
お前の兄ちゃん殺されるよ
無抵抗の少年を一方的に殴りつけ、土下座をさせ、頭を踏みつける。本誌が入手した動画には、被害者が命の危険を感じるほどの凄絶なリンチの様子が収められていた——。
9月30日、大阪市在住の高校1年の男子生徒(15)に暴行を加え、川に無理やり入らせたとして10代の少年二人が傷害と強要の容疑で書類送検された。被害者には発達障害があり、意思表示がうまくできないことを逆手に取った凶行だった。
被害者の男子生徒は6月中旬、少年らに″スパーリングをする″と大阪市内の河川敷に呼び出されていた。件(くだん)の動画はその際、現場にいた加害少年の知人が撮影したものだ。
被害者の男子生徒(以下A君)とその母親が、声を震わせながら打ち明ける。
「私が事件を知ったのは、息子が暴行された10日ほど後でした。事件の主犯格であるBが、暴行の模様を撮影した動画を周囲に見せびらかしていて、動画を見た人が私の娘に『お前の兄ちゃん、殺されるよ』と知らせてくれたんです。息子を問い質すと、『ずっと殴られ続けて、最終的には川に沈められた』と初めて話してくれました。暴行は2日間にわたって行われていて、川に入らされたのは1日目でした」(A君の母親)
加害者の二人は中学の同級生で、同じラグビー部の友人だったという。A君が重い口を開く。
「事件の前、僕がBをイジるようなことを本人がいないところで言ってしまった。それを聞いたBがブチギレたんです。Bに河川敷に呼び出されて殴られながら、『やり返さなければ早く終わる』と考えていた。だから、抵抗せずに耐えていました。ただただ痛かったという記憶しかありません……」(A君)
動画には、A君の顔や腹部をBが何十発も殴打している姿が映っている。殴るだけでは怒りが収まらなかったのか、A君に土下座で謝罪をするよう求め、指示通り土下座をしたA君の頭をもう一人の加害少年が靴で踏みつける様子も撮影されていた。それでもなお、A君への凶行は止まらない。
笑いながら「胸まで浸かれ」
「動画にやり取りが残っているのですが、彼らは息子に対して、もう一回スパーリングをするか、カネを払うか、川に入るかどれかを選べと迫ります。この子はシングルマザーの私に金銭的な迷惑をかけたくないと思ったのか、『川に入ります』と言ったんです」(A君の母親)
そしてA君は服を脱ぎ、下着姿で川に入っていく。水が冷たいと訴えかけるA君に対し、少年たちは笑い声をあげながら「胸まで浸かれ」「そこで10秒耐えろ」などと指示を出していた。
「川に入ったとき、これはまずいと思いました。あまりにも水が冷たかったので……。それでも、二人には『もっと奥まで行け』とか言われました」(A君)
この夜、A君は顔面打撲傷や左大腿打撲傷など、全治約3週間の大怪我を負った。しかし、母親や警察に相談することはなかったという。
「心配をかけたくなかったんでしょう。息子は血の付いた制服を全部自分で洗っていました。足を引きずっていることを不審に思った私が『大丈夫?』と聞いても、殴られたとは言わず『ラグビーをしていて怪我をした』と嘘をついた。なぜあの時、異変に気付いてやれなかったのか……。私が動画を見て事件について問い詰めたときも、最初は何も話してくれなかった。『これは命に関わることだから、すべて話してほしい』と説得して、ようやく打ち明けてくれました。
加害者の二人は息子と一緒に私たちの家に来たこともあります。私は『息子に友達ができた』と嬉しく思っていたんです。それなのに、こんな事件が起きた。涙が涸れるほど泣きました。今も加害者を許すことはできません」(A君の母親)
事件発生からおよそ2週間が経過した6月下旬、A君の母親は警察に被害届を提出。すぐに受理され、9月30日の書類送検に至った。加害少年二人は大阪家庭裁判所に送致され、裁判が進んでいく予定だという。
親子の悲痛な訴えを、加害少年たちはどう受け止めるのだろうか。


