徹底分析して分かった!視覚効果も注視度を高める要素?お笑い芸人「クギづけ度ランキング」大公開!!


寺家「(サグラダ・ファミリアは)140年工事しているけど未完成なんや」

エース「なんでスペインまで行って工事現場見なあかんの? 人足りてないから働かせようとしてるやろ。途中見て楽しいのは、お餅焼いている時だけ!」

これは『M-1グランプリ 2024』(テレビ朝日系)の最終決戦で、お笑いコンビ『バッテリィズ』が披露(ひろう)したネタの一部だ。サグラダ・ファミリアなどの世界遺産を紹介するボケ役の寺家に対し、「無知」なエースがツッコむ。二人の軽妙なやり取りが、視聴者をクギづけにした。テレビの視聴データ分析会社『REVISIO』(以下、R社)の広報/マーケティング担当の安武早織氏が語る。

「最近は高学歴の芸人が考えた、知的でキレイにまとまったネタが多くなっています。『バッテリィズ』が披露するのは、そうした洗練さと一線を画す漫才。無知を前面に出した絶妙なトークが、視聴者の視線を逸(そ)らさせないんです」

前編『M-1』『キングオブコント』『THE SECOND』…【賞レースを徹底分析して分かった!】

「1本目がウケると2本目は」

R社は番組としてのクギづけ度が高い『M-1』と『キングオブコント』に関して、ネタごとの注視度も調査している。上位30組をランキングにした(「演目」は仮)。1位は冒頭で紹介した『バッテリィズ』。2位は『M-1 2023』で、最終決戦に進出した『ヤーレンズ』だった。

「映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』にかけた、『麺ジャミン・バトン スープなラーメン』という店名のラーメン屋のヤバいサービスを軽妙に説明しています。1本目のネタが面白いと、2本目はさらにクギづけ度が上がる傾向がある。『ヤーレンズ』は、同じレースの1本目で披露した『お引っ越し』(17位)というネタが会場でウケて、2本目が2位に入りました。1位の『バッテリィズ』も、同じレースの1本目(26位『偉人の名言』)が高く評価されて最終決戦に進出しているんです」(同前)

軽妙なトークに加え、芸人のビジュアルや演出など視覚効果も注視度を高める要素だという。R社のマーケティングチームマネージャー三橋洸輝氏が話す。

「3位の『M-1 2022』ファーストラウンドに出場した『ヨネダ2000』は、大柄な愛と小柄な誠という対照的な女性のコンビです。『餅つき』は、なぜかイギリスで餅をつくというネタ。『ぺったんこー』『あーい!』という、ノリノリなリズムに思わず目が向いてしまいます」

4位の『キングオブコント 2024』1stステージに出場した『ニッポンの社長』は、豪華なセットが視聴者の注視度を高めたとされる。三橋氏が続ける。

「『新入部員』というネタで、バットケースやベンチなど野球部の練習場が再現されています。『声が小さい!』と監督に怒鳴られながら、ノックを受ける新入部員の素早い動きにも目を奪われる。一方で、しゃべりが秀逸でも視覚的要素の薄い芸人は上位に来ない傾向があります。画面を見なくても聞いていれば面白さがわかりますから。『M-1 2022』で優勝した『ウエストランド』などがランキング外なのは、そのためでしょう」

お笑いに詳しい、芸能記者の中西正男氏が解説する。

「賞レースごとの注目度を見ると『THE SECOND』が3位に入っているのが興味深い。出場しているのは、結成16年以上でブレイクできない漫才師です。苦労人には深みがあります。視聴者はネタを楽しみながら、芸人の生き方やドラマにも共感しているのかもしれません」

経歴や表現方法により、賞レースも細分化されつつある。お笑いでは、芸人の生きざまが見られているのだろう。

2位『ヤーレンズ』 M-1グランプリ2023 最終決戦  ’11年9月に結成。左がサザンオールスターズ好きのボケ担当・楢原真樹。右が剣道初段のツッコミ担当・出井隼之介
3位『ヨネダ2000』 M-1グランプリ2022 ファーストラウンド 解散などを経て’20年4月に再結成。左がハーモニカが特技だというボケ担当の誠。右がツッコミ担当で動物好きの愛
4位『ニッポンの社長』 キングオブコント2024 1stステージ ’13年11月に結成。右がツッコミのケツ。左がボケの辻皓平。今年7月の『ダブルインパクト』(日テレ系)で優勝直後に撮影
6位『令和ロマン』 M-1グランプリ2024 最終決戦 ″大物″として注視度6位と8位に入った。左がボケの高比良くるま。右がツッコミの松井ケムリ。二人とも慶応大出身

「お笑い賞レース&芸人」測定法

テレビの前の人々がどれだけ画面を見ているかをR社が独自に調査したのが「クギづけ度」(注視度/注目度)。注視度は画面を見ていた秒数、注目度は画面を見ていた人数を基準に測定している。料理などの作業をしながらの「ながら見」では、画面が見られていないことが多いのでクギづけ度は上がらない。関東で2000世帯(約4800人)、関西で600世帯(約1500人)ほどの協力を受け、視聴者がどのお笑い賞レースやお笑い芸人にクギづけとなったかを独自調査。賞レースは世代別、お笑い芸人は視聴者の注目度が高い『M−1』と『キングオブコント』の’22〜’24年の決勝戦出場者を対象に分析した。「世帯テレビオン率」は視聴率のことを指す

『FRIDAY』2025年10月24・31日合併号より