「セックス」も「家族」も消えたー村田沙耶香の衝撃作『消滅世界』が実写映画化28日公開

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村田沙耶香の『消滅世界』が実写映画化され、蒔田彩珠主演で公開されます。新装版文庫も発売され、電子書籍も配信中です。

村田沙耶香の長編小説『消滅世界』(河出文庫)が実写映画化され、28日から全国公開される。これにあわせて20日から映画ビジュアルを使用した新装版オビ付き文庫が重版され、全国の書店で販売がスタートした。映画では蒔田彩珠が主演を務め、川村誠監督が脚本と監督を担当する。

「セックス」も「家族」も消えた未来を描く衝撃作が映像化

『消滅世界』は、人工授精で子どもを産むことが常識となり、夫婦間の性行為が「近親相姦」としてタブー視される未来社会を描いている。「文藝」2015年秋季号で発表されるとSNSなどで大きな反響を呼び、単行本化の際には作家の中村文則が「壮大な世界。でもこれは母と娘の物語ではないだろうか。さすが村田沙耶香。この作家はすごい」、翻訳者の岸本佐知子が「見たこともないほど恐ろしい『楽園』が、ここにはあります」と絶賛コメントを寄せた作品である。

村田沙耶香といえば、2016年に発表した『コンビニ人間』(文藝春秋)で芥川賞を受賞し、その後同作が世界的ベストセラーとなったことで知られている。現在は複数の作品が海外で翻訳刊行され、日本文学の人気を国際的に牽引する存在となっている。その村田の小説作品が実写映画化されるのは今回が初めてとなる。

人工授精が常識、性愛はタブーとされる世界観

映画「消滅世界」のストーリーは、人工授精で子どもを産むことが定着した未来社会を舞台としている。この世界では夫婦間の性行為はタブーとされ、恋や性愛の対象は「家庭の外」の恋人か二次元キャラクターに向けられるのが常識となっている。

主人公の雨音は、そんな世界で「両親が愛し合った末」に生まれたという異例の存在で、そのことから母親に対して嫌悪感を抱いている。家庭に性愛を持ち込まない「清潔な」結婚生活を望み、夫以外の人物や二次元キャラクターと恋愛を重ねる雨音だが、夫と移住した実験都市「楽園(エデン)」で彼女の「正常」とされる日常は一変していく。

映画では主演の蒔田彩珠をはじめ、栁俊太郎、恒松祐里、結木滉星、富田健太郎、清水尚弥、松浦りょう、岩田奏、山中崇、眞島秀和、霧島れいかという豪華キャストが集結。川村誠監督が脚本・監督を手掛けた。

主演の蒔田彩珠はじめ豪華キャスト陣

映画化にあわせて登場した映画ビジュアルオビ版の文庫本は、原作ファンはもちろん、映画への期待感を高めるデザインとなっている。河出文庫版は税込定価693円で、電子書籍版も各ストアで配信中だ。

村田沙耶香『消滅世界』河出文庫(通常カバー)
村田沙耶香 photo: 藤岡雅樹

村田沙耶香(むらた・さやか) 作家。1979年8月14日生まれ。千葉県出身。玉川大学文学部卒。2003年「授乳」で群像新人文学賞優秀作を受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年『コンビニ人間』で芥川賞受賞。2025年『世界99』で野間文芸賞受賞。

蒔田彩珠(まきた・あじゅ) 女優。2002年8月7日生まれ。横浜市出身。子役を経て、2018年、映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で映画初主演。ダブル主演の南沙良とともに報知映画賞新人賞、高崎映画祭最優秀新人女優賞受賞。2020年の映画「朝が来る」で、毎日映画コンクール、キネマ旬報ベスト・テンなど各映画賞で助演女優賞。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」「おかえりモネ」に出演するなど、映画、ドラマ、CMなどで活躍。