外国人男性を脅して暴行
警視庁新宿署は10月28日、トー横で知り合ったという高橋和真容疑者（25）、八田琉弥容疑者（21）、笠井愛華容疑者（22）ら21～34歳の男女８人を強盗傷害容疑で逮捕したと発表した。新宿・歌舞伎町で少女を買春しようとした外国人男性に「未成年とやっただろう」と因縁をつけて暴行し、１ヵ月の重傷を負わせたうえで現金110万円が入ったリュックを奪った疑いだ。
新宿署によると事件が起きたのは２月24日午前１時半ごろ。高橋容疑者らは新宿区百人町１丁目の路上で外国籍の男性に殴る蹴るなどの暴行を加え、男性は鼻やあごを骨折するなどの重傷を負った。
「被害者の男性は歌舞伎町の路上で逮捕された８人とは別の10代の少女から売春を持ちかけられ、ホテルに行きました。少女はホテルに入るやいなや外へ逃げ出し、男性が後を追って外に出たところ、高橋容疑者らに因縁をつけられて暴行されたのです。
警察はいわゆる美人局の手口でカネを奪ったとみています。８人のうち高橋容疑者を含む６人は『取り押さえただけでカネは取っていない』などと容疑を否認しています」（社会部記者）
近年のトー横は犯罪の温床といわれ、トクリュウ（匿名・流動型犯罪グループ）との関与も疑われている。高橋容疑者らはどんな人物だったのか。
「知ってはいるがお前らには教えられない」
「これショウマじゃん。私は答えられないけど本人だね」
高橋容疑者についてトー横キッズに聞くと、そんな答えが返ってきた。「ショウマ」が高橋容疑者のあだ名だったのだろうか。「ここ半年ほどは姿を見ていない」との声もあった。
トー横で聞いた容疑者たちの〝素顔〟
トー横キッズの１人は次のように語った。
「ショウマは、地元が近いのかこのあたりでは有名でした。毎日いたわけではありませんが、長くトー横にいる人なら絶対に顔は見たことがあると思います。最近のトー横には、少し怖い感じがする大人と、みんなで楽しくなりたいって思っている人たちがいるのですが、ショウマは近寄りがたい人でした。いつも怖い話をしていたし、悪いことをしているという噂もよく聞きました」
トー横は「誰でも受け入れる」といわれているが、いくつかグループがあって、それぞれカラーが違う。高橋容疑者らは成人たちと親しげにしていたという。なかでも笠井容疑者が「一番怖い」と別のトー横住人は語った。
「“プチ詐欺”をやっていたと仲間から聞いたことがあります。とにかく関わると怖い感じがするので、自分から話しかけたりはしません。高橋って人と付き合っていたという話もあります」
プチとは「プチ援助交際」の略で、「手でするから5000円」など、本番行為のない援助交際のことを指す。笠井容疑者はカネを受け取り、実際には行為をせずに逃亡する詐欺行為を行っていたという。
美人局に勧誘された少女
さらに取材を進めると「トー横で美人局を斡旋している人間がいる」という話が入ってきた。ある少女は「楽にカネを稼げる」と数ヵ月前に美人局に誘われたという。
「逮捕された人たちではないかもしれませんが、『本番はしなくてもいいから大久保公園の周りに立って、男と交渉してホテルに入って。連絡してくれたら俺たちが迎えに行くから。未成年だから相手はすぐにカネを払う』と誘われました。『１回で１万円』とか、『絶対に警察に捕まらない』と言われた覚えがあります。私は怖かったので、やりませんでしたが、こういう話に乗って美人局をしている子もいます」
売春防止法違反で摘発された場合、女性側のみが罰せられるが、未成年となれば話は変わる。歌舞伎町では未成年の立ちんぼも増えているため、買う側の男性も注意を払っているという。大久保公園の立ちんぼの常連だという男性が「特定のグループが美人局をやっていた」と打ち明ける。
「美人局の話はよく聞きます。ラブホテルに入ってから、『痛い』『今日は手だけでお願い』などと言われてすぐにホテルを出ると、外で待ち伏せしていた仲間が『あんたが手を出したのは未成年だよ。警察には言わないからカネ払うよね？』と脅すという手口です。
グループでやっている美人局はすぐに噂が広まるので、常連はまず引っかかりません。でも、歌舞伎町のことをよく知らない観光客は引っかかってしまう」
男性がシャワーを浴びている間に、女が財布からカネを抜き取り、さらにホテル前で仲間が待ち伏せをして暴行を加えるケースもあるという。ホテル内で本番行為をしていなくても立証する方法はなく、脅しに屈してカネを払うほかないという状況に追い込まれるのだ。
今回の事件は110万円と被害額が大きいうえ、被害男性は鼻やあごなどの骨を骨折するという１ヵ月の重傷を負った。売買春は違法だが、それにつけ入って荒稼ぎをする美人局もまた、許されざる大罪だ。
