第67回日本レコード大賞で、Mrs. GREEN APPLEの「ダーリン」が3連覇を狙っています。この曲は現代社会の息苦しさを映し、SNSで多くの共感を呼んでいます。大森元貴が作詞作曲し、若者に「自分らしさ」を大切にするよう促す内容です。リリース直後からトレンド入りし、Billboardチャートでも上位を維持しています。
第67回日本レコード大賞で、Mrs. GREEN APPLEの「ダーリン」が3連覇の本命に浮上している。それはなぜか? 優秀作品賞の発表を受け、ネットではその理由をめぐる議論や応援が活発化している。
■レコ大10曲発表「ダーリンに救われた」「TikTokでサビしか知らない曲ばかり」
Mrs. GREEN APPLE3連覇へ 優秀作品賞10曲発表
日本レコード大賞の「優秀作品賞」として選ばれたのは、次の10曲とそのアーティスト。この中から、12月30日放送のTBS系「輝く!日本レコード大賞」で大賞が決定する。
ILLIT「Almond Chocolate」
M!LK「イイじゃん」
FRUITS ZIPPER「かがみ」
アイナ・ジ・エンド「革命道中 – On The Way」
幾田りら「恋風」
Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」
CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」
新浜レオン「Fun! Fun! Fun!」
純烈「二人だけの秘密」
BE:FIRST「夢中」
(曲名50音順)
Mrs. GREEN APPLEは2022年「ケセラセラ」、2023年「ライラック」で2年連続大賞を受賞。「ダーリン」での3連覇がかかる。
過去に3連覇を達成したのは、三連覇)を達成したアーティストは、浜崎あゆみ(2001年「Dearest」、2002年「Voyage」、2003年「No way to say」)とEXILE(2008年「Ti Amo」、2009年「Someday」、2010年「I Wish For You」)の2組のみ
今年の最終審査に向け、SNS上では多くのファンが応援コメントを寄せている。
最新動向に詳しい40代の音楽ジャーナリストは、「ダーリン」について、「単なるポップソングではなく、現代社会の息苦しさを映す鏡のような存在だ」と読み解く。
「私の私」でいい、ミセスの救いの言葉に感謝コメント続々
それを裏づける声がSNS上にあふれている。X(旧ツイッター)からいくつか挙げてみよう。
「ダーリン久しぶりに聴いてたら 卒業文集?に自分の救われた歌詞とか名言を書くみたいなのがあってそこに『あの子にはなれないしなる必要も無いから』って書いたの思い出した あの時もミセスに救われてたんだなって感慨深いです」
「『ダーリン』優秀作品賞おめでとうございます✨ 私もだけど、この曲にどれだけの方が救われたか…🥹 人間なのでどうしても人と比べたり落ち込んだりするけど、その度にダーリンの歌詞が暗闇から掬い出してくれる。 そんな曲を生み出してくれたミセスに感謝だなぁ🥰💚」
「こんなにもダーリンに救われたって言ってる人が多いんだからミセス一択でしょ🍏」
感謝を示す声が相次ぐのは、なぜか。 歌詞の世界観に目を向けてみよう。
「ダーリン」は、NHKのイベント特番「18祭(じゅうはちフェス)」で、約1000人の18歳世代とコラボして生まれた楽曲だ。2024年11月17日に開催され、イベントの模様は同年12月25日にNHK総合で放送された。
NHK「18祭」で18歳世代とコラボして生まれた楽曲
テーマは「本音」。ミセスのボーカル・ギター担当、大森元貴(29)の作詞作曲によるこの曲は、「日常のささやかな不安や葛藤を、優しく包み込むように描かれています」と先の音楽ジャーナリストは分析。
「例えば、他者との比較に疲弊する現代人を肯定するような表現が、聴く者の内面に寄り添う。SNS時代に生きる若者たちは、完璧な他者の姿に追い詰められがちですが、この言葉は『自分らしさ』を武器に生きろと促す。世界観は、暗闇に灯る花火のような一瞬の輝きを象徴します」とも語る。
「ダーリン」の歌詞は、閉鎖的な心の内側を照らし、浮き沈む感情を親しみやすい呼びかけで繋ぐ。シンプルなメロディーと重なることで、聴く者の胸に温かな光を差し込むのだ。このテーマは、ミセスの一貫した「自己肯定」の哲学を体現しており、フェーズ2の集大成として位置づけられている。
1月20日のリリース直後から「ダーリン」がトレンド入りしていた
実際、2026年1月20日のリリース直後から「ダーリン」は、Xでトレンド入りし、ユーザーが自身の内面を共有する投稿が続いた。
「特に、『18祭』のドキュメンタリー要素が共感を呼んでいる。番組では、参加者たちの孤独や不安が赤裸々に描かれ、ミセスがそれを歌に昇華させた過程が視聴者を感動させた。SNS上では、カバー動画やドラム演奏の投稿も多く、ファンコミュニティの広がりを示す。ストリーミング再生回数が急増し、Billboardチャートで上位を維持する背景には、このような草の根的な共感の連鎖があるのではないか」と明かすのは、ストリーミング配信にかかわる音楽業界関係者。
アイドルやダンスグループのメンバーを選ぶオーディション過程が、リアリティーショーとして共感を呼び、自分たちの分身のように慕われる現象ともつながる。「自分ごと」として共に音楽に昇華させる。
現代の「生きづらさ」も的確に表現して、マイナス感情も否定しない。「寄り添う」音楽が求められる時代を象徴している歌のうちのひとつなのだ。
さて、最終審査の結果は—
■Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル) 2013年に結成。当初のメンバーは大森元貴、若井滉斗、山中綾華、松尾拓海で、少し遅れて藤澤涼架が加入。2014年に松尾が脱退し、髙野清宗が加入。ミセスは2020年7月の「フェーズ1」終了で活動を休止し、2021年に山中と髙野が脱退した。3人体制となり、2022年には「フェーズ2」が始動し、活動再開。日本レコード大賞では、2023年に「ケセラセラ」、2024年に「ライラック」で大賞を獲得し、バンド史上初の連覇を果たした。2025年12月31日にフェーズ2を完結し、2026年1月1日から「フェーズ3」開幕する。所属事務所はユニバーサルミュージック内のProject-MGA。
