
WTTチャンピオンズ・フランクフルトで優勝
最後の一球が地面に落ちた瞬間、苦しみ抜いたサウスポーは両手を突き上げて天を仰ぎ、溢(あふ)れ出る涙をテーピングで覆われた左腕で拭(ぬぐ)った。
11月9日に行われた『WTTチャンピオンズ・フランクフルト』の決勝で、早田ひな(25、世界ランキング10位)が張本美和(17、同6位)をフルセットの末に下し、ケガからの復帰後初となる国際大会優勝を飾った。
パリ五輪を共に闘い、今年1月の全日本選手権でも対戦したライバルからつかみ取った勝利の背景には、完全復活を果たした早田の戦術の変化があったという。卓球コラムニストの伊藤条太氏が語る。
「以前は、ケガが悪化しないよう、早めに強いボールを打って長期戦を避ける速攻型の戦術を採用しているように見えた。
しかし今回は早打ちを避け、バックハンドを得意とする張本にあえてフォアハンドを打たせていました。先に強打をさせることによって相手に生まれた隙(すき)をカウンターで仕留めて優勝したのです」
この″粘り″の戦術は、五輪でケガを負う前の早田が得意としていたプレースタイル。つまり、日本のエースが完全復活を果たしたことを意味する。
「今大会には中国勢は出場しませんでしたが、12月10日から始まる『WTTファイナルズ・香港』には、中国を代表するプレイヤーが6人登場する。ここでの勝敗が、世界ランキングに大きく影響します」(同前)
速攻と粘りのプレースタイルを自在に操って世界トップ10に返り咲いた早田が、並みいる中国勢を下す日は近い。
『FRIDAY』2025年11月28・12月5日合併号より