秋のビール戦争に新たな局面!キリン・サントリーの新商品攻勢に「業界1位のアサヒ」が取った対策とは

次々と生まれる新商品。どのビールも美味しそう!

『第3のビール』だった『金麦』が『ビール』としてやってくる!

〈「前編の記事のあらすじ」

約40年にわたって業界の王者に君臨してきたアサヒビールは、業界2位のキリンの新商品『キリングッドエール』の発売や犯罪集団からのランサムウェア攻撃で苦しんでいる。そんな状況のなか、サントリーは新商品『サントリー生ビール』がうまく行っておらず、既存製品の横展開ばかりが目立っている〉

業界のトップ「アサヒ」に取って代わろうと、キリンがとった秘策について語った前編記事はコチラ!

一見すると、サントリーは新たな一手を打てずにいるように見える。しかし、前出のMJ氏は、これが嵐の前の静けさだと分析する。

「来年の酒税法改正の影響に伴い、サントリーは『第3のビール』区分だった『金麦』の麦芽使用率を50%未満から50%以上に引き上げ、ビール区分にすることを決定。いうまでもなく、『金麦』は『第3のビール』の中で圧倒的ナンバーワンブランドで、年間売り上げ約3000万ケースを誇ります。

私は発表会でビール化した『金麦』の試作品を飲みましたが、ビールらしさと『金麦』らしさのバランスが取れた味わいでしたし、サントリーも『お求めやすい価格を保つ』と繰り返し発信していますから、ビール化したからといって既存のファンが離れるとは思えません。

むしろ、ライバル社からすれば、ビール市場に大勢のファンを持つ『金麦』がやってくるというのは、大きな脅威。メジャーリーグに日本球界ナンバーワン投手が移籍するような衝撃です」

『ヱビスビール』や『サッポロ生ビール黒ラベル』を擁するサッポロビールは、10月7日に雑味のないクリアな味わいを特徴とする『サッポロ生ビール黒ラベル EXTRA THINK』を数量限定で発売した。

「『サッポロ生ビール黒ラベル』や『ヱビスビール』にはそれぞれ熱心なファンがついています。サッポロビールは着実に品質の高い商品を作り、固定客を満足させることを目的としているような、職人気質なところがある。ライバルが酒税法改正に向けていろいろ動いていますが、変わったことはせず、二枚看板の横展開をマイペースに続けるのではないでしょうか」(同前)

ただ、サッポロHDは現在、所有する恵比寿ガーデンプレイスを中心とした不動産の売却を画策し、年内の合意を目指し、米投資ファンドを中心とした企業連合との交渉を続けている。売却益は4000億〜5000億円規模と見られ、それを酒類事業の強化に充てる方針だ。

業界関係者は「まとまった現金を元手に『サッポロ生ビール黒ラベル』や『ヱビスビール』に続く新商品開発のための設備投資を行う可能性が高い」と話す。

『キリングッドエール』で新たな覇権を狙うキリンビール、酒税法改正を好機と捉えて『金麦』のビール化を画策するサントリー、不動産売却で多額の開発資金を調達しようとするサッポロビール。王者への逆襲を始めた3社を、満身創痍のアサヒビールはどう迎え撃つのか。経済ジャーナリストの高井尚之氏が話す。

「『キリン一番搾り ホワイトビール』と同じ4月15日に、苦味を前面に押し出した『アサヒ ザ・ビタリスト』を発売。年間目標を200万ケースから280万ケースに上方修正するなど、売れ行きは好調です。『アサヒスーパードライ』という圧倒的な人気ブランドがあるからこそ、日常的にビールを飲み、苦味を好む層に深く刺さる商品を開発したのです。

また、9月には3.5%の低アルコールビール『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』を、よりコク深い味わいにリニューアル。低アルコール飲料を好む若者世代に向けて売り出しています。『アサヒスーパードライ』でマス層を、『アサヒ ザ・ビタリスト』でコア層を、『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』でライト層を狙うのでしょう」

良くも悪くも横綱相撲を続けるアサヒビールにキレのある一撃を食らわせることができるのは、いったいどこのメーカーだろうか。

’26年にビール化される『金麦』のCMには俳優の竹野内豊(54)が出演している。写真はサントリーHPより
『ザ・ビタリスト』のCMには俳優の二階堂ふみ(31)が出演。写真はアサヒビールHPより
今回の記事で紹介したビールメーカーの主力&新商品!

『FRIDAY』2025年11月14・21日合併号より