12月6日、俳優で歌手の中山美穂さんが、東京・渋谷の自宅で死亡しているのが見つかった。このニュースをマスコミ各社は大きく報じた。ノンフィクションライターの石戸諭さんは「中山さんの妹である中山忍さんへの直撃取材に対して、SNS上で批判が殺到している。たしかにマスメディアのこうした報道姿勢はかなり無理のあるものだが、遺族への取材をすべてやめれば問題が解決されるわけではない」という――。
■批判が殺到した“マスコミの遺族取材”
中山美穂さんの突然の死去が伝えられた直後から、マスメディアの遺族取材に対して批判が強まっている。著名人の死去が報じられるたびに取材姿勢への批判は出ているが、さすがに私も実の妹である中山忍さんへの取材は確かにかなり無理があったと思う。
テレビ各社はコメントを求めていたが、もし私がかつて記者として所属していた全国紙の社会部デスクならば、事件性がないと判明した時点で撤収していいと指示をした。特にコメントがなければ「突然の痛ましい死にショックを受ける様子」をわざわざ流す必要もないし、事実を伝えたければ、原稿のなかで一言触れれば事足りる。
遺族に殺到する報道陣の姿が、どう見えるのかを考えなければいけない時代にとっくに入っているのだが……。
この手の取材への批判はわかるが、他方で私はよく遭遇する著名人に限らず遺族への取材を原則辞めたほうがいいという論には与(くみ)しない。
取材現場のもう少しばかり複雑だ。
大切なのはケースバイケースで判断することであり、取材をやめることではない。閉ざしたい口を無理やりこじ開けるような取材は慎むということは当たり前だが、だからといって「マスコミの報道姿勢はおかしい」という声にいたずらに迎合して、すべてをやめる必要もない。
いま必要なのは、なぜ「ある人の死」を報じるのか。問いに答え、報道の原則にあらためて向き合い、メディアとしての考えを発信し続けることだと思うのだ。