韓国国会で尹錫悦大統領の弾劾訴追案が可決されたことを受け、日本政府は今後の韓国政局の行方を引き続き注視する方針だ。
保守系の尹氏の下で日韓関係が改善してきただけに、影響を懸念している。革新系の野党勢力による新政権が誕生すれば、日韓に再び「冬の時代」が訪れると憂慮する声がある。
石破茂首相は14日、弾劾案可決を前に「韓国は協力すべき重要な隣国だ」と指摘。「引き続き緊密に意思疎通していかなければならない。あらゆる努力を傾けたい」と述べた。視察先の福島県大熊町で記者団の質問に答えた。
尹政権は2023年3月、日韓間の最大の懸案だった元徴用工問題について、被告日本企業の賠償を肩代わりする解決策を打ち出した。「戦後最悪」と言われた両国関係はこれを契機に一気に好転。安全保障面でも北朝鮮による弾道ミサイル発射情報のリアルタイム共有を開始するなど、日韓、日米韓の連携は強まった。
日本政府内からは、尹氏について「信頼できる」「確固たる意志を持って日韓関係を進めてきた」(外務省幹部)と高く評価する声があった。関係改善は尹氏個人の指導力に大きく依拠したものだったと言える。
韓国の憲法裁判所の判断で尹氏罷免が決まれば大統領選が行われる。日本政府は、尹氏と立場をたがえる革新系の政権が誕生することを警戒する。革新系の文在寅前政権は、慰安婦合意をほごにし、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を通告するなどしたため、日韓関係は著しく冷え込んだ。
日本外務省関係者は「日本は韓国を重視している。日韓、日米韓の連携は大事だ、と言い続けるしかない」と語った。
政権交代なら「冬の時代」再来も 日本政府に憂慮の声 尹氏弾劾可決・韓国
解説 大統領制である韓国は、その大統領の個人の政策によって大きく外交政策が変動する。つまりパーソナリティーに依拠するところがある。
それほどまでに、大統領という一人の個人に権限が集中していることは、今回の戒厳令の事例で日本にも理解が広がっているものである。
日韓関係の改善は、ひとり尹大統領の個人としての政策に依拠するところが大きく、これが変わってしまうとなると当然、日韓関係への影響も避けられない。
そうなった場合の対策を石破政権や日本側は考えておく必要がある。
例えば、政府間関係が冷えたものとなったとしても、セカンドトラックとしての民間外交をより活発にする計画を立て、それに政府が補助金を出すなど、対策はあるはずだ。
日韓関係は、今後の東アジアにおいて重要なものとなる。それを壊してはいけない。