《3億円豪邸を「公園」や「レストラン」に…》生前の八千草薫さんが切望した想いを阻んだ“壁”と可愛がっていた愛犬の現在
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった 写真一覧 数々のドラマや映画で母親役を演じ、国民から愛されてきた大女優・八千草薫さん(享年88)。当時26歳だった彼女は周囲の反対を押し切り、19歳年上の映画監督・谷口千吉さん(享年95)と結婚。“おしどり夫婦”として東京・世田谷にある豪邸で長く暮らした。 2007年に夫を看取り、女優活動を続けながら愛犬「ヴェルディ」と平穏な生活を送っていた。しかし、2017年に乳がんが発見され、その後、膵臓がんのステージ4という診断を受けた。余命宣告を受けた彼女は、夫との思い出の家を遺したいという想いを抱いていた。知人が語る。 「自宅の庭には大きな木があったんですが、家を残すというよりその木や庭を残すことに(八千草さんは)強い思いがあったようです。彼女の『自然な形で庭の木を残せないか』という要望で、小さな公園として土地を寄贈できないかと、区や関係機関を回って相談もしていました」 八千草さんは亡くなる直前に、遺言書を作成。自宅や庭を寄贈する方法などを模索していたが話は進まず、最終的には34回遺言書を書き直した。 2019年10月24日、八千草さんは88年の人生をまっとうし、最愛の夫が待つ天国へと旅立った──。残された自宅は遺言状のとおり、3人に遺贈されていた。 「遺贈された2人は八千草さんと夫・谷口さんの遠戚に当たる方々です。彼女が入院中に犬の散歩をしたり、入院中の身の回りの世話をしてくれた親しい間柄でした。残りの1人は所属事務所の社長でした」(同前) NEWSポストセブンは事務所の社長を取材。長年、八千草さんと仕事をしてきた社長は悔しさを滲ませた。 「八千草は、自宅をそのまま残して『個人の方に買ってもらいたい』と希望していました。リフォームしてレストランにという話もあったので、シェフの方を探したりもしたのですが、当時はコロナ禍で飲食店を経営するのは難しく断念。私もコロナの影響で事務所の仕事がほとんどなくなってしまい、経済的にも厳しくなっていました」 彼女の死後も自宅の存続に向けて動いていた社長らだったが、相続税の支払い期限が迫っていたという。こうした状況は、自宅を維持しようとしていた3人にとって大きな壁となった。 生前、舞台終演後に帰宅する八千草さん(2018年8月) 写真一覧 「相続税が2500万円という報道もありましたが、実際はそれ以上。自分の力ではどうにもならなくなってしまい、無念ですが手放すしかありませんでした」 自宅を売却しないかぎり、数千万円の相続税の支払いが課される。さらに法定相続人ではない人が遺贈を受ける場合、通常の相続よりも2割加算された額を相続税として支払う必要があり、大きな負担に。 そのため、3人は不動産販売業者への売却を決意し、現金化することを選んだのだ。そして、八千草さんの自宅は2020年9月に売却され、相続税を支払った残りの現金を3等分することに。「八千草の自宅があった場所に、今は新しい家が建っているそうですね。私も昔はあの辺によく行っていて思い出がたくさんあります。でも、どうしても辛くて……行けていないんです」 八千草さんの逝去から6年、自宅の跡地に当時の面影は残っていない。彼女は亡くなる1カ月前に入院中の病室から「ヴェルディ」に会うために3日ほど帰宅していた。夫との思い出の場所で、愛犬と過ごした時間は彼女にとって大切な“人生の終活”だった。 その愛犬は今、どうしているのだろうか。 「亡くなる直前までご自身で世話をされていました。今は別の方が札幌でお世話をしていますし、元気に走り回っているようですよ。12~13歳くらいだと思います」 庭園を遺すことは叶わなかったが、八千草さんの愛犬は自然豊かな北の大地で主のことを思い出しているに違いない──。 (了。前編を読む) 【写真】〈取り壊された3億円豪邸の今〉庭にあった「石のベンチ」八千草さんが座って台本を読んでいたという、生前関係者に手を引かれて帰宅する八千草さんの姿
