日韓関係改善の裏で 母娘を襲ったソウル東大門飲酒事故の悲劇

握手する高市首相(左)と韓国の李在明大統領=30日、韓国・慶州(共同)
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韓国・慶州での日韓首脳会談で関係改善が進む中、ソウルでの日本人母娘の飲酒運転事故が影を落としています。事故は泥酔状態の韓国人男性によるもので、母親が死亡、娘が重傷を負いました。この悲劇が安全な交流の契機となるかが問われています。また、韓国人俳優チェ・ジョンヒョプが日本のドラマで初めてヒロインの相手役に起用され、文化交流の重要性が強調されています。観光時の安全対策も重要です。

10月30日、韓国・慶州で開かれた日韓首脳会談で、高市早苗首相と韓国の李在明大統領が「未来志向で安定的に発展させること」で一致するなど、日韓関係の改善が進んでいる。すでに、経済・文化交流は活発化で、2025年上半期の訪韓日本人観光客数は「前年比20%増」を記録(韓国観光公社)した。そうした中、韓国のソウル・東大門で起きた日本人母娘飲酒運転事故は、友好の「光」の裏に潜む「影」を露わにしている。この悲劇は、日韓が共に安全な交流を築く契機になるのか。

賑わう東大門交差点で起きた痛ましい交通事故

事故は11月2日午後10時頃、ソウル東大門の賑やかな交差点で発生している。「日本人母娘(母58歳、娘38歳)が青信号の横断歩道を渡ろうとした瞬間、白い乗用車が猛スピードで突っ込んだ」(聯合ニュース)。

現地報道によると、車は信号を無視し、ガードポールをなぎ倒して歩道に侵入し、生け垣を越えて母娘を直撃している。母親は即死状態で病院に運ばれたが死亡が確認され、娘は膝の骨折を含む重傷を負っている。MBCニュースなどによると、現場には「化粧品の領収書が散乱」し、平和なショッピングの余韻を痛々しく物語っていたという。

中央日報によると、加害者は30代の韓国人男性であり、「どうやってここに来たかわからない」と供述するほどの泥酔状態だった。血中アルコール濃度は「免許取消基準(0.03%)を大幅に超え」、焼酎3本以上を飲んでいたとみられている。警察は飲酒運転に加え、信号無視・速度超過による「危険運転致死傷」の疑いで逮捕状を請求した。

「Eye love you」ロケ地への途上で断たれた命

SNS上では、この痛ましい事故のしばらく後、亡くなった女性の家族とみられる投稿主が、Threadsで事故のてんまつを次のように赤裸々に綴っている。

事故にあった母はEye love youと言うドラマの撮影地になったナクサン公園に行きたいと以前から言っていたようで先程、姉から聞き知りました。ナクサン公園付近の交差点の写真をLINEの背景にするほど好きで行きたかったようです。事故にあった場所が公園の手前の交差点で、公園に向かってる途中だったので、辿り着くことが出来ませんでした。落ち着いたら必ず連れていくから。ほんまに飲酒運転は軽く許されて良い訳ない

ドラマ「Eye love you」(アイ ラブ ユー)はTBS系で2024年1~3月に放送。ヒロイン(二階堂ふみ)の相手役に初めて韓国人俳優(チェ・ジョンヒョプ)が起用され話題を呼んだ。心の声が聞こえるテレパスを持つ女性が、年下の韓国人留学生と恋をするファンタジックなラブストーリーだ。

韓国観光公社公式サイト「VISITKOREA」にも「地下鉄で行く!ドラマ『Eye Love You』ソウルロケ地」のガイドが掲載されるほど人気がある。

Threadsの投稿主が“なりすまし”かどうか、ただす書き込みもあったが、知人らが証言する流れとなっている。韓国からは日本語、ハングルそれぞれで、「韓国人ですが、とても心が痛いです」「申しわけございません。韓国も飲酒運転は軽い罪ではないので、ご心配しないでください」など、陳謝する書き込みもみられた。

「飲酒事故は日本の6倍以上」韓国旅行の現実と注意点

韓国の社会事情に詳しいジャーナリストは、「韓国の飲酒文化は深く、韓国ドラマ、韓国映画でも杯を酌み交わす場面はよく登場します。その一方で、韓国の警察当局が発表した2020〜2024年の5年間で飲酒運転事故は7万件超、死者約1,000人にのぼり、人口が日本の半分程度であることを考えると、事故件数は6倍以上といわれています」と実情を語る。

近年のソウルは夜の繁華街も比較的治安が良いが、先のジャーナリストが観光に訪れた際の注意点を次のように喚起する。

「21時以降の横断歩道では青信号でも左右確認が必須です。タクシーも『Kakao Tアプリ』など車番・運転手が記録された安全なものを選んでください。万一に備えて、海外旅行保険も必ず加入しましょう」

高市首相も所信表明で「韓国ドラマ」好きであることを明かしている。映画、K-POP、グルメ、コスメ——魅力的であるからこそ、互いに「問題点」を共有し、「知る」ことが、お互いを「守る」ことにつながる。