27 October 2025
こだわりが詰まったプライベートジムの前で。「BIGBANG」は文字通り爆発的な強打で24人の世界ランカーを葬って来た中谷の愛称だ 最強の相手への挑戦 天井までの高さは5.4m。127.53㎡の広々とした空間に世界タイトルマッチと同じサイズのリングが備えられ、200㎏、150㎏、100㎏、40㎏、アッパーカット専用、そしてミニサイズの計6本のサンドバッグが吊り下げられている。 ″モンスター″井上尚弥(32)への挑戦を決め、WBC/IBFバンタム級タイトルを返上した中谷潤人(27)が神奈川県某所に築き上げたプライベートジムだ。9月中旬より、スパーリングの無い日はここで汗を流している。ランニングマシーンも置かれ、雨天でも走り込める。 15歳で単身アメリカに飛び、本場のプロスタイルを身につけた中谷は、言わば逆輸入ボクサーだ。WBOフライ級、同スーパーフライ級、WBC及びIBFバンタム級のベルトを獲得し、ついに4階級制覇を狙って来年5月の井上尚弥戦を迎える。目下、戦績は31戦全勝24KO。デビュー以来、試合前は毎回、LAでトレーニングキャンプを張っている。原点と呼べる地で名トレーナー、ルディ・エルナンデスの指導を受けるのだ。 井上戦までにスーパーバンタム級で2試合はこなしたいと語っていた中谷だが、チューンナップ戦は12月27日のセバスチャン・エルナンデス(25)戦のみとなりそうだ。同ファイトはサウジアラビアのリヤドで行われる。31戦全勝27KOで、WBA/WBC/IBF/WBOスーパーバンタム級チャンピオンである井上がメイン、中谷はセミファイナルに出場する予定だ。 日本では、実弟の龍人がトレーナーとして中谷を支える。2つ歳下の弟は言う。 「122パウンドへの転向を決め、兄の体は本当に大きくなりました。本人も以前から『スーパーバンタムに上げたほうが、自分の能力を生かせると思う』と話していましたが、実際、物凄くパワーがつきましたよ。ミット打ちでパンチを受けていると、僕が手首や腕を痛めてしまうほどです。スピードも増しました」 中谷が井上に招かれ、名古屋に向かったのは、プライベートジムのオープンとほぼ同じ時期だ。リングサイドの最前列で、自分と同じサウスポーの挑戦者、ムロジョン・アフマダリエフ(30)にモンスターが判定勝ちする様を凝視した。 「井上選手はいろんなタイミングで手が出せるなと思いながら目にしました。自分だったらこんな風に戦う、こう躱(かわ)す、というイメージが自然に湧いてきて、客席で体が動いてしまいました(笑)。間違いなく僕のキャリアで最強の相手ですし、自分が試される一戦になるでしょう。 井上選手は接近したり、距離を取ったりと、出入りするボクシングです。アフマダリエフ戦は、その気になればノックアウトできた筈ですよ。敢えてセーブしていることが、僕には分かりました。相手の一発を警戒したからこその戦い方でしたね。そこに彼の強さを見ました。すべてを超えることが、自分の仕事です」 中谷はモンスター、いや今日の自分を超えるため、日米2つの″虎の穴″で己を鍛え抜く。 10月23日発売の『FRIDAY 11月7日号』と有料版『FRIDAY GOLD』では プライベートジムのこだわりポイント、練習内容からスーパーバンタムに上げてからの身体の変化、来る井上尚弥戦の対策などを赤裸々に語っている。 『FRIDAY』2025年11月7日号より
27 October 2025
見取り図 森山晋太郎さん(39歳) 「見取り図」盛山晋太郎さん(撮影)田附勝 「見取り図」は漫才・コント・バラエティー番組…走攻守揃った万能プレーヤー 今月、初エッセー「しばけるもんならしばきたい」を刊行して話題の芸人、盛山晋太郎さん。ブレークするまでのバイト地獄を語ってくれた。 ◇ ◇ ◇ 20代は恐ろしいくらいにバイトをしていました。日雇いも含めると20種類くらい。お寿司屋さんのデリバリー、キャバクラのボーイ、ダイニングバー、スーパー。いろんなところに勤めては失敗していました。 キャバクラではシャンパンタワーみたいなお酒が入ったグラスの山をひっくり返したこともあります。弁償できないのでさすがに勘弁してもらいました。 ダーツバーではおじさんのお客さんをダーツで接待しないといけない。店長からは「気持ちよく勝たせてあげて」と言われていたのに、ダーツブル(ボードの中心)に3回入れちゃったんですよ。ハットトリックです。今までそんなことできなかったのに。それで常連客を逃してしまったり。 食べ物屋さんは中華料理屋、定食屋などいろいろと。うどん屋さんでは料理人として入ったら左利きというだけでクビになりました。