AI漫画×再現ショートドラマで挑む! キイストンが仕掛ける飲食店の求人革命とは

キイストンが求人支援ツールとしてAIで制作した漫画

景気がいいときも、悪いときも、飲食店は常に人手不足に悩まされている。そんな猫の手も借りたい外食産業に、再現ショートドラマ(ユーチューブ)、書籍、そして、AI漫画など独自の手法も使って求人のサポートをしているのが、株式会社キイストンだ。同社代表取締役社長の細見昇市氏に、「企業の求人の現状」や「独自でユニークな求人方法」について話をうかがった。

単なる求人募集だけでは、人は集まらない!

キイストンの細見昇市代表取締役社長

現在は、スキマバイトアプリなどもあり、一時的に飲食店の働き手が増えたように見えるが、それでも人手不足が解消できないのはなぜか。

「スキマバイトは、働く側のほうにはメリットがあります。基本、働く側がお店をやめる理由は、人間関係が多い。上司が嫌いとか、仲間が苦手とか、人間関係のわずらわしさの影響を受けずに働けるので、スキマバイトは世の中のニーズには合っています。一方、お店にとっては、急に人がいなかったときには助かりますが、長期的な戦力確保にはつながりにくい面もあります」

企業側が求めているのは、“長く働いてくれる優秀なスタッフ”だ。そういう人材を見つけるために必要なのは、「会社の理念を理解してもらうこと」だという。

「会社の理念に共感してくれる人を集めることが大切なんです。求職中の人は、その会社の社長がどんな志で、どんな目的のために事業をやっているのか、職場の雰囲気を知りたいと思っている人が多いんです」

同社は、クライアントの企業に対して、「スタッフの採用活動の前に、企業の価値を高める“採用ブランディング”」を重視している。

「給料がいいからといって、優秀な人材が来るわけではないんです。特に若い人は、給料よりも休みが多いほうがよかったり、働きやすさを重視する傾向がありますしね」

インタビューした社長は1100人以上

求人において、他社と差をつける手段の1つに、同社のオウンドメディア自社サイトで連載している『飲食の戦士たち』がある。飲食業界をリードする社長たちをインタビューし、これまでの生き方や仕事への思いなどを紹介しているのだ。

「『社長の生き方が、そのまま会社の理念につながっている』と言ってもいいでしょう。飲食業で働くことを求めている人は、応募前に企業をネット検索することが多いので、このサイトに載っていることで『この企業で働きたい』と思いやすくなります。また、社長にとっても、自分の理念に共感できる人と縁ができやすくなります」

同サイトでインタビューした社長は1100人以上。外食業界では知られたサイトに成長している。

「一般的な主要メディアでは、大手企業の社長以外はインタビュー取材をされる機会は少ない。弊社の記事で知名度を上げるきっかけにしていただき、その後、メディア媒体に取材される企業(お店)にまで成長させるサポートをしたいと考えています」

ドラマ&書籍化で訴求力UP

再現ショートドラマは現在8話までユーチューブで配信中

現在は、同インタビュー記事だけにとどまらず、ユーチューブでの再現ショートドラマ制作や書籍出版へと発展している。

「動画は『飲食の戦士たち動画再現ショートドラマバージョン』で8話まで公開しています。本のほうは、書籍JANコードを自社で取得し、出版事業も行っていて、アマゾン(Amazon)で販売しています。ただ、本は売ることが目的ではなく、“企業や社長のことを知ってもらうための手段”なんです」

出版コードを自社で取得して経営者の書籍を扱う予定。「本を通じて、企業や社長を知ってほしい」と細見社長

書籍はインタビュー記事以上に掘り下げた内容のため、求職者はもちろんのこと、仕事の取引先、お客さんにもお店のことをより知ってもらうことができる。さらに、「本が出ている企業」ということで、企業イメージを高められるという。

AI漫画制作で求人支援ツールも

新たに、AIを活用した漫画制作にも取り組み、2026年1月の開始に向けて、支援ツールを準備中だという。漫画化する理由は何だろうか。

「文章を読むよりもイメージしやすいし、より若い人に興味をもっていただけるのではないかと。歴史の教科書は読みたくないけど、歴史漫画だったら頭に入りやすいこともありますしね」

確かに漫画だととっかかりやすい。それにしても、イラストや内容のクオリティーの高さに驚かされる。

「広告漫画を日本で初めて事業化され、日本一の制作実績(1万案件)を誇るトレンド・プロ創業者の岡崎充氏にお願いしているのですが、AIに当社が持つ膨大なデータを学習させて、まずシナリオを作ってから漫画化していきます。著作権侵害が起きないよう注意して制作しています」

まさに時代に合った手法だと言えるだろう。このように「飲食の戦士たち」を再現ショートドラマ、書籍、新たにAI漫画へと発展させていき、求人をより効果的にしていきたいと考えているのだ。

クライアントの知名度&業績UPも目指す

それにしても、すごいアイデアだ。単に求人の代理店、人材紹介会社としての役割にとどまらず、その会社が魅力的に見えるようにブランディング確立にも携わり、飲食企業を多方面からサポートしている。

「クライアントには、これまで関わってきた多くの企業の成功実例のお話もします。クライアントの知名度や収益も上げていくお手伝いもしたい。これらはすべて求人につながるから行っているんです」

独自のアイデアを生かし、求人だけでなく、企業(店舗)ブランド構築なども手厚くサポート。「困ったときは、キイストン」と覚えておくといいだろう。

■株式会社キイストン 1992年設立。飲食業界に特化した「オーダーメイド型人材採用総合サービス」を展開する企業。自社メディア『飲食の戦士たち』の企画・運営を中心に、ユーチューブでの再現ショートドラマ・書籍・AI漫画などへ展開。独自の“採用ブランディング手法”で、飲食業界の採用支援と企業価値向上をサポートしている。詳しくは公式サイト

(取材・加藤弓子)

■加藤 弓子(かとう・ゆみこ) ライター、コラムニスト。明治大学文学部演劇学専攻卒業。フードビジネス会社や出版社の広報担当などを経て、ライターに転身。夕刊フジなどで著名人インタビュー、グルメ、書評などを執筆。「コラムニスト・ひかり」のペンネームで、“子供おばさん”シリーズのコラムや漫画を数々の媒体で連載。