
ピュアだった玉木氏
自民党の高市早苗総裁(64)が憲政史上初の女性首相に選出された10月21日、国民民主党の玉木雄一郎代表(56)はJR新橋駅前のSL広場で街頭演説を行い、こう絶叫した。
「ブレてないんです!」
「いっぱい批判してくれ!」
公明党の連立離脱による政局で一時は「次の首相」と目されたが、日本維新の会の“出し抜き”を食らい、玉木氏はいまや“天下を獲り損ねた男”扱いだ。ネット上では優柔不断な姿勢を指して「玉木る」などの造語も生まれた。
それでも玉木氏は前を向く。街頭演説では
「皆さんのために何がベストなのか。そのベストな答えを一緒にできる政党と組んでいく。時によってその相手は変わるかもしれない。それをブレていると言う人がいるかもしれませんが、ブレてないんです!」
と猛反論。その上で
「批判するのだったら、いっぱい批判してくれ! それで皆さんの暮らしが良くなるのだったら、堂々とその批判は受けたいと思う」
と絶叫した。
玉木氏は何度も街頭演説を行ったSL広場で
「もう1回、原点に戻ろうと。榛葉(賀津也幹事長)と言いながらここに来た。初心を忘れることなく、これからも仲間と一緒に頑張っていきたい」
と力強く語った。
玉木氏は最後まで“組む相手”に政策の一致を要求した。
憲法解釈や原発、安全保障で意見の異なる立憲民主党にもそれを求めたが、案の定、協議は決裂した。その間に維新と自民が急接近し、気づけば自維連立政権が出来上がっていた。同氏は
「(維新に)二枚舌みたいな感じで扱われて、我々としては残念」
とグチったが、後の祭り。支持者の落胆も大きく、批判も巻き起こった。
そんな玉木氏に、ある永田町関係者は取材に対して、
「一言でいうなら、玉木さんはまだ青く、ピュアだった。これから組む相手に重要分野での政策の一致を求めるのは、正しい。しかし、それだけでは太刀打ちできないのが永田町。維新を見てくださいよ。“身を切る改革”でコストカットしてきた政党が、裏金問題で騒がれた自民党と組むんですよ。本来ならその部分は水と油でなければおかしいはずなのに……。玉木さんは“もう一度順番が回ってくる”と信じて、頑張るしかないでしょうね」
と政界の“怖さ”を明かす。
高市政権と被るガソリン減税や成長戦略
とはいえ、玉木氏の勢いに陰りが見え始めているのも事実。なかには昨年の東京都知事選で旋風を巻き起こした石丸伸二氏(43)と重ねる声も上がっている。
「熱量は似ている。国民民主も『手取りを増やす』のキャッチコピーがウケて、一気に支持を拡大していった。人気が出るにつれ、これまで少数だった担当記者の数がどんどん増えていった。公明離脱後の政局では、玉木氏の行く先にマスコミが大挙押し寄せた。カメラ映りを気にするなど、悦に入っていた部分はあったかもしれない」(全国紙政治担当記者)
読売新聞社は10月21~22日に行った緊急全国世論調査で、国民民主党の支持率が4%減の5%となったと報じた。“総理の座”を躊躇したことで、支持率がほぼ半減してしまった格好だ。
政治評論家の有馬晴海氏も厳しい見方を示す。本サイトの取材に
「失速するとは言い切れませんが、国民はチャンスに決断できなかった玉木氏に厳しい評価を下している。長く政党をやっていると、器量を問われる場面が出てきて、納得しないと支持を落とします。今回は国民民主党がステージを上げるチャンスだったのに、それが『玉木さんが自信がなかったから』と言われ、支持者からも“そうなんだ”と思われてしまった。国民が失望し、飽きられ見放されてしまうと、支持率を回復するのは、なかなか難しいことですよ」
と話す。
起死回生を果たすには、次期衆院選で旋風を巻き起こし、議席を大幅に積み増すしかない。高市政権とはガソリン減税や成長戦略などで重なる部分も多いが、今さら「仲間に入れて~」というわけにはいかないだろう。国民民主党関係者に話を聞くと、
「玉木代表の言うように高市政権とは政策ごとに協力していく。まずは党が掲げる“年収の壁”の引き上げを強く訴えていく。同時に次の選挙を念頭に、候補者の選定も行わなければならない。一部では年明け解散もウワサされているが、次期衆院選は予算を伴う法案や内閣不信任決議案を単独で提出できる51議席以上が最低でも必要です。比例代表の得票数は前回から1.5倍の900万票を目指す。それが実現できれば、流れはまた変わってくる」
と明かす。玉木氏の逆襲は成功するか。それともただの“皮算用”になってしまうのか――。