2022年に奈良県で安倍晋三元首相を銃撃し、殺害した罪などに問われている山上徹也被告(45)。

18日行われた裁判員裁判の第8回公判では、前回に続き母親が証言台に立ちましたが、その証言に変化が見られました。

弁護人が、自宅などを売って得た4000万円を旧統一教会に献金していたことについて「子供(山上被告など)に影響がありますよね?」と問いかけると、「会社に借金があると伝えた、(献金のためとは)言わなかった」と淡々と答えていた母親。
しかし、「なぜ銃撃事件は起きたのか」と問われると一変、矢継ぎ早に話し始めました。

《山上被告の母親の証言》
「私が加害者だと思っています。献金を黙ってしていたし、子供たちを置いて、ほったらかしでやってきたのも事実」
「徹也はそんな、根は悪い人じゃないです。母として愚かで、徹也に申し訳ない」

さらに退廷する際には、「てっちゃん(山上徹也被告)ごめんね」とつぶやきました。
このときの様子を、初公判からすべて傍聴しているラジオ・フランスの特派員・西村カリン氏はこう話します。

ラジオ・フランス特派員 西村カリン氏:
(山上被告は)今までは、全く表情の変化がなかった。(今回、母親が)「もっと、しっかりやればよかった」と言った時に、山上被告の表情が初めて変わりましたね。

母親の言葉を聞き、初めて表情が変わったという山上被告。
さらに母親の証人尋問が終わった後、しばらくは額に手を当てて頭を抱えるような様子で、西村氏にはそれが、涙を流しているように見えたといいます。
「後悔している」妹が語る“旧統一教会と母親”
母親の次に証言台に立ったのは、勾留期間中、家族で唯一、山上被告との接見を続けていた妹でした。涙ながらに証言したのは、旧統一教会に傾倒していった母親への感情…。

《山上被告の妹の証言》
「今まで生い立ちをほとんど話したことはありません。話すと涙が出てきて口に出すのがつらく、つらい思いをなるべく忘れようと生きてきました」
「母は、毎朝毎晩お祈りをしていた」
「受け入れることはできなかった。おかしなことをしているというか、気持ち悪い」

さらに、母親の行動に怒った祖父から家を追い出された際に、「私と徹也2人だけでも、児童養護施設にでも行けばよかったと後悔している」と、山上被告を『徹也』と呼び、当時の思いを明かしました。

その証言から西村カリン氏は、「山上被告と妹さんの関係は、結構良かったんじゃないか、と思います」と話します。
「二度とこのような事件が起きて欲しくない」
谷原章介キャスター:
被告の母親の証言、そして妹さんの証言を聞くと改めて、安倍元首相が亡くなるという日本全体を揺るがす大きな事件が、実は家庭内にあったんだと感じますね。
とてもクローズドな、小さな小さな中で起きていたんだということが分かります。

佐々木恭子キャスター:
こうやって話を聞くと、生育環境が異常ですよね。母親からの「ごめんね」という言葉を初めて公判の場で聞くということになぜ至ったのか、と改めて感じます。
谷原章介キャスター:
もしその「ごめんね」がもっと早くに聞けていたら、あそこまでの事件にならなかったのかもしれない。仮定でしかないですが。

入江陵介氏:
証言だけ聞くと本当に悲しい事件ですし、ただ、これが人を殺していい理由にはならない、全くの別問題であるということは前提にあるのですが。
やはり、こうやって苦しんでいるご家族は他にもたくさんいらっしゃるのではないかなと感じますし、これが次に絶対に起こらないためには、近くに相談できる人や窓口が必要になってくるのではないかなと。二度とこのような事件が起きてほしくないなと感じます。

第9回となる公判は19日の午後から行われ、再び妹が証言台に立つ予定です。
(「サン!シャイン」 11月19日放送)