【ドミニク 孤高の反逆者】ウクライナの女兵士が南米のワルどもをゲリラ戦で撃退

TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中/配給:彩プロ

(C)2023 DOMINIQUE THE MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

不思議なことだが、美女と拳銃のマッチングは映画映えする。か弱いはずの女が武器を手に取ると、男よりもカッコよく見えてくるのだ。この「ドミニク 孤高の反逆者」の主人公はピストルだけでなく機関銃をバンバン撃って悪人どもを成敗。見ていて胸がスカッとする。米国とコロンビアの合作だ。

南米コロンビアの小さな町に流れ着いたウクライナの女ドミニク(オクサナ・オルラン)。現地で肌を交えた警官フリオ( セバスティアン・カルヴァハル)とその家族との平穏な日常は長くは続かなかった。

腐敗した警察と麻薬カルテルによってフリオが惨殺され、非力な家族に危機が迫る時、ドミニクは封印していた戦闘スキルを発動させる。無法地帯を舞台に正体不明のグリンガ(よそ者の白人女)と警察&麻薬カルテル連合軍の壮絶な戦いが展開するのだ。

冒頭からショッキングだ。飛行機の不時着現場でドミニクがスピーディーな立ち回りを見せて麻薬カルテルのワルどもを瞬殺。「R15+」指定の血なまぐさい光景に「この女、一体何者?」と引き込まれてしまう。冷酷無比な女かと思ったら実は情け深い性格で、正義感の強いフリオが殺されるや、町を立ち去るつもりだったが、彼の家族のためにこの地にとどまる。

その先にあるのは家に立てこもっての銃撃戦だ。敵は全身を重武装した悪徳警官の軍団。こちらは今にも赤ん坊を生み落としそうな妊婦と年端のいかない子供たちの貧しい家族。しかも残された銃弾はほんのわずかだ。この戦いに勝つにはゲリラ戦しかない。ドミニクは奇想天外な手口を使って敵を撹乱し、なぎ倒してゆく。なるほど、こういう戦闘手段もあったかと感心させられる展開だ。

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このドミニクがウクライナ人という設定もミソだ。独裁者プーチンによる侵略と戦っているウクライナの兵士とヒロインがダブって見える。実際、ドミニクを演じたオクサナ・オルランはウクライナ系米国人の女優兼モデルである。製作者は意図的にオルランをキャスティングしたのだろう。悪党どもに銃弾を撃ち込む姿は痛快。敵は南米人だが、「頑張れウクライナ!」と乗り出してしまう。

ちなみにオルランは1983年生まれの42歳で、身長180㌢の堂々たる体格。しかも武術の訓練を受けているという。道理で空手の形がさまになっているわけだ。中年の域に達した美女の大暴れをたっぷり味わってほしい。

ネタバレになるのであまり書けないが、本作の結末は意外性をはらんでいる。通常のドンパチものの爽快感と違うエンディングに侵略戦争の悲劇が色濃く投影されているのだ。そう考えると単なる活劇ではなく、社会派ドラマの要素も漂っている。残念ながら、世界は容易に平和にならないようだ。

(文=森田健司)