「おまえ左利きかい! なんでおまえのために調理器具を左利き用一式揃えなあかんねん」と。クビにタトゥーが入った怖い店長でした。 でも、クビになって辞めたことは案外少ないんです。芸人同士のつながりでバイトを紹介してもらったりするので。芸人にとっての優先事項は時給より「融通」です。急に芸人の仕事が入っても融通が利いて休めるバイト。それか仕事の時間に影響がない夜中の仕事になっちゃうんですよね。でも、夜職は同じ仕事が続くと「水商売のにおいが染みつくからやめといたほうがええ」と昔からよく聞きますよね。それもあって転々としていました。 バイトじゃないですけど、犬の散歩でご飯食べさせてもらったこともあります。若手の時によく行った喫茶店に常連のおばあさんがいて、レトリバーくらいに大きな犬を飼っていて、「自分は足腰が悪いから散歩させてくれたら定食をごちそうしてあげる」と。それで何度か散歩させて定食を食べさせてもらいました。僕、犬が好きだったんでちゃんと散歩させましたけど、1時間散歩させて定食1回って割に合わないんじゃないかと(笑)。 貧乏ピーク時、通いでトランクルームに住んだことも 「見取り図」盛山晋太郎さん(撮影)田附勝 スーパー銭湯では夜中の2時から清掃のバイトをやりました。そんな時間から働くのがしんどくて、勝手に水風呂入って目を覚まさせてから清掃を始めていました。 インターネットのサービスについてのテレアポもやっていました。マニュアルがあるんですけど、正直あまり理解できなくて。こう聞かれたらこう答えるなどのガイドラインがあるのに、電話中にわからなくなり、「すみません。このシステムは自分でもちょっとわからないんですけど、お得みたいなので、契約していただけるかどうかだけお伺いしていいですか」と聞いたことがありました。すると、「おまえ、なめてんのか!」と怒鳴られました。 僕は失敗が多くて「メモを取れ」とよく言われてましたが、書いた字が汚くて読めなかったり、そもそもメモをどこに置いたかわからなくなったりで。 ゲームセンターでも働きました。小さいゲーセンなので、僕が預かったカギで10時に開店させて昼過ぎまで1人でいるんですけど、寝坊して昼の2時まで寝ていた日がありました。店長は店が営業していると思っているわけですから、これって業務妨害ですかね。僕が経営者だったらこんなバイトはしばきたいです。 一番お金がよかったのは、やっぱりキャバクラのボーイかな。夜中の労働ですから。でも、大阪の郊外の店だったので、時給は1300円か1400円でしたよ。 借金があったので本当に貧乏でしたね。たばこが好きなので、シケモクを拾って吸っていました。大阪はありがたいことにシケモクがよく落ちていて、今まででワンカートン以上は拾ったんじゃないですかね。いい町の吸い殻は長め。でも、僕はお店の吸い殻には手を出さなかった。なんのプライドやねんと(笑)。道端のシケモクを拾うと町が奇麗になっているという大義名分が成り立つかなと。でも、しょっちゅうではなく、貧乏のピーク時の話です。 ピーク時はトランクルームに住んだこともあります。といっても、通いでたまに居ただけです。テレビでこの話をしたら叱られまして。住んではいけないわけですからね。でも、間違いなく住んでいる人はいました。扉に隙間がちょっとあってチラッと見たら洗濯物干してありましたから。 33歳で借金を完済し、体の大きなしこりを除去した感じ 盛山晋太郎著「しばけるもんならしばきたい」 借金があって地獄の日々でした。2018年にM-1グランプリ決勝に出て忙しくなり、翌年の33歳くらいで借金を完済した時には体の大きなしこりを除去した感じです。すごく自信になりました。それから6年経って「もしあの頃のバイト生活が今も続いていたら、自分はいったいどうなってしまっただろう」と思うと怖くなります。なかなか社会に適応できない人間だったので、想像するとゾッとします。 いろんな失敗や近年の出来事などを書いて連載させてもらったものが本になりました。 多くの人に楽しんで読んでほしい。連載は書くのがつらい時もあり、終わった時は二度と文章を書くことはないと思いましたが、また熱いサウナに入りたくなるみたいに、エッセーを書いてみたくなっています。エッセーの意味はまだよくわからないんですが(笑)。 (聞き手=松野大介) ▽盛山晋太郎(もりやま・しんたろう)1986年1月、大阪府出身。リリーとのお笑いコンビ見取り図で「M-1グランプリ2018」から3年連続で決勝進出し、人気に。「見取り図の間取り図ミステリー」「見取り図じゃん」などレギュラー番組多数。 ◇初エッセー「しばけるもんならしばきたい」(幻冬舎)発売中。