2018年に膵臓がんを患い、大手術を受けました。術後、周囲は介護施設への入居を勧めましたが、彼女は『夫と過ごしたこの家で愛犬と一緒にいたい』と、在宅介護を選びました」(同前)

親しい知人が打ち明ける。

「八千草さんは2019年2月に病状を公表しました。医者からは『(余命は)あと数年』というお話をされていたので、2021年くらいまでに仕事を調整して、ご本人はその過程で身の回りの整理も考えていました」

そんな八千草さんは生前、最愛の夫との思い出の庭を遺すよう奔走していたが、様々な問題が立ちはだかっていた……。

後編では自宅の存続に生じた様々な問題、遺贈した相手など、我が子のように可愛がっていた愛犬の行方を報じていいる。

(後編に続く)