2021年に大分県大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故について、危険運転致死罪を認め、被告に懲役8年を言い渡した一審判決を不服として検察が12日、控訴しました。遺族側は「量刑が軽すぎる」として、大分地検に控訴を要請する意見書を提出していました。
この事故は2021年2月、大分市大在の県道交差点で会社員・小柳憲さん(当時50)が車で右折しようとしたところ、当時19歳の被告の男が運転する時速194キロで直進してきた車と衝突し、亡くなったものです。
大分地検は当初、法定刑が懲役7年以下の「過失運転致死罪」で男を起訴。しかし、遺族の署名活動などのあと、法定刑が懲役20年以下の「危険運転致死罪」に起訴内容を変更しました。
そして、2024年11月に大分地裁で裁判員裁判が行われ、検察側は「制御困難な高速度」で「妨害目的」という要件を満たし、「危険運転致死罪」が成立するとして、懲役12年を求刑。
これに対し、弁護側は「危険運転致死罪にはあたらず、被告は過失運転致死罪で処罰されるべき」と主張していました。
11月28日の判決公判で、大分地裁は「妨害運転」については認めなかったものの、「ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって、事故を発生させる危険性があった」とし、「進行を制御することが困難な高速度」だったと認定。「危険運転致死罪」が成立すると判断しました。
その上で被告の男に対し、懲役8年の実刑判決を言い渡しました。この一審判決を巡っては、遺族側が「量刑が軽すぎる」として12月4日、大分地検に控訴を要請する意見書を提出していました。
控訴の期限だった12月12日、検察は控訴したということです。遺族は「検察が控訴したことを受けてひとまず安心しました。今後高裁が高速度による進行制御困難との判断を維持した上で、妨害目的についても認め、検察の求刑を踏まえ、適切な量刑判断がなされることを強く願っています」とコメントしています。
2024年12月12日
時速194キロ事故 検察が控訴 一審判決「危険運転」認定し懲役8年 遺族「適切な量刑判断を」
柳原三佳:ノンフィクション作家・ジャーナリスト
見解 先ほど、ご遺族から連絡をいただきました。すでに発生から4年近い歳月が流れており、高裁に進むことによってさらに時間がかかりますが、この裁判の判決は、直線での超高速度による重大事故の指針となる可能性があり、大変注目されます。
本件の求刑は12年でした。それに対し、一審判決は懲役8年というものでした。その理由のひとつとして、判決文には「被告人が自身にとって不利益なことも法廷で素直に話し、反省している」という内容が記されていました。しかし、彼が話したのは、常習化した超高速走行の実態でした。私は法廷でその尋問を傍聴していましたが、あの内容は減刑どころか、さらに重い罪にすべき極めて悪質なものでした。ご遺族も「これは快楽殺人ではないのか」と憤っておられたほどです。高裁ではこうした危険走行の常習性をもっと重くとらえるべきだと思います。
被告側も本日、控訴してきたそうです。
前田恒彦:元特捜部主任検事
解説 検察側は(1)「制御困難な高速度運転」に加え、(2)右折車を妨害する目的で危険な速度で接近したという「妨害運転」にもあたるとして、二重の意味で危険運転致死罪が成立すると主張した上で、懲役12年を求刑していました。これに対し地裁は、(1)を認めたものの、(2)を否定して懲役8年にとどめました。そうすると、検察側の控訴理由としては、(2)を否定した点に対する「事実誤認」と、刑期が軽すぎるという「量刑不当」の二本立てが考えられます。今後の同種事件に対する刑事処分の指針となるような重要な判例になる事案であり、高裁の判断が注目されます。
まあ「どれだけスピードが出るのか見たかった」とか言って完全に故意に視界が悪い夜という条件下で194キロまで加速して起こした事件。
しかも常習犯かつ反省の意はほぼ無し。ほとんど未必の故意と言っていい殺人。
被害者はシートベルトが千切れ、全身の骨を砕かれて亡くなった。同様のことを車を使わず故意に行ったら懲役8年では済まないでしょう。
これだけの条件が整ってマックス懲役20年の罪で8年になるならどうやったら20年の懲役が出るか、ぜひ裁判長から教えてほしいですね。
世間的に見てもそう思います。
控訴されるにあたって、恐らく(闘いが続くので)かなり悩まれたと思います。
ご遺族さんの心情を察しますが、宇都宮、伊勢崎の危険運転の事故への布石となる大きな意味のある闘いです。
一般道では、これだけドラレコや街中カメラがある中でも、飲酒運転やあおり運転を平気で行うドライバーは多く「ルールを守らず人を殺めれば…大罪となる」という大きな罰は必要です。
ルールを守らない加害者によって、ルールを守っている被害者が損をするような理不尽な世の中になってはなりません。
この判決をニュースで見た時、80年の間違いでは?と思いました。
(もっとも、心情的には80年でもまだ短い気がしますが)
裁判官的には『世間がなんやかんやうるさいから、とりあえず危険運転だったという事にはしておこう。でもやっぱり過失だから8年くらいが妥当かな』といったところでしょうか。
過去の判例ばかりを見て遺族感情や世間の声が判決に反映されないなら、もう裁判は全てAIにやらせれば良いのに。
むしろ、AIの方がまともな判決を出せそうですね。
こんな事は到底出来ないだろうけど、私はいつも思う。
被告に反省の意思がないのなら同じ思いをさせてやったらいい、どれだけ怖かったか無念であったか。何の落ち度もないのに被告の我儘と身勝手により起きた事故です。
194キロなんて高速道路でも出さないですし何か出てきたら判断するまでもなく見えたら当たりますね。
全くもって恐ろしいです。
2度と社会に出てきて欲しくないですね。
懲役8年という一審判決は、遺族にとってあまりにも軽く、「危険運転致死罪」の成立は重要な一歩だけど、それでも量刑が求刑の12年よりも大幅に軽くなったことについては、裁判所がどうしてそう判断したのか疑問が残ります。
特に「妨害目的」が認められなかったことは、速度以外の証拠が不足していたのかもしれないけど、遺族としては納得がいかない結果だったと思う。
検察が控訴に踏み切ったのは、適切な判断で、高裁がどのような判断を下すかはまだわからないけど、妨害目的の有無が再び議論される可能性もあると思うし、遺族の求める「適切な量刑」が下されることを望みます。