「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野崎幸助さん(当時77歳)に対し、何らかの方法で覚醒剤を飲ませて殺害した罪に問われた、元妻・須藤早貴被告(28)の裁判員裁判。
和歌山地方裁判所は、「第三者の他殺や自殺の可能性は考えられない」と判断したうえで、「自殺や野崎さんが誤って覚醒剤を多量摂取した可能性はないとはいいきれない」などとして、須藤被告に無罪を言い渡しました。
この裁判の裁判員1人が記者会見し、「ニュースや報道でみる事件と裁判員としてみる事件では全然違うので、先入観は怖いなと思った」と感想を述べました。
「証人の数も証拠の数も多いので、それをすべて吟味した上で判決を出すというのは苦労した点」
裁判員が語った内容は以下の通りです。
(Q.判決出すうえで難しかった点、悩んだ点はなんですか?)
今回の裁判は期間が長いというのと証人の数も証拠の数も多いので、それをすべて吟味した上で判決を出すというのは苦労した点。
(Q.裁判は長期に及んだが、気持ちの面は?)
期日が長いので、初公判だったり証人1人目っていうのは、だんだんと時間が流れるにつれて、「どんなことを言っていたかな」っていう記憶として薄れていくっていう不安はあったが。
裁判員・裁判官の人数も、それなりにいたので、みんながみんなメモをして情報を出し合って共有出来たっていうのはすごく良かったかなと思う。
(Q,須藤被告のイメージは、裁判の最初と最後で変化あった?)
初めてと終わりで変化なかったが、ずっと真摯に裁判を受けている印象。
(Q,難しい裁判といったが、判断の際に気を付けたことは?)
直接的な証拠ないところで、有罪の目で見ると有罪、無罪の目で見ると無罪に見えてくるので、判決が出るまでどっちかという、中立の立場で証拠だけを見て、感情で見ないようにした。
(Q,裁判所から推定無罪や、中立にという説明はあったか?)
中立的な立場で見なさいという指摘はなかったが、マスコミ報道や、証拠として見てはならないものは見ないでといわれた。
(Q,悩みは?)
協議の中でしっかり話し合っての答えなので、自分としては悩むとかはない。
2024年12月13日
「報道でみる事件と裁判員としてみる事件全然違う」裁判員が会見 “紀州のドン・ファン”元妻に無罪判決
解説 無罪判決に対し、裁判所の事実認定が一般市民の感覚とかけ離れているように思えるなどとコメントしている識者もいますが、重要なのは、和歌山カレー事件などと違って裁判員裁判で裁かれており、プロの裁判官3人だけでなく、市民の代表である6人の裁判員も審理に参加し、彼らによる慎重な評議の結果、下された結論だという点です。
検察側は元妻によるスマホでのネット検索履歴や動画視聴履歴、ヘルスケアアプリによる移動データといった証拠を提示して立証を果たそうとしたわけですが、覚醒剤の取引と違い、こちらのほうは市民の普段の生活にも馴染み深いものであり、「他人ごと」ではなく「自分ごと」としてその証拠価値を判断できたのではないかと思われます。
この裁判員の男性の「ニュースや報道でみる事件と、裁判員としてみる事件では全然違うので、先入観は怖いなと思った」というコメントは、まさしく当事者でなければ語れない至言でしょう。
見解 今回の判決には、元刑事として非常に衝撃を受けました。
しかしながら、警察や検察の捜査が不十分だったとは思えません。長期にわたる捜査の中で、多くの状況証拠を積み上げた警察の執念は、疑いようのない事実です。
今回の事件は自宅内で発生したものであり、そこでの2人の行動を全て明らかにすることは極めて困難だったと思われます。
警察の捜査において、過剰摂取の可能性を完全に排除できなかったことが、無罪判決の一因となっていますが、これは「自宅」という閉ざされた空間での捜査の限界があったと感じています。
過去に裁判員を経験しました。〜ニュースや報道でみる事件と、裁判員としてみる事件では全然違うので、先入観は怖いなと思った。〜これはかなり同意です。私の参加した裁判も殺人事件でしたが、裁判の前後で報道される事件と、自分が見ている事件の概要に乖離ありすぎて、大変驚きました。
直接的な証拠は無いし、検察も殺害方法を立証できなかったようだから、無罪になるだろうね。ただ、月100万の小遣いを条件に50以上も年上の相手と結婚するなど、被告人が金に異常に執着しているのもまた事実で、結果「この人ならやっていてもおかしくない」と誰でも思うような行動をしている。その辺は状況証拠にも現れていると思う。
いずれにしろ、検察は控訴するだろうから、まだまだ時間がかかりそうな事件だ。
取材に応じて顔出しもした裁判員は大変素晴らしい方と感じました。裁判員を実際にして心情や問題点等も的確に回答されており、これから裁判員に当たる可能性のある方への指標になったのではないかと思います。
裁判員になることの一番の怖さは「報復」と聞いております。これは顔が見える状態の制度のままでは怖いままですね。
確かに先入観で物事を判断するのは怖い。
どうしても日々の報道に惑わされるので、裁判の現場に立って改めて違う情報に接したり、被告人を目の前にして印象が変わったりすると、それまで持っていた事件のイメージが刷新されていくのだと思います。
裁判員の方々には心からお疲れ様と言いたいです。
私もそうですが、被告人が犯人なんだろうなという心象を持っている人が多いと思います。しかし、刑事裁判では「きっとこの人が犯人だろう」ではなく、「この人が犯人であることは疑い得ない」という状況でなければ有罪判決を出してはいけません。
今回は裁判員裁判ということで、裁判員たちが心象に流されるんじゃないかと想像していたのですが、きちんと無罪推定主義に基づいた判決を出しており、裁判員のみなさんは立派な仕事をされたと思います。
一方で、私も多分この人が犯人なのだろうと思っているので、検察は二審までに確実な証拠を見つけるべく頑張って欲しいと思います。
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「報道でみる事件と裁判員としてみる事件全然違う」裁判員が会見 “紀州のドン・ファン”元妻に無罪判決12/12(木) 16:25配信の関西テレビの記事。