安福久美子容疑者に「長女病死で何が」動機探る、名古屋主婦殺害

安福久美子容疑者(高校の卒業アルバムから)
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1999年の名古屋市西区主婦殺害事件で、安福久美子容疑者が2025年に逮捕されました。動機は不明ですが、嫉妬や家庭環境が関連している可能性があります。被害者の夫・悟さんは、事件現場を26年間借り続け、犯人逮捕を求めていました。2010年の時効撤廃が事件解決に寄与しました。

1999(平成11)年11月13日の事件発生から約26年経って急転直下の逮捕劇に至った「名古屋市西区主婦殺害事件」は、被疑者の動機こそ明らかになっていないものの、嫉妬や家庭環境など動機に関連した可能性があるさまざまな事情が浮かび上がってきている。

2025年10月31日、殺人容疑で愛知県警に逮捕されたのは、名古屋市港区のアルバイト、安福久美子(やすふくくみこ)容疑者(69)=旧姓は山口=で、今週発売の週刊文春では、名古屋大学卒で一流自動車部品メーカー勤務のエリートの夫がいることが報じられた。

また、安福夫妻の間には、子供が3人(長女、長男、次男)いたが、名古屋主婦殺害事件の10ほど前、幼稚園に通っていた、幼い長女が重い血液の病気を患っていた時に亡くなっていたことを7日配信の中日新聞が報じた。

捜査関係者の話として、安福容疑者は事件当時、生活関連商品を製造・販売する名古屋市内の会社で事務の仕事をしており、事件後も男児2人を育てながら同じ職場に勤務していたという内容も伝えられた。

この件は7日午後放送の情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(TBS系)でも取り上げられ、元衆院議員のタレント、金子恵美氏(47)は、「私は正直、その容疑者のお子さんが亡くなったとしても同情の余地はないと思います」「本人も2人の子供がいて親でありながら、当時2歳だった男の子から親を奪うなんてこと、どうしてそんなことができるのか理解できませんから」と苦言を呈した。

金子恵美氏

また、金子氏は安福容疑者の動機について、「そういう状況でありながらも、犯行に至ってしまうその動機が気になってしまうところですよね」とコメントした。

近所の男性の証言として、安福容疑者が親族から長女を亡くしたことをひどく叱責され、落ち込んでいたことを聞いたという内容のほか、同居する親族との折り合いが悪いことから、逮捕時と同じ戸建てから近くのマンションに引っ越したとも報じられている。

安福容疑者は犯行現場からも近い名古屋市内に住み続けており、10年ほど前に港区内のマンションから逮捕時の戸建て住宅に家族で引っ越してきたとされる。最近は市内の大型スーパーで事務員の仕事をしていたほか、PTAの役員も務めていたとされる。周辺住民からは、「優しいお母さんというイメージ」という評判もあり、逮捕を受けて、「信じられない」と驚きの声が上がっている。捜査本部は安福容疑者が事件への関与を家族にも明かさず過ごしていたとみて調べている。

安福容疑者に対する容疑は、1999(平成11)年11月13日、主婦、高羽奈美子(たかばなみこ)さん=当時(32)=が住んでいた名古屋市西区のアパートで、奈美子さんの首などを刃物で複数回刺すなどして死亡させたという内容。奈美子さんの死因は失血死で、事件当時、奈美子さんの夫・悟(さとる)さん(69)は不在だった。

被害者の奈美子さんと安福容疑者の間に面識がなかったことが一因となり、警察は当初、奈美子さんの関係者を調べたが捜査が難航。被疑者逮捕まで約26年間もかかった。

安福容疑者と面識があったのは、夫・悟さんの方で、安福容疑者と悟さんは、高校の同級生で同じソフトテニス部所属だった。そして安福容疑者は、悟さんへの異様な執着ぶりも明らかになっている。7日には、安福容疑者が、「学生時代に好意があった」と供述していることも捜査関係者への取材で分かった。愛知県警西署捜査本部はこうした家庭環境や背景の、事件との関連や動機を調べている。

安福容疑者の、悟さんへの執着をうかがわせる出来事は、高校時代からあった。安福容疑者は悟さんに好意を寄せ告白したが、悟さんは交際を断り、悟さんは、安福容疑者から「好きです」と書かれた手紙をもらったほか、バレンタインデーにチョコを贈られたこともあったというのだ。

大学卒業後には、佐藤さんへの好意を抑えられなかったのかトラブルに発展していた。文春によると、悟さんは高校卒業後、私立愛知大学に進学し、安福は1浪した後に愛知県立大学に入学した。

別々の大学に進んだが、安福容疑者は、悟さんが出場する大学の部活動の試合を、友人を連れて見に行っていたほか、悟さんが通う豊橋市内の大学キャンパス近くに一方的に押しかけていたというのだ。

悟さんによると、大学のテニス部の練習終了後に安福容疑者が連絡なく、テニスコートで待ち伏せしていた。悟さんは安福容疑者に「待たれるのは困る」との趣旨を伝えた。悟さんは、安福容疑者が、「(大学まで)追いかけてきて僕の帰りを待って、近づいてきて声をかけて」と説明し、「喫茶店に連れて行って泣かれて大変だった」と振り返った。安福容疑者はこの時、受験浪人中の身だったとされる。

悟さんは3日夜の共同通信のインタビューで、安福容疑者の大学押しかけ騒動などについて、「待ち伏せです、結局私は豊橋まで来られて、僕ら大会のクラブとしては神聖な場所だから、そんな女性がしょっちゅう僕の帰りを待つなんていうナンパみたいなことは許される雰囲気じゃない中で厳しい中でやってるから。だから彼女はここまでしてきたのにそんなこと言われてて悲しくなったんじゃないですか」と語った。

そして1999年11月の事件の5カ月前には、悟さんと安福容疑者は高校のソフトテニス部のOB会で再会し、悟さんはこの時、安福容疑者に、「若い嫁さんもらって子どもが生まれた」と、結婚して子どもがいると伝えていた。

また、安福容疑者は、「私も頑張って、仕事しながら主婦業をしている」と話していたという。悟さんはこの時の安福容疑者が以前よりも明るくなった印象だったとメディアの取材にで明かしている。

ただ、この5カ月後に事件は起きた。〝伝説の落とし屋〟の異名をとった警視庁捜査1課の元警部補で、いわゆる「木原事件」の2018年の再捜査に取調官として携わった佐藤誠氏は、この同窓会での再会が影響して、安福容疑者を凶行に走らせたのではないかとの見解を示した。佐藤氏が2日、自身のユーチューブチャンネルで行った生配信の中で語った主な内容は次の通り。

【時効撤廃してよかった】

松島みどり衆院議員

26年前、名古屋市で起きた女性殺害事件の容疑者が31日逮捕された報道を見て、「殺人事件の時効を撤廃してよかった」と、つくづく思いました。この事件が起きた当時の殺人の時効は25年で、もし、それが今でも続いていたら、すでに捜査は終了していたのですから。

私は、若手議員だった2000年代半ば、犯罪被害者政策に取り組みましたが、殺人やひき逃げなどの遺族の方々や、性犯罪の被害者の方々が「私たちの苦しみはいつまでも続くのに、時効のせいで捜査が終了し、加害者が罰せられないのは許せない」と、非痛な声を上げられるのを、その通りだと思い、法律改正に向けて動きました。それが、犯罪の種類によって時効を延ばし、殺人罪と強盗致死罪については、時効を撤廃する刑法改正(2010年)につながりました。

夫、悟さんの事件解決への執念に近い思いが結実したのだと、心を打たれました。悲劇の現場だったアパートを、「玄関の血痕が犯人のものだったら、現場検証の際の重要な証拠になるだろう」と、考えて26年間借り続け、事件当時のままにしておいたのです。家賃は総額2,200万円にのぼりました。

殺人事件の被害者遺族のグループの一員として、時効撤廃を求める活動を続けるとともに、近くの駅などで犯人の情報提供を呼びかけるチラシ配りを続けました。

犯人逮捕の一報を警察から受け取った時、「これでもうチラシ配りをしなくて済むと安堵した」と言う言葉が印象的でした。

その後、犯人が、高校時代に自分に思いを寄せていた同級生、テニス部仲間と知り、愕然とされるわけですが。

安福容疑者は調べに対し、「合っています」「居間には入らず逃げた」と容疑を認めた。今年8月以降、警察が来たことで、「捕まってしまうことを覚悟した」「事件発生日が近づくと悩んで気持ちが沈んだ。家族に迷惑をかけられず、捕まるのが嫌だった」「(26年間は)毎日不安で、事件に関する新聞も見られなかった」とも供述した。動機の解明が待たれている。

■名古屋市西区主婦殺害事件 1999(平成11)年11月13日午後2時半ごろ、名古屋市西区のアパートで住人の主婦、高羽奈美子さん=当時(32)=が首などを刺されて死亡しているのが発見された。愛知県警によると、目撃情報などから犯人は現在60~70代の女で、身長約160センチ。靴のサイズは24センチ、履いていた24センチの靴は韓国製だったと特定。血液型はB型。どちらかの手に傷が残っている可能性がある。この事件は、有力情報の提供者に上限300万円が支払われる「捜査特別報奨金」の対象。また、殺人事件の時効は15年だったが、2010年の刑事訴訟法改正で殺人事件の時効が撤廃され、捜査が続いていた。

■佐藤誠(さとう・まこと) 1983年に青山学院大学法学部を卒業し、警視庁に入庁。2004年に警視庁刑事部捜査第一課に配属され、以降は2022年に退官するまで18年間、主に凶悪犯の取調官を担当した。2023年に週刊文春でいわゆる「木原事件」を告発した。

解決に導いた解決に導いた主な事件は、2004年の大手広告代理店社員殺害事件、2005年の監禁王子事件、2006年のマブチモーター社長宅放火殺人事件、2010年の海老蔵事件など。

(zakⅡ編集部・小野田聡)