05 November 2025
「晩年はほぼ毎日一緒に過ごしていた」という南部虎弾の葬儀に参列した際の大本社長(左) 「報酬はいらないので……」 株式会社BBE。作家の志茂田景樹(85)に“格闘界のファンタジスタ”皇治(36)と幅広いジャンルのタレントたちをブッキングする芸能事務所である。 BBEの代表取締役社長・大本英正氏は『SDN48』で一世を風靡した芹那(40)やミスFLASHの村上友梨(32)を発掘し、『電撃ネットワーク』の故・南部虎弾の最後のマネージャーを務めた男である。その大本社長が怒りを滲ませながら言う。 「恥ずかしながら詐欺に遭いまして……3000万円、いかれました。芸能事務所の社長と聞くと金持ちのイメージを持っている方がおられるかもしれません。ですが、それは売れっ子を抱えているほんの一握りの事務所だけ。ほとんどが零細企業です。3000万円のマイナスは死活問題です」 いったい、何があったのか。きっかけは暗号資産だという。 「将来、会社を支える資金になってくれればと暗号資産を買ったのですが、引き出せなくなったのです。ブロックチェーン・ドットコムという会社の暗号資産ウォレットで管理していたのですが、ログインできなくなった。そこにあることはわかっていても、取り出すことができなくなった。 IPアドレスに規制がかかっているのが原因だとか、海外に行ってアクセスすればログインできるとか、当時いろいろ言われていまして、詳しい知人にも相談しましたが結局、どうにもならなかった。そんなある日、X社の“暗号資産・仮想通貨を復旧します”というSNS広告が目に入りました。昨年12月のことです」 優しいタッチのイラスト、2000人以上という相談実績、何よりIT法務に詳しい国際弁護士が顧問弁護士として顔出し・実名でホームページに登場していて、適宜アドバイスしてくれるというのが安心材料となった。 大本社長は12月半ばに暗号資産ウォレットの解除(復旧)を依頼。年が明けて2月に解除がなされた。日本円にして2000万円。報酬は解除額の10%の200万円だったが、X社の担当・カネダと名乗る人物は、 「その200万、解除報酬としていただく代わりにウチで運用しませんか? 弊社おすすめのNFTを買いませんか?」 と甘い誘いをかけてきた。 「ここでやめておけばよかったんです。人間の欲って怖いですよね、どうせ報酬としてなくなるはずの200万円ならいいか、と誘いに乗ってしまった。思えば担当のカネダとは電話とチャットでやり取りしただけ。一度も会っていない。どうして信用してしまったのか……」 取り戻した暗号資産の解除報酬の約200万円分でX社が推奨するNFTを購入。数日後に倍になった。 相談を受けたことすらないのに無断でX社の「顧問弁護士」にされていた国際弁護士の中野氏(X社のホームページより)。威力業務妨害で同社を告訴した 「300万円なら返してもいい」 こうなるともう止まらない。「彼らがいなければ戻って来なかったカネなんだから」と全額をX社が推すNFTに突っ込み、誘われるままシンガポールの暗号資産プロジェクトも買った。どちらも「当社のリサーチルームが厳選したから絶対大丈夫」「必ず値上がりする」「買うチャンスはここ2〜3日しかない」と同社が猛プッシュしてきた案件だ。 総額3000万円の大勝負に出た大本社長だったがーーシンガポールの暗号資産プロジェクトはロックアップ(売却できない状態)となり、NFTは一切値動きがなく、買い手がつかない状態に。そして、X社からの連絡が途絶えたという。 「最初、少しだけ利益や配当を出して信用させておいて、一気にガバッと持っていく……典型的な詐欺の手法ですよね。ホームページに書かれているX社の住所に行ってみるとバーチャルオフィスで、しかもそこにX社はなく、担当に電話すると『引っ越したの言ってませんでしたっけ?』と言われました。ホームページに載っていた顧問弁護士に接触すると『勝手に名前と写真を使われている』と困惑していました。 だまされたからこそ実感を持って言えますが、日本になんと詐欺の多いことか。先日も特殊詐欺で田舎のお婆さんが3億円をだまし取られたというニュースが流れていましたが、なんとか詐欺師どもに打撃を与え、善良な世の人々に警鐘を鳴らしたいとの思いから、戦うことを決めました」 大本社長が買わされたNFT(暗号資産交換所のサイトより) 知らぬ間にX社の顧問弁護士にされていた中野秀俊弁護士を代理人に起用。大本社長は詐欺罪で、中野弁護士は偽計業務妨害罪でそれぞれX社を刑事告訴した。 告訴の準備を進める中で、新事実が判明した。国外にいる伊藤瑛人という男がX社の黒幕であるという疑惑が浮上したのだ。大本社長が続ける。 「X社がホームページで謳(うた)っていた通り、中野弁護士は暗号資産の問題に強い弁護士で、独自の人脈を通じて伊藤に辿り着いた。伊藤は“榊原けんじ”という別名を持っている暗号資産界隈では知られた存在。色黒で小太りのイケイケな男で、夜の街でも太客として有名でした」 「伊藤瑛人」でウェブ検索すると、ガーシーこと東谷義和元参議院議員をドバイに呼び寄せ、匿っていたことで知られる実業家AのSNSの投稿や、Aと一緒に写った写真がヒットする。二人は一時期は蜜月だったが、現在は仲違いしているという。 「指定された事務所のような場所に中野弁護士が赴き、私物を預けたうえでウェブを介して伊藤に返金を求めたところ、伊藤は『300万円なら返してもいい』と嘯(うそぶ)きました。腹立たしい限りです。犯罪者どもが日本の警察の手の届かない安全地帯から同胞のカネを掠(かす)め取る。相手がご老人だろうが、女子供だろうが構わず襲いかかる。この卑劣で卑怯な悪党どもを私は許しません」 生活費にも事欠く厳しい経済状況ながら、大本社長は民事提訴にも踏み切る。 「こんな詐欺に引っかかり、恥ずかしい限りですが、こうして実名で経緯を語ることで私のような被害者が出ることを防げたら、と願っています。いろいろ動くうちに暗号資産界隈に知り合いができました。伊藤とドバイで飲んでいた奴らともつながりました。人生をかけて詐欺師を追い詰めます」
05 November 2025
安福久美子容疑者(高校の卒業アルバムから) この記事のまとめ βAIにより本文を要約しています 1999年の名古屋市西区主婦殺害事件が、26年後の2025年に安福久美子容疑者の逮捕で急展開を迎えました。彼女の動機は被害者の夫への執着で、DNA証拠が決め手となりました。事件解決には新たな刑事の捜査が寄与し、被害者の息子は父の執念が逮捕に繋がったと語っています。 1999(平成11)年11月13日に発生した「名古屋市西区主婦殺害事件」は、約26年間もの間未解決だったが、被害者遺族や刑事の執念で急転直下の逮捕劇へ繋がった。2025年10月31日、殺人容疑で愛知県警に逮捕されたのは、名古屋市港区のアルバイト、安福久美子(やすふくくみこ)容疑者(69)=旧姓は山口=。2日に送検された。 現時点で安福容疑者の動機は不明だが、被害者の夫は、安福容疑者が好意を寄せていた高校の同級生で、その異様な執着ぶりが判明。これが安福容疑者を凶行に走らせたとの見方も浮上している。 安福容疑者は、1999(平成11)年11月13日、主婦、高羽奈美子(たかばなみこ)さん=当時(32)=が住んでいた名古屋市西区のアパートで、奈美子さんの首などを刃物で複数回刺すなどして死亡させた疑いがもたれている。奈美子さんの死因は、失血死だった。事件当時、奈美子さんの夫は不在だった。 安福容疑者の逮捕の決め手になったのは、事件現場に残された血痕のDNAと安福容疑者のものが一致したこと。この事件現場のアパートは、犯人の血痕や靴跡がくっきりと残っている状態で、被害者の奈美子さんの夫・悟(さとる)さん(69)さんが家賃を払い借り続けていた。悟さんがこの「現場保存」のためにこれまで払った家賃の総額は、2200万円を超えたという。 安福容疑者は今年に入って捜査線上に浮上し、愛知県警は8月以降、安福容疑者に複数回事情を聴いていた。安福容疑者は当初、DNA型鑑定試料の任意提出を拒否したが、逮捕直前になってこれに応じ、10月30日午後に西警察署に1人で自ら出頭した。 安福容疑者は調べに対し、「合っています」と容疑を認め、今年8月以降、警察が来たことで、「捕まってしまうことを覚悟した」と供述。「事件発生日が近づくと悩んで気持ちが沈んだ。家族に迷惑をかけられず、捕まるのが嫌だった」「(26年間は)毎日不安で、事件に関する新聞も見られなかった」とも語った。 安福容疑者は、被害者の奈美子さんに対しては、「申し訳ないと思っている」と話したほか、事件の際には、「事件の際に手にけがをした」と語った。4日には、安福容疑者が事件で負ったとされる手のけがについて病院で受診した形跡が見つかっていないことが、愛知県警西署捜査本部への取材で分かった。 5日には、逮捕後の自宅の家宅捜索で発見されていない凶器について、安福容疑者が、「凶器の刃物は処分した」との趣旨の供述をしていることが、捜査関係者への取材で分かった。 事件現場のアパートの部屋の机には、食べかけのミカンやカップ麺が残されており、被害者の奈美子さんにとって、安福容疑者の訪問は予期せぬものだったとみられる。ほかにも、被害者家族では飲む習慣がなかった、乳酸菌飲料の液体(※約35キロ離れた西三河地区で販売されたものと特定)が吐き出されたかのようにこぼれていたとされている。 また、玄関にはもみ合った際にけがをしたとみられる犯人の血痕と靴跡が残されており、現場の洗面所と近くの公園の手洗い場の2カ所に犯人が血を洗い流した痕跡もあった。犯人は事件後、現場から500 mほど離れた稲生公園近くまで走って逃げたとみられるが、血痕は途中で途切れ、その後は忽然と姿を消していた。 被疑者逮捕まで約26年間もかかった一因には、被害者の奈美子さんと安福容疑者の間に面識がなかったことがあり、これにより捜査が難航していたとみられている。 埼玉県警察本部刑事部捜査第一課の元警部補で、コメンテーター、佐々木成三氏(48)は4日に自身のユーチューブチャンネルに投稿した動画の中で、次の通りに見解を示している。 ◇ どうしてこんなに時間かかったのかということを結果論にはなってしまうんですが、かなり捜査が難しかったのかなと感じています。怠慢だったとか思ってないです。今分かっている状況においては、やはりこの被害者との接点がなかった、ご主人の悟さんとは高校時代に接点はあったということなんですが…その網の中にこの安福容疑者が引っかからなかったということはそういうことだと思う。 26年間どのような捜査体制捜査をしていたのか。発生当初これは捜査本部になりますので、多分数百名の体制。もちろん26年間この体制を続けることはできなかったと思います。ただ今この2010年ですかね、(殺人事件の)時効が撤廃になってですね、未解決事件の捜査のスペシャリストを集めて、未解決事件において継続捜査をする体制は整っていました。過去の事件の捜査の洗い直しをして今回逮捕したということはやはり的確な捜査が行われていたのかなと。 急展開、どうしてですかということなんですが、やはりこれはDNAが現場に残されていたということが大きな要因だと思います。今DNAの精度というのは数兆分の1と言われていますので、そのDNAが残されている人物は、もう地球上に1人しかいない。ただその前にやはりこの担当刑事が絞り込んで、この容疑者に対してDNAの提出を求めた、そういったところかも大きな要因だったと思います。 ◇ 安福容疑者と面識があったのは、夫・悟さんの方だった。安福容疑者と悟さんは、高校の同級生で同じソフトテニス部所属だったのだ。 安福容疑者は悟さんに好意を寄せ告白したが、悟さんは交際を断った。悟さんは、安福容疑者から「好きです」と書かれた手紙をもらっていたり、バレンタインデーにチョコを贈られたこともあったという。 それでも安福容疑者は悟さんに執着し続けた。高校卒業後、別々の大学に進学した後も、安福容疑者は、悟さんが出場する大学の部活動の試合を、友人を連れて見に行っていた。また、悟さんが通う豊橋市内の大学キャンパス近くに一方的に押しかけるトラブルも起こしていた。 悟さんによると、大学のテニス部の練習終了後に安福容疑者が連絡なく、テニスコートで待っていたことがあり「待たれるのは困る」との趣旨を伝えた。「(大学まで)追いかけてきて僕の帰りを待って、近づいてきて声をかけて、喫茶店に連れて行って泣かれて大変だった」という。 悟さんは3日夜、共同通信のインタビューで、安福容疑者の印象や、この押しかけ騒動などについて、次の通りに振り返った。 ◇ まるっきりそんなことをやるような子には見えない、おとなしい暗い感じの子。 待ち伏せです、結局私は豊橋まで来られて、僕ら大会のクラブとしては神聖な場所だから、そんな女性がしょっちゅう僕の帰りを待つなんていうナンパみたいなことは許される雰囲気じゃない中で厳しい中でやってるから。だから彼女はここまでしてきたのにそんなこと言われてて悲しくなったんじゃないですか。 結果としてはもう奈美子に悪いことしたなと、その女と自分が人生で出会って関わったばかりに殺しに来たんで。早く動機が解明されて、面識のない、あなたにどういう恨みを募って襲ったかをちゃんと聞かせてもらわないと報告できないんで、早く動機の解明のところを捜査を進めてほしいというのが多いですかね、教えてほしいんですよ。だいたい分かっていると思いますよ。毎日が不安って言ってるぐらいだから。ある程度動機が喋ってると思うんだけど。 ◇ 1999年11月の事件の5カ月前には、悟さんと安福容疑者は高校のソフトテニス部のOB会で再会していた。この同窓会では、悟さんは安福容疑者に、「若い嫁さんもらって子どもが生まれた」と、結婚して子どもがいると伝えたという。 安福容疑者からは、「私も頑張って、仕事しながら主婦業をしている」という話があり、悟さんはこの時の安福容疑者が以前よりも明るくなった印象をこれまでメディアの取材に対し明かしている。…