酒飲みながらゲーム配信してたら“膵臓が爆発”でICU行き、全身パンパンの水風船と化した自分に「マジで死ぬよ」と医師が宣告

Thumbnail

酒に酔っている状態が一番幸せで、少しでも長く酔った状態のまま生きて、やがて死んでいくのが最高の人生だと信じていた「酔っ払いゲーム実況者」たろちん氏。しかし、ある日突然、医師に「マジで死ぬよ」と言われてしまう事態に。彼に何が起きたのか。

『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』より、一部抜粋、再構成してお届けする。

さらなる転院、ICUへ

重症急性膵炎は膵臓だけでなく、体のあちこちに影響が出る病気だ。僕の場合はまず腎臓がダメになった。腎臓がおしまいになるとおしっこが出なくなり、おしっこが出ないと体に水が溜まり、そうすると血液に老廃物が溜まり……とコンボが決まっていき、やがて全身がむくみでパンパンになった水風船人間が完成する。当時の私です。

自分で血液をきれいにできないので人工透析が必要になる。人工透析というのは腎臓の代わりに機械で血液をろ過する治療。1回何時間もかかる上に、病気によっては週に何回もこれをやらないと死んじゃうみたいなことでも知られる大変なアレだ。

「どうせ1日中寝てるんだから数時間透析をしようがしまいがあんま変わんないんじゃない?」と思う人もいるかもしれない。ところが血を出したり入れたりするだけで人間というのは相当体力を消耗するらしく、同じ寝たきりでも透析をした日はかなりクタクタになった。

また、栄養をとるためには大量輸液をしなければならないが、おしっこが出ないので肺の周りにまで水が溜まってしまい、そうなると自力で呼吸ができないので人工呼吸器も必要になる。あっちを立てればこっちが立たず状態。

とにかく膵臓を休ませるために絶飲絶食をして、あとは輸液で栄養を補給しながら自力での回復を待つ、というのが急性膵炎の基本的な治療だ。ただ、重症すぎると自力で回復する前に体の他の部分がダメになっていってしまう。そうすると最悪死ぬ。当時の私です。

死んだら困るので呼吸器や透析機器があるICUで全身管理を行う必要がある。まあそれでも死ぬかもしれんけど、という状況。

ということで入院から3日目の午後、バタバタと転院の手続きが始まった。

2日ぶり3度目の救急車に乗せられる。救急車の中で妻が長年一緒にラジオ配信をやっている相棒のイボーンさんに電話をかけてくれた。あとで妻に聞いたら「自分が話すと泣きそうだったので仲のいい友達としゃべってもらうほうがいいと思った」とのこと。

ヘロヘロの状態ながら多少会話ができ、「なんでICUに入る直前に妻じゃなくおっさんとしゃべってるんだ?」という状況のシュールさにちょっと笑った。

ICUにはスマホの持ち込みができないためその場でロックを外して妻に渡した。入院直後からスマホを触る力はほぼ残っていなかったので、必要な連絡などは妻に代行してもらうしかない。ここから数カ月に渡って僕は外部の情報から遮断されることになる。

このときは痛みと苦しみの無間地獄で完全にグロッキーになっており、「なんでもいいから楽にしてくれ」という気持ちだった。そういう意味では大病院に転院になったことはかなりありがたかったといえる。

夢と幻覚の区別がつかないアッパラパー人間に

病院に到着するとすぐに鎮静剤をぶちこまれ、ようやく深い眠りにつくことができた。痛みで3日間ほとんど眠れなかったので心の底からほっとした。眠りに落ちる直前、医師から「マジでもう酒やめな。死ぬよ」と言われたことを覚えている。

この後しばらく、僕は薬の影響などでかなり意識や記憶がぐちゃぐちゃになっている。端的に言うとせん妄状態――要するに夢と幻覚の区別がつかないアッパラパー人間になった。

そのあたりは後述するとして、いったん転院後の僕の状態について書こうと思う。

ICUに運ばれた直後、妻は救急救命医から「非常に危ない状態で死ぬ可能性もある。入院は1カ月じゃ済まない。半年くらい入院する人もいる病気です」と言われたそうだ。さすがに妻もそこまでとは思っておらず、かなりショックを受けたという。

そんなことはなんにも知らない僕はまだ「来月には退院して年末年始はちょっとくらいお酒飲めるようになるかな」などと考えていた。

とにかく痛みがヤバいため、鎮静剤を使ってかなりの時間を眠って過ごした。痛みで起きてしまう時間もあったが、ICUでは24時間体制で看護師が管理をしてくれており、耐え切れなくなってナースコールをするとめちゃめちゃ親身になってなんとかしてくれようとする。「誰かが見ていてくれる」「なんらかの処置をしてくれる」ということがものすごく精神的な安心感につながった。

ICUに入って数日後、もはや何時に寝て何時に起きているのか自分でもわからなくなっていたが、目を覚ますと病室にたくさんの寄せ書きや写真が飾ってあった。

オンライン寄せ書きサービスで作った色紙には約40人のメッセージがびっしりと印刷されており、ボードには僕も忘れていたような10年以上前の写真も貼られている。妻が知らないはずの懐かしい名前や姿があることに驚いた。

既に管まみれで身動きが取れず、口に呼吸器を挿されて会話もできなくなってしまった僕を励まそうと、妻が家族や友人に声をかけて大急ぎで作ってくれたものだという。

面会謝絶のため顔を見ることも声を聞くこともできない状態だったが、その気持ちが何よりも励みになった。

文/たろちん

『毎日酒を飲みながらゲーム実況してたら膵臓が爆発して何度も死にかけた話』(太田出版)

たろちん (著)

2025/10/16

1,980円(税込)

202ページ

ISBN: 978-4778340971

・月ノ美兎 推薦!
「人生で一番好きなゲーム実況者が気づいたら逝きかけてました」

みなさんにはどうか僕を反面教師として死ぬまで元気に酒を飲み続けてほしい――

突如膵臓が爆発、転院に次ぐ転院、2カ月以上続く絶飲絶食、院内大量殺人事件に巻き込まれる(という幻覚)、お腹の上に出しっ放しになった腸、脳出血で昏睡状態へ……波乱万丈の闘病生活を経験した酔っ払いゲーム実況者・たろちんによる“アル中”エッセイ。

膵臓の一部が壊死し、腎臓や肝臓といった様々な臓器不全を引き起こすなど致死率の高い疾患といわれる重症急性膵炎。「生きるために一生懸命酒を飲んでいた」というたろちんが、ジェットコースターのように次々とハプニングが発生する入院生活と、そこに至るまでの飲酒生活、そして退院後に待ち受けていたさらなる困難を、痛快でコミカルなタッチで綴る。

『はぐちさん』作者・くらっぺによる描き下ろし8コマ漫画も収録!