JR九州の完全子会社「JR九州高速船」(福岡市)が博多港と韓国・釜山(プサン)港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」(定員502人)の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、JR九州が、運休中のクイーンビートルの運航再開を断念したことが分かった。1991年に開設した日韓航路から撤退する。月内にも正式決定する。
JR九州の古宮洋二社長は問題発覚後も、運航の再開を目指す方針を示してきた。ただ、浸水の原因となった不具合の解消や信頼回復が難しいと判断し、一転して撤退する方針を固めた。
クイーンビートルは、2022年11月に就航。昨年2月に船体内部に浸水したが、JR九州高速船は国土交通省に報告せず数日運航し、行政処分を受けた。今年2~5月も浸水していたにもかかわらず、同社は、航海日誌に「異常なし」と虚偽記載したり、浸水警報センサーを上部にずらしたりするなど隠蔽(いんぺい)工作をしていたことが、国交省が8月に実施した抜き打ち監査で発覚。運休に追い込まれていた。
国交省は9月、全国初となる安全統括管理者と運航管理者の解任命令を発出。JR九州とJR九州高速船は11月、隠蔽を決めた同高速船の当時の社長と両管理者の3人を懲戒解雇した。JR九州が設置した第三者委員会は同月、同社のガバナンス(企業統治)が十分ではなかったとする調査報告書をまとめた。海上保安庁は船舶安全法違反などの容疑で捜査している。
浸水隠し「クイーンビートル」、親会社JR九州が運航再開を断念…日韓航路から撤退。
山田吉彦:海洋問題研究者/東海大学海洋学部海洋理工学科教授
見解 日韓航路における主要船社の撤退は残念である。2022年から日韓航路に就航した「クイーンビートル」の導入の失敗が、今回の不正等の問題の根幹にある。
フォイル船の老朽化に伴い、効率性を考えオーストラリアで建造されたトリマランタイプの船クイーンビートルな導入となった。同船は故障が絶えず、運航に支障をきたすようになり始めた。故障船に代わる代替船の手配もつかず、不具合の隠ぺいとなったのだろう。いずれにしても故障の隠ぺいは許されない。
定期航路において安全性を考えた安定運航を実施するためには、複数の船での運航体制などの工夫が必要となる。しかし、クイーンビートルにトラブルを抱えたJR九州高速船が、その体制をつくるには、経費もかさみ、採算をとることは厳しい。また、安全運航を支える人材の確保も難しく、撤退は経営上の判断だろう。
本来であれば、安全面も含め利用者を第一に考えた、航路運航であって欲しい。
知床の事故の件もあるだけに浸水を隠して運航を続けた責任は重く、空路では格安航空もたくさん就航しており失った信頼を考え合わせると合理的判断なのかもしれない。
そもそも川崎重工が5隻以上のまとまった発注があればジェットフォイルの再生産をすると言っていたので、他の離島向け船会社と共同発注すれば問題はなかった。
運行事業者として一連の顛末がちょっとお粗末過ぎたのでこの結果はある意味仕方ないのだろう。
親会社の鉄道も怪しいでしょ。ここのところ車両や施設のトラブルが多すぎますし、隠されたトラブルもある可能性が否定できません。
知床の沈没事故があったにも関わらず、なぜこのような杜撰なことが出来るのでしょうか。
もしも抜き打ち監査で発覚しなければ、重大事故が起きるまで運行していたことでしょう。重大事故を未然に防げた事に感謝します。
「浸水隠し「クイーンビートル」、親会社JR九州が運航再開を断念…日韓航路から撤退」12/13(金) 5:00配信の読売新聞オンラインの記事